――ところで浜倉さんは、プロデューサーでありながら株式会社浜倉的商店製作所の代表取締役という顔も持っています。
もともとは飲食店のプロデューサーというところから出発していますし、今後もプロデューサーという仕事を自分の軸にしていきたいと考えています。それを続けるためには、例えば横丁などの集合体では、プロデューサーの立場でありながらも、同時に同じテナントとしての立場にも立たなければならないという基本姿勢が、自分の中にあります。
――だから、株式会社浜倉的商店製作所で直営店も経営していると。
ありがたいことに、さまざまな業態依頼も求められてきています。直営店で経営が成り立つことを自ら体験しなければいけないという立場でもあるのです。
業態プロデュースを販売していくという仕事が本業ですから、実際に私が店を創り、それを見られた方々から業態プロデュースの依頼をいただく…という流れになっているのです。オーナー様に失敗させてしまっては、本業が命取りで成り立たなくなりますよね。依頼の方も次々と計画も控えておりますので。そういった経緯もあり、直営店を運営し、今後のプロデュース業態を輩出していくための会社として、2008年1月に株式会社浜倉的商店製作所を設立したというわけです。
――最後に、今後、飲食業界はどのように動いていくとお考えでしょう。
時代背景としては、まず少子・高齢化の大きな流れがあり、最近では外食デフレなども挙げられるわけですが、大きく分けて次の5つの消費ゾーンがあると思っています。
- ①社会人になって集う若者が生み出す高アルコール比率&コミュニティの機能を備えた低価格ゾーン
- ②その卒業組が集う環境ゾーン
- ③旅先マーケットが集うゾーン
- ④ファミリーゾーン
- ⑤コンビニ的な専門店業態ゾーン
(*詳細については次の機会にでもじっくり説明しましょう)
欲を言えば、⑥昔ながらある敷居の高い店も残したいと思っているので、私は6年前より①と⑥の溝を埋める"卒業組が集うコミュニティゾーン"に徹してきました。次はここから生まれる③旅先マーケットも10分の1の割合ぐらいで進めていきたいと考えているところです。
――浜倉的商店製作所の今後の展開は?
よく、「何年後に何店舗を展開…」というような明確なシナリオを表明される経営者もおられますが、私が大切にしているのは、そういう筋書きよりも、仕事のクオリティとか仕事から得られる満足感や達成感です。
私はいろんな方々と関わることで、お互い"意味を成せる"環境を作ることができればありがたいと思います。さらに同じ想いを共有できる人々ともっと出会って、そういう仲間から私も刺激を受けて、本来あるべき環境の発想が生まれてくる――そういう仕事を飲食店にかかわらず、サービス業全体において関わっていけることが何よりの望みです。
これからも、お客様に「思わずまた来てしまった…」と言ってもらえるような、吸引力のある店(環境)を作っていきたいと思います。魚系居酒屋も横丁も、そういった意味では私の中では表現方法のひとつ。新しい表現はいつも湧きあがっています。
1967年、横須賀生まれ。京都育ち。高校時代から飲食店で働き出し、飲食企業に就職。京都駅前の大衆食堂をリニューアルさせたことがきっかけで、プロデュース職に目覚める。株式会社ジェイオフィス東京のネオサポート事業で「鱗」ブランドなどを次々とプロデュースし、注目を集める。現在は株式会社浜倉的商店製作所の代表取締役も務める。