「安さ」はあくまでも手段。目的は「カッコイイ店長」を増やすこと
Q:「WIN WIN(ウィンウィン)を注ぐ」という企業理念(VISION)を掲げ、理念経営を行っています。その理由も教えてください。
10年前くらいのことですが、よく頑張っているフリーターのアルバイトがいたので、「お前、社員になればいいじゃん」と言ったら、「嫌ですよ僕、ここの店長みたいになりたくないっすもん」って言われたんです。その時、「あれ、自分は何で独立したんだっけ?」と思いました。自分は高校の時、アルバイトをした焼肉店の店長が楽しく働いているのを見て、いずれは自分もそうなりたいと思って独立した。なのに、自分が独立して作った店では、アルバイトが店長を「カッコ悪い」と言っている。周りを見ても、飲食業界はブラックだと言われている。これでは独立した意味がない。昔の自分は、何の取り柄もないし、特に何がやりたいのかも分かっていなかったけど、焼肉店の店長に出会えて飲食って面白い、将来、自分もやってみたいという目標ができた。そんな昔の自分と同じように、若者が店長に憧れる会社にしていかなければいけないと思ったんです。
「きつい、汚い、危険」の3Kで店長がカッコ悪いと思われてしまうのは、ウィンウィンじゃないからです。利益が全然取れていなかったり、一部の誰かがめちゃくちゃ取っていたりするからそうなる。安月給で長時間働き、ありがとうとかも言われず、評価もされず、走り続けるうちにだんだん腐っていく…。そんなウィンウィンじゃない状況を変えなければいけない。劇的に変えて、若者が店長に憧れる会社を自分たちは目指すべきだ——。そう考えて理念を作りました。
Q:なるほど、そういった経緯があったのですね。では、理念を浸透させるために工夫したことは何ですか。
分かりやすさです。例えば、自分たちが目指しているのは「カッコイイ、稼げる、叶う」の3Kを実現すること。明快で分かりやすい目標にしました。店舗では毎日の朝礼で、理念ややコンセプトの唱和も行っています。「Torisetsu(トリセツ)」というカラー100P以上の社内向けの冊子も作って価値観を共有しています。

社内向け冊子「Torisetsu」
Q:店舗数や売上を伸ばし、利益率も高い経営をしているので、実際にますます「稼げる」会社になっているのではないですか。
「鶏ヤロー」は撤退した店舗もわずかしかありません。会社は借入金よりも現金が多い実質無借金経営です。そうした中で今年も社員の給与アップを行い、店長の多くが年収800万以上になっています。安い居酒屋で繁盛店を作るのも、店舗を増やすのも、言ってみれば手段でしかありません。目的は「かっこいい店長」を増やしていくことです。



















