続々と独立を果たす先輩に憧れ、“一国一城の主”を目指して大学を中退
自由が丘駅から田園調布へ向かって伸びる学園通りを一本入ると、小さなバーやスナックが軒を連ねるエリアがある。「おゆげ」があるのは、この一画に建つビルの2階。磨りガラスが張られた扉からは中の様子を窺うことはできず、ミステリアスな雰囲気が漂う。一輪挿しに活けられたヒマワリにそっと背中を押されるように店内へ足を踏み入れれば、店主の山下海里氏が朗らかに出迎えてくれる。
実家が外構業を営んでいたことから、企業への就職はイメージできなかったという山下氏。大学生時代、将来について考えて本を読み漁っていた際に宇野隆史氏の著書『トマトが切れれば、メシ屋はできる 栓が抜ければ、飲み屋ができる』を読んで興味を持ったのだとか。早速、自宅から近かった「汁べゑ 下北沢店」へ足を運んだところ「めちゃくちゃ楽しかったんです。その場で『アルバイトさせてほしい』という話をしました」。
すぐに採用され、学生アルバイトとして働く中で、先輩社員らが当たり前のように「独立開業」について語り合い、実際に夢を叶える姿を目にしてきた。瞬く間に繁盛店になる店も多く、その売上額を聞いて驚いたという。「当時の僕は大学3年生。就職について考え始めるタイミングでしたが、僕も先輩方のように店を持ちたいと、大学を中退して楽コーポレーションに入社しました。周りの方には止められましたが、飲食業界に学歴は関係ない。残りの1年間、両親に学費を払い続けてもらうのは、時間もお金ももったいないと思ったんです」。
その後、ワイン業態、肉業態などグループ内の店舗で腕を磨き、「井の頭 汁べゑ」の店長に就任したのを契機に、独立に向けて動き始めた。「東京都内で、楽コーポレーション出身者が少ないエリア」「広さ10~15坪」などの条件で約2年間物件を探し続け、ようやくたどり着いたのがこの物件だ。内装のデザインは「A-SWITCH」の秋本氏。天井が低いため、圧迫感を感じさせないよう、冷蔵庫や家具を置かず、収納は壁やベンチ下を利用するなど工夫した。カウンターをフルフラットにしたのは、ライブ感を楽しんでもらうことに加え、アルバイトスタッフにも心地よい緊張感や、お客とのコミュニケーションを楽しみながら働いてほしいという思いからだという。
「通常、洗い場は客席から見えない場所に設置されていますが、あえて正面に向けています。僕自身、洗い場を担当していた頃、お客さんたちが盛り上がっている時にぽつんと取り残されているような感覚がありました。正面を向いていれば、洗い場にいてもお客さんの様子がわかるし、店全体を見ながら、僕の目が行き届かなかった場合にサポートをしてもらいたいという想いがあります」。
店舗データ
店名 | おゆげ |
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住所 | 東京都目黒区自由が丘2-14-20 第七千陽ビル2F |
アクセス | 自由が丘駅から徒歩3分 |
電話 | 03-6421-1119 |
営業時間 | 月~土17:30~23:30、日14:30~21:00 |
定休日 | 不定休 |
坪数客数 | 14坪27席 |
客単価 | 5500~6000円 |
オープン日 | 2023年7月4日 |
関連リンク | おゆげ(Instagram) |