創業時からDIYにこだわる同社が、初めてデザイナーを起用し肝いりのリニューアル
JOHコーポレーションは、2007年、東北沢に焼鳥店「十七番地」を開業し創業。10年にわたり歌舞伎町で「伝説のホスト」と呼ばれるほどの売れっ子ホストだった常田利幸氏が代表だ。ホストを引退し、かねてからの夢であったという焼鳥店を独学で開いた。ホスト時代に培った持ち前の接客力を発揮し、次々と店舗展開し繁盛店に育て上げ、現在は直営6店舗、FC5店舗を展開している。
下北沢の「十七番地」は、3店舗目として2007年に開業し、実は同店のリニューアルは今回が3回目だ。売上が好調につき、隣のテナントが撤退する際に壁を抜いて拡張するリニューアルを二度にわたり行っている。今回のリニューアルでは、内装やメニューを一新した。
同店も含め同社では創業からこれまで店の内装は常田氏自ら手掛けることをポリシーとしてきたが、今回は、初めてデザイナーを起用、多くの繁盛酒場のデザインを手掛けてきたスタジオムーンの乙部隆行氏が内装を担当した。「いつも店づくりは私が図面を引くところから自分で行っていましたが、その際、参考にしていたのがスタジオムーン。乙部さんは憧れのデザイナーでした。いつか依頼したいと思っていたところ、縁あってリニューアルを担当してもらえることになりました」と常田氏は話す。
13坪に60席を詰め込んだ大胆な店舗デザイン
今年の初め頃から、何度も杯を交わしながら乙部氏と議論を重ねて内装イメージを膨らませていったという。平坦だった店内は、奥のゾーンの床を下げ、中二階を新たに増設。わずか13坪に60もの席を配置するという大胆な構造へとチェンジ。入口は間口を大きくとり、カウンターの全容が見える造りに変えた。「冷蔵庫の中身までお客様に見えてしまう、『変態』な造りです。整理整頓や衛生管理をしっかりしていないとできません」と常田氏は笑う。随所に古材を使用し、木目の趣を生かした空間に。壁には和紙を貼って躍動感のあるアクセントにしている。
メニューも一新、焼鳥店から総合居酒屋に
今回はデザインだけでなくメニューも一新した。以前は焼鳥が中心だったが、今回は炉端をはじめとしたバラエティ豊かな品揃えで、総合居酒屋を目指している。
炉端焼きには「銀だら西京」(780円)、焼鳥時代から人気の「白レバ炙り」(600円)など魚、肉に加え、「とまと肉巻き」「アスパラ肉巻き」(各250円)などの肉巻きも用意し、串に刺さないスタイルで提供。その日の鮮魚を使った刺身も「本マグロ」(800円)、「さんま」(980円)、「白子」(780円)など。それ以外にも一品料理として「アボカドキムチ」(450円)、「ニラ醤油」(250円)、「アジフライ」(680円)などバラエティ豊かに、日替わりメニューも含め全70品ほどもあるが、仕込みの負担が大きいため、来月からは出数を見ながらメニューの見直しをかけ、その半分強の品数にしていくという。
お任せ料理の飲み放題コース(2時間5000円、3時間6000円)もウリとして訴求したい考えだ。料理の品数は決めず、お客が「もういらない」と言うまで少量で多種類を提供し続け、飲み放題には一部日本酒もあるお得なコースだ。
ドリンクは「ウーロンハイ」「レモンサワー」(各400円)、「生ビール」「ホッピーセット」(各500円)など。果実酒、本格焼酎、日本酒など総合居酒屋として幅広いラインナップだ。
今年はあと2店舗出店、その後はスタッフ教育などに注力し、今ある店を「濃い店」に
「店舗デザインを見て入店してくるお客様も多く、乙部さんのデザインの力を改めて感じています。まずは内装の力でお客様を引き寄せて、そこからは私の接客力で常連にしたい」と話す。これまでも接客力、人間力で繁盛店を作り上げてきた常田氏。「メニューや内装も必要ですが、私が何より重視するのは接客。お客様ひとりひとりに対して一発勝負。リピーターになってもらうには“普通の接客”をしていてはダメなんです」。箸を落とした音がすればすぐさま新しいものを持って駆けつけ、グラスに氷が当たる音がすればお代わりのサインだとすかさず注文を聞きに行く。こうした積み重ねこそが多くの常連を作り出している秘訣だという。常田氏はホスト時代を「飲食に行くまでの寄り道」と振り返るが、そこで学んだ接客が今大いに生きている。「ただ、そういった接客を私だけができても、私が店から抜けた瞬間に売上が落ちてしまい意味がない。スタッフへの教育も力を入れているところです。今年は中野に2店舗を出店予定ですが、以降は展開よりもスタッフの接客力の向上など、今ある店を濃くしていきたいですね」と常田氏は話す。