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人形町に「ars(アルス)」が開業。「キャリエ」「レヴォル」で腕を振るった髙木和也シェフ待望の独立店、コース提供のレストラン&アラカルトのビストロの二刀流スタイルで勝負

4月5日、人形町に「ars(アルス)」がオープンした。「レフェルヴェソンス」「ラフィネス」などの修業を経て、「キャリエ」「レヴォル」でシェフを務めてきた料理人・髙木和也氏の待望の独立店舗だ。同店は、コース料理の「レストラン」と、アラカルト形式の「ビストロ」、1つの店舗で2業態を営業。名店での修行に裏打ちされた確かなフレンチを、フォーマルにもカジュアルにも楽しめる。髙木氏は「30歳でシェフ、35歳で独立」と決めて20歳から修業を開始。その目標の通り、今回独立を果たした。すでに40歳に向けての次なる目標も定め、同店を礎に料理人としてさらなる精進を目指す。

人形町駅から徒歩3分の閑静な裏路地に佇む。木製の重いドアが期待感を高める
入って手前のフロアがビストロとして使えるテーブル席。奥のキッチンを前にしたカウンター席はコースを楽しむレストランとしてゾーニングし、1つの店で2つの業態を営業する
コースの一品、スペシャリテの「オマール海老」。パイの食感とフィリングの火入れを両立するべく、検証を重ねて完成させた逸品。パイはしっかりと焼ききってサクサクと歯切れ良い食感を出しながら、フィリングのオマール海老は火が入りすぎることなく絶妙ななめらかさに仕上げている
コースの一品、「フォアグラ」。なめらかなフォアグラのテリーヌに、パンデピス風味のメレンゲ、デコポン、セルフィーユ、菊芋のピュレを合わせる。火入れや掃除など髙木氏独自の理論で、フォアグラの油脂を生かしながらも軽さを追求した一皿
写真右からオーナーシェフの高木和也氏、スタッフの今井順一氏。今井氏は「レフェルヴェソンス」時代の仲間で、現在は髙木氏の右腕として2人で店を切り盛りする

(取材=大関 まなみ)


「30歳でシェフ、35歳で独立」の目標に向けて着実にキャリアを積む

オーナーシェフの髙木和也氏は、1985年生まれの現在35歳。調理師専門学校を卒業した20歳の時に「30歳で雇われシェフに、35歳でオーナーシェフとして自分の店を持つ」と決意。修業先はホテルや街場のレストランで、フレンチの名店「レフェルヴェソンス」「ラフィネス」はじめ、ビストロからグランメゾンまで、5つのグレードのフレンチで経験を積んだ。「5店舗で各2年ずつ修業すれば30歳になると逆算し、様々な価格帯の店で経験を積んで視野を広げました」と髙木氏は話す。

目標の通り、30歳で雇われシェフに。「キャリエ」「レヴォル」(各店とも現在は閉店)などでシェフとして腕を振るい、多くのお客の心をつかんできた。2019年秋からは、フリーで飲食店に対するコンサルティング事業を開始。「独立に向けて、調理技術だけでなく数字など経営面の知見も身に着けたかった」と髙木氏。飲食企業の新店立ち上げや不振店の建て直し、レストランのプロデュースなどに携わった。

その傍ら、独立に向けて物件探しも並行して実施。当初、港区で探したものの家賃の高さに断念。丸の内や銀座も多く検討したが、新型コロナの影響が大きく避けたという。そんな中、出合ったのが人形町の同物件だ。裏路地で人通りが少ない分、家賃は手頃。12坪と想定内の広さで近隣には住民も多いことから決めたという。

目指したのは「心地のよいちぐはぐ」。異なる二要素を合わせて生み出す“心地よさ”

店づくりでは「心地のよいちぐはぐ」をコンセプトに掲げた。レストランとビストロ、2つのスタイルが混在していることもそうであり、内装でも、無機質な石材×あたたかみのある木板など、あえてテイストの違う素材を組み合わせている。ランプシェードやカウンターのイスも統一せず、異なるデザインのものを並べているが、不思議と居心地のよい空間に仕上がっている。

レストランとビストロは別々のメニュー構成

1つの店内でレストランとビストロ、業態を分けて営業するが、2業態のメニューに共通性はなく、それぞれに合わせた別々の構成にしている。

レストランは、オープンキッチン前のカウンター4席。調理風景を眺めながら1万1000円のコースを提供する。特に印象的なのが一皿目に提供する「パテバーガー」だ。チーズベーグルにパテドカンパーニュを挟んだもので、ハンバーガーのファストフード店で使うようなカゴに入れて提供する。「フレンチのコースと聞いて肩ひじ張ってしまう方も、ハンバーガーのような馴染みある仕立ての品から始まることで、リラックスしてもらいたい」(髙木氏)という狙いだ。その後は前菜の「ホワイトアスパラ ハチノス」や、パイ包みの「オマール海老」、メインの肉料理「鹿」、デザートの「ボタニカルヨーグルト」などに食後の小菓子まで9品。メニューの内容は季節替わりだ。レストラン席では料理・ドリンクの価格にサービス料5%が付く。

一方、フロアのテーブル席はビストロゾーンだ。コースとは全く別のアラカルトの料理を前菜からメイン、ごはんものやデザートまで50品ほど。「ベーコンチーズサブレ」「ミックスナッツ」など500円から用意する軽いつまみに、「つぶ貝とエリンギのブルギニョンバター」(1300円)、「豚足ガレット」(1200円)などの温菜、「あか牛ランプのロースト」(3600円)、「焼きウニのポルチーニクリームリゾット」(1650円)など。骨太なビストロ料理を中心に、遊び心を加えた品までが揃う。

ドリンクはコースに合わせたワインペアリング6600円)も用意するほか、グラスワインは赤・白が各3品に泡で、980円から。ボトルは5300円から。自然派ワインからクラシックなものまで。その他、生ビール「ドラフト マスターズドリーム」(800円)など。

顔の見えるカウンター席の方を、あえて高単価のレストラン席に

カウンター席を高単価のレストラン、フロアのテーブル席をカジュアルなビストロにした意図について髙木氏はこう話す。「普通に考えたらゆったりとしたテーブル席の方が高単価の席ですが、あえて逆にしています。修業時代やシェフ時代、クローズドキッチンで調理したものをサービスマンが運んで、最後にシェフがお客様に挨拶に行く、というのに違和感がありました。時代の流れもあり、作っている人の顔や工程が見える安心感はますます重要になってくるはず。お客様の顔を見なら、お話をしながら料理を楽しむ方がよりVIPな席だと考えてこのスタイルになりました」。

レストラン席は7月半ばまで満席。40歳にはクローズドなレストランの開業を視野に

オープンから2か月ほど、客足は想定以上に上回っているという。以前の勤務先からの髙木氏のファンに加え、近隣の人からの認知も広まるのが早いという。現在、レストランのカウンター4席は7月半ばまで予約が埋まっている状況だ。

「35歳で独立」の目標を達成した髙木氏だが、実はその目標には続きがある。「40歳までに、知人のみを招くクローズドなレストランをやりたいんです。原価は考えず、採算度外視で自分が使ってみたい素材を、好きなように料理して提供したい。それを実現するために、現在の店を軌道に乗せ、利益を出せる体制を作っていきます」と話す。今後は店舗の運営に加え、後進の活躍の場づくりやプロデュース業にも挑戦してきたいという。

店舗データ

店名 ars(アルス)
住所 東京都中央区日本橋蛎殻町1-11-9 マガザン人形町 1F

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アクセス 人形町駅から徒歩3分、水天宮前駅から徒歩5分
電話 03-6810-9610
営業時間 【火〜木】ランチ 11:00〜15:00(LO14:00)【月〜土】 ディナー 18:00〜23:30(料理LO21:00、ドリンクLO22:00) ※現在、時短要請中はディナー17:00〜20:00 (コース18:00LO、アラカルト18:30 LO)
定休日 日曜・祝日
坪数客数 12坪12席
客単価 レストラン1万5000円、ビストロ5000~6000円
オープン日 2021年4月5日
関連リンク ars(Instagram)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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