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高円寺に「酒チャンス」が開業。「クソ物件オブザイヤー」入賞の「ドリフうどん屋」こと奥行わずか1m・総面積3坪の狭小物件を、全宅ツイが「街の縁側」を目指す立ち飲みに再生!

3月26日、高円寺に「酒チャンス」がオープンした。奥行1m、幅10mで敷地面積4坪の超変形地に建つ3坪の平屋で営業する立ち飲みだ。もともとは立ち食いうどん店が営業していたが、2018年秋の台風により建物が倒壊。その様子がまるでドリフのコントセットのように倒れたことから、ネット上で「ドリフうどん屋」の異名で話題になった。その年の不動産業界で話題になった物件や事件を選ぶ「クソ物件オブザイヤー」でも入賞したが、今回、その企画を主催する全国宅地建物取引ツイッタラー協会が、「ドリフうどん屋」の土地を飲食店として再生。「街の縁側」をコンセプトに“1000円で気持ちよく酔える店”を目指した。 オープン当初はネット上の口コミから集客していたが、現在は徐々に地域の憩いの場をして認知を上げている。

高円寺駅から徒歩1分の好立地。面積自体は狭いが、高さが3.5mもあるためひときわ目立つ。超変形地で建築が難しい土地だったが、プロによる工夫が詰まっており建築関係者が視察に来ることも多いという
長細い形状の店内。カウンターの立ちスペースと、縁側のように座れるスペースで計12人ほどが収容可能
フード・ドリンクはワンオペゆえ洗い物削減のため紙コップで提供。写真左からレモンチェロとトマトジュースを合わせたオリジナルカクテル「インチキーナ」と、フードの「うずら卵フライ」、「チキンボールフライ」。にんにくを効かせた秘伝のタレが味の決め手だ。イメージは「大人の駄菓子」
店を切り盛りするのは店主の「新宿太郎」氏。もともとは建設業で働いていたが、コロナ禍で仕事がなくなってしまったところに白羽の矢が立った。飲食店は未経験だったため、中野「雛家」でオープン前に4か月間修業。現在は「酒チャンス」を地域の憩いの場とするべく日々奮闘中だ

(取材=大関 まなみ)


Twitter発・不動産コミュニティが飲食店経営に挑戦!

高円寺駅北口から徒歩1分。19時台には10分間に約100人の人通りがあるとも言われる駅前の通り沿いに「酒チャンス」がオープンした。同店の床面積はわずか3坪、奥行1m強、道に沿った幅は10mという超変形地。表通りに面した部分に大開口の客席を設け、店内と外の境目をなくしたオープンな造りはまさに「縁側」だ。

もともとこの場所は約40年前から営業していた立ち食いうどん店だった。ところが2018年10月、台風によって建物が倒壊。変形地ゆえに建付けが悪く、まるでドリフのコントセットのように倒れた様子が「ドリフうどん」の異名でネット上で話題になり、全国宅地建物取引ツイッタラー協会(以下、全宅ツイ)が主催する「クソ物件オブザイヤー」では、同年の3位に入賞した。

この全宅ツイとは、もともとはTwitter上で不動産関係者が結成し交流し合う団体。やがて「クソ物件オブザイヤー」の開催や、不動産関係者同士の交流会やそれに伴うビジネスマッチングの創出など活動の幅が多岐にわたるようになり、2018年に法人化。「クソ物件オブザイヤー」の開催に加え、メディアへの寄稿や書籍の出版、シェアハウスの運営や物件の清掃事業など不動産にまつわる事業を行っている。本プロジェクトのリーダーを務める「かずお君」(Twitter上のハンドルネール)は、学生時代にカフェの間借りでバーの営業を始めたのを皮切りに、過去4店舗の飲食店の経営に携わった経験を持つ人物だ。現在は独立し、同社を含めた複数の不動産企業を営んでいる。

「かずお君」は、全宅ツイで「酒チャンス」を開業することになった経緯について、こう話す。「全宅ツイを法人化して今年で4期目になり多少小金が溜まったので、設立時の目標であった不動産を取得して登記簿謄本に社名を刻みたいね、というノリから企画が始まりました。どの不動産を取得しようか考えたときに、『ドリフうどん屋』が思い浮かんだんです」。

解放感ある3.5mの天井高、視線がぶつからない導線など狭くても居心地の良さを追求

早速地主に交渉を試みるも、本土地への思い入れが強く当初は難航。全宅ツイのメンバーが粘り強くコミュニケーションを取り続けた結果、借地契約を結ぶことに成功した。物件の狭さを考慮し、かつ駅前好立地の特性を生かすため、おのずと立ち飲み店にすることが決まっていった。

倒れたうどん店は撤去され、更地となっていた土地に新たに平屋を建設。設計を担当したのは一級建築士である全宅ツイのメンバー「お鯛」だ。狭小物件だが、3m超の天井高を確保し狭さを感じさせず、かつ通りから目立つ造りを意識した。壁に沿ってカウンターを設置し立ち飲みができるほか、道に向かって腰かけられる縁側風の座り席も設置している。立ち飲みのお客と座るお客同士や、お客と通行人の視線が合わないよう配慮し、狭いながらも居心地のよさを追求したのもポイントだ。奥にキッチンを設えるが、物件の幅が1mゆえ人ひとりが横向きになってようやく入れるほどの空間となっている。「プロ集団が作っているので、基礎工事をしっかり行い、もう簡単に台風で倒れることはない」と「かずお君」は言う。開業に際しては「台風で倒れた”伝説のクソ物件”を再建したい!」と題してクラウドファンディングを実施。約600人から900万円超の支援を集めることに成功した。

予算1000円、滞在時間30分で「サクッと気持ちよく酔える店」

フード、ドリンクは学芸大学「鳩乃湯」など飲食店を運営する近藤商会(東京都板橋区)の代表であり、全宅ツイのメンバーでもある吉利雄太氏氏がプロデュース。「予算1000円で滞在時間30分、サクッと気持ちよく酔える」を目指したメニュー構成だ。まずお客は100円10枚綴りになっている1000円のチケットをキャッシュレスで購入。これはおおよそフード1品+ドリンク2品の目安だ。

ドリンクは生ビールとノンアルビールが500円、それ以外のサワーやカクテルがすべて400円。ハイボールやレモンサワー、ウーロンハイ、カップ酒の日本酒、焼酎のほか、オリジナルドリンクは10品、黒糖紅茶焼酎のソーダ割の「人生達成」、昆布焼酎と梅干、お湯の「駿河」、苺リキュールと梅酒、豆乳の「C・J・E」など。これらオリジナルドリンクの名前は、クラウドファンディングのリターンとして用意した命名権を得た支援者によるものだ。

フードは、「ササミチーズフライ」「アジフライ」「ポテトフライ」など揚げ物5品と「生キャベツ」で、各200円。同店ではコンロを設置するスペースがないため、フライヤーでできる揚げ物に絞った。揚げ物にはニンニクを効かせたピリ辛味のオリジナルのタレを絡めており、これが癖になる美味しさと評判だ。

高回転の店づくりでお客の途絶えない人気店に。地元への認知も拡大中、展開も視野に

コロナ禍でオープンして1か月ほどだが集客は順調。「軽く1杯」のサク飲み客が、短時間で入れ代わり立ち代わり訪れる。当初はネットの口コミ客や不動産関係者を中心とした遠方からの目的客でにぎわったが、徐々に地元の人への認知が広がりはじめ、「街の縁側」という地域密着のコンセプトが実現されつつあるという。

この「酒チャンス」は展開も視野に入れている。「商品力と価格力をウリにした高回転で利益を出すビジネスモデルはそのままに、フードの評判が良いのでもう少し広い調理スペースでバリエーションを増やした店をやりたいですね。路面で10坪以下、超好立地でなくても、1.5等地くらいで居抜きの低コストで出店できる場所があれば」と「かずお君」は話す。

店舗データ

店名 酒チャンス
住所 東京都杉並区高円寺北2-3-6 全宅ツイ会館

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アクセス 高円寺駅から徒歩1分
営業時間 17:00~23:30(LO23:00)
定休日 月曜
坪数客数 3坪12人
客単価 1500円
運営会社 合同会社全国宅地建物取引ツイッタラー協会
オープン日 2021年3月26日
関連リンク 酒チャンス(Twitter)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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