大衆酒場を軌道に乗せ、次は大衆焼肉で大ヒット!
「大衆焼肉コグマヤ」を運営する月兎(東京都中野区)の代表・高橋健太郎氏は、東中野で10年以上続いたカフェバー(現在は閉店)で飲食店経営をスタート。次のステップとして2016年に中野のレンガ坂に「大衆酒場コグマヤ」をオープンして軌道に乗せ、翌2017年に池袋に「大衆焼肉コグマヤ」を出店した。この「大衆焼肉コグマヤ」の池袋店が、15坪・月商750万円の大ヒットとなったわけだが、そもそもどんな経緯で、焼肉業態を出店するに至ったのだろうか。高橋氏は以下のように話す。
「僕は料理人ではありません。お客様目線で、こんな店があったらいいなというのを考えてきました。基本的にお店の良し悪しは、商品がいいか、サービスがいいか、値段がいいか、ということになってきます。そして、値段がいいっていうのは、結局、仕入れが強いか、調理技術で商品をよくするかの2択になります。でも、僕らには、その両方が無かった。そうした中で、安く美味しく出せる商品を考えていったわけですが、まず、肉か魚で言うと、魚は参入障壁が高い。やっぱり肉だよねということで、『大衆酒場コグマヤ』は味噌出汁の串煮込みを看板商品にしました。煮込みなら特別な仕入れでなくても、手間をかければ安く美味しく出せるからです。これが評判になり、内臓肉の業者さんの仕入れも少しずつ開拓できるようになりました。そこで、安く美味しく出せる肉をさらに集め、従来の焼肉店のカタチに捉われない僕たちならではの焼肉業態として出店したのが『大衆焼肉コグマヤ』です」
焼肉は10品のみ!少数精鋭で羊・豚・鶏・牛を揃える
2018年には「大衆焼肉コグマヤ」の2号店を方南町に出店したが、酒飲みニーズが弱いエリアだったため、池袋店ほどの大ヒットとはならず、コロナ禍の影響もあって昨年閉店。「大衆焼肉コグマヤ」に最適なのは酒飲みニーズが強いエリアであることを再認識し、その候補として目をつけたのが高円寺だった。実際、繁華街でもあり、住宅街でもある高円寺は、コロナ禍でも酒飲みニーズが強いと言われる。しかも、「大衆焼肉コグマヤ」の高円寺店は駅から徒歩1分の立ち寄りやすい場所。細い路地にある古い一軒家の物件も、大衆店なので新しい建物である必要がない同店にとっては好都合だった。家賃が比較的好条件で、酒場の空間を魅力にした簡易なテーブルと丸椅子、卓上タイプのガスロースターで内装費も効果的に抑えている。
「大衆焼肉コグマヤ」のメニューは池袋店も高円寺店も同じで、その大きな特徴は「少数精鋭」で「安くて美味しい焼肉」を揃えていること。羊・豚・鶏・牛の4種類の肉が楽しめるようにしているが、焼肉メニューの品数は10品に絞っている。「名物ジンギスカン(塩・味噌)」(250円・税別/以下同)、「ピリ辛香味ジンギスカン」(300円)、「ごちゃまぜ1.5倍盛り‼ホルモン盛り合わせ(塩・味噌)」(480円)、「新鮮レバー(塩ゴマ油)」(280円)、「豚タン」(350円)、「特製つくね」(350円)、「ハラミ(塩・味噌)」(380円)、「牛マルチョウ」(450円)、「無限ロース」(480円)、「こぐまカルビ」(500円)の10品(1人前60~65g)だ。この品揃えについて高橋氏は、「焼肉は肉の仕入れ力が重要で、仕入れ値と売価が正比例します。僕らがカルビとかで勝負するのは違うかなと。ジンギスカン屋でもなく、ホルモン屋でもなく、カルビ屋でもない。部位がどうのこうのという理屈もなく、とにかく安く美味しく、ちょっとずついろんな肉を楽しめる。それが僕の考える大衆焼肉です」と話す。品数は少なくても、「大衆焼肉」の魅力を満喫できるようにした少数精鋭のラインナップで、品数を絞ることが、新鮮な肉を使いながらロスを減らすことにもつながっている。
驚きの「250円ジンギスカン」。評判の「キャベツだれ」
10品の焼肉メニューの中でも、250円の「名物ジンギスカン」は驚きの安さで、集客のフックになっている。原価率を50%近くかけ、チルドで仕入れた羊肉を手切りする手間暇もかけて、「安くて美味しい」を強く印象づける。その他の焼肉メニューも、すべて500円以下で、圧倒的なリーズナブルさを誇るのが「大衆焼肉コグマヤ」だ。さらに、お通し(350円)の「キャベツだれ」(お替り自由)も焼肉の魅力を一層高めている。川崎の人気焼肉店の提供スタイルをヒントにしたもので、千切りキャベツに同店特製のタレをかけたのが「キャベツだれ」。お客がヘラを使ってキャベツとタレをよく馴じませ、それを焼肉と一緒に食べる。この食べ方が抜群に旨いと評判だ。お客が自分で「キャベツだれ」を完成させるセルフ感覚は楽しさがあり、話題づくりにも一役買っている。
一方、焼肉以外の一品料理については、「焼肉屋のカラーが強過ぎず、それでいて、ポテサラやハムカツといった大衆酒場とも違う。100軒、200軒と食べ歩いて見てきたものを、足し算したり、引き算して開発したものばかりです」と高橋氏は説明する。「やみつきキムチ」(280円)、「ミックスナムル」(280)といった焼肉店の定番とともに、「辛子きゅうり」(280円)、「チャンジャ明太クリームチーズ」(350円)、「わさびバターご飯」(350円)など、ひねりの利いた商品を用意。低温調理の「肉刺し」3品(朝挽きレバネギ・ハラミユッケ・タン刺し/各380円)も人気だ。また、ドリンクメニューは、冷凍レモンがゴロゴロと入った「究極レモンサワー」(450円)と、水出し玄米緑茶を使った「香ばし茶ハイ」(380円)が二大おすすめ商品。どちらも、約5杯分の「やかん」(レモンサワーが1350円、茶ハイが1250円)でも提供する。「やかん」はみんなでグイグイと酒を飲む楽しさを演出しながら、ドリンクの提供回数を減らしてスタッフの負担も軽減している。
圧倒的なリーズナブルさを誇りながら、原価率も優秀!
「大衆焼肉コグマヤ」は、池袋店をオープンした当初の客単価は3000円くらいだったが、現在は3000円台後半にまで上がっている。商品の質が上がった時に少しずつ値段を上げるなどし、客離れを起こすことなく客単価を上げる経営努力もしてきた。その結果、フード・ドリンクを合わせた全体の原価率は35%を切るまでになっている。圧倒的なリーズナブルさを誇りながら、この数値に原価率をおさめているのは非常に優秀だ。
そして、今後の展開としては、新業態の構想もあるという。「売れれば売れるほど、スタッフの仕事がきつくなる。このジレンマを脱したい」(高橋氏)という思いを形にした業態だそうだ。高橋氏が、スタッフに常々伝えているのは、「人に優しくしよう」という一言。「お客様に対しても、従業員同士であっても、人に優しくできれば、いい店になる」からだ。そんな高橋氏の考え方に共感し、店を盛り立ててきたスタッフの将来を見据えた新業態が、そう遠くない日に誕生しそうだ。
店舗データ
店名 | 大衆焼肉コグマヤ高円寺 |
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住所 | 東京都杉並区高円寺北3-22-2 |
アクセス | 高円寺駅から徒歩1分 |
電話 | 03-5356-8690 |
営業時間 | 17:00~23:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 15坪36席 |
客単価 | 3500~3800円 |
運営会社 | 株式会社月兎 |
オープン日 | 2021年5月11日 |
関連リンク | 大衆焼肉コグマヤ高円寺(Facebook) |
関連リンク | 大衆酒場コグマヤ(記事) |