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学芸大学にホルモン居酒屋「一哲」がオープン。スイミングスクール運営会社代表の地域愛マーケティングがエリアの需要を掴む

7月22日、学芸大学駅に「一哲」がオープンした。運営は水泳の指導や講演活動を行うジェイ・エス・ビィ。学芸大学を熟知した代表の佐藤淳一氏と、ホルモン店出身の料理人兼店長の加藤哲信氏のコンビが立ち上げたホルモン居酒屋だ。ホルモン焼きが楽しめるテーブル席とロースターのないカウンター席を備え、メニューはつまみとなる一品料理からホルモン焼き、〆のご飯までを用意。サク飲みできる居酒屋とホルモン店を融合させた業態で、少人数のハシゴ、大人数じっくり飲みなどエリアの幅広い需要を掴む。

十字街の小道を進んだ突き当たりに立地
内装も学芸大学を応援したい気持ちから、内装業者も地元の業者に依頼。コンクリートの壁はそのままに、広々とした席間でテーブルを設置
一人でも気軽に入れるカウンター。カウンターにはあえてロースターを設置しなかったことが、異なる層をキャッチするきっかけとなった
左手前から、やわらかさが自慢の「ゆでタン」、その日のおすすめを盛り合わせた「ホルモン盛り合わせ 6種」、真空低温調理の「刺身3点盛り」
好評な〆料理。左から、丸くにぎったご飯をゴマの葉で包んだインパクト抜群の「ゴマの葉にぎり」、韓国風の「冷麺」
左から3番目が佐藤淳一氏、右隣が加藤哲信氏。店名の「一哲」は両氏の名前から一文字ずつとって名づけた

(取材=福井 晶)


飲食店立ち上げは10年前の恩返し

ジェイ・エス・ビィ(東京都目黒区)は、代表の佐藤淳一氏が2014年に設立し、現在7年目。同氏に加え、オリンピックメダリスト1名を含むオリンピアン2名が在籍し、水泳指導や講演活動などを中心に活動している。佐藤氏は大学入学とともに学芸大学に移り住み、15年以上。飲食店を手がけるきっかけは、大学院生の頃に遡る。「当時、食事に困る時期がありまして。ありがたいことによく通っていた老舗蕎麦店の『丸はし総本店』の先代が、ご飯を食べさせてくださり、苦しい時期を支えてくださいました。ご本人に『いつか必ず恩返しをさせていただきます』と伝えたところ、お店にではなく学芸大学の街に還元してほしいとの言葉をいただきました。この時からずっと学芸大学の飲食のパワーに支えられてきましたので、いつかはこの街で飲食事業を立ち上げたいと考えていました」と同氏。

佐藤氏と料理人兼店長の加藤氏が出会ったのは、約10年前。飲みに通っていたホルモン店で、加藤氏がスタッフとして働いていたのがきっかけだ。「私は飲食経験者ではないので、飲食のスキルがあって、“学芸大学の多くの人を元気にする”というミッションを一緒に担ってくれる人材を探していました。彼の働いているお店も大好きでしたし、彼の働きぶりを見て、いつか一緒に学芸大学でお店をやれる日が来るといいなと思っていました」と同氏。その後、様々な偶然やタイミングが重なったこともあり、両者の思いが一致。2019年6月から開業準備に取り掛かった。また、物件探しなどの開業準備と並行して、学芸大学のニーズや客層を肌で感じるべく、佐藤氏が懇意にしている居酒屋「ひとひら」のオーナー赤川登希夫氏の協力を得て、加藤氏は同店で1年間ほど働いた。

学大愛溢れる猛アピールで物件を取得

物件は新築で飲食店が密集する十字街にある好立地。地下1階から2階までが店舗、上の階が住居スペースとなっているビルだ。「工事中に見つけて、ここしかないと思い問い合わせたのですが、最初はビルオーナーになかなか首を縦に振ってもらえませんでした。当初は女性専用のマンションにする予定だったとのことで、煙の問題などを理由に断られてしまったんです。しかし、どうしても諦めきれず、何とかお願いをしてプレゼンの場を設けてもらったところ、街に恩返しがしたいという我々の熱意が届いたのか、良いお返事をいただくことができました」と佐藤氏。

15年蓄積したマーケティングを店作りに発揮

同店の強みは、エリアの需要を熟知した佐藤氏と、飲食のスキルを持った加藤氏の長所を活かした店作りにある。業態は、加藤氏の得意分野のホルモンを主軸とし、夜の飲み需要からファミリー層の食事利用までを獲得できるホルモン居酒屋。ターゲットはハシゴ飲みの少人数客、家族連れなど幅広い。佐藤氏は「地域に根付いた世代を超えて愛されるお店、人が人を繋ぐ場所で在り続けたいという思いが強い。限定的な層にターゲットを絞るというよりも、より多くの人たちに喜んでもらえるような店作りを意識しました」と話す。

店内も多様な層をキャッチする設計を意識した。ロースターのないカウンター席は、ホルモン焼きを楽しむことができないが、一品料理でサク飲み利用する人の受け皿になっており、テーブル席が満席時のつなぎとしても利用可能。ホルモン焼きも楽しめるテーブル席は席間を広くし、ベビーカーを押した家族連れも気軽に来店できるように作ったという、加えて、店奥には著名人なども利用しやすいよう半個室を2部屋設けた。

一品料理、ホルモン焼きに加えて、〆料理も人気

フードメニューは、加藤氏の目利きによって仕入れるホルモンを中心に構成しつつ、一品料理や〆料理などもバランスよく揃える。人気メニューはカウンター席、テーブル席ともに注文率が高い「ゆでタン」(600円)、「お刺身三点盛り」(1400円)。そのほか、「ホルモン煮込み」(450円)や「タンシチュー」(700円)などの一品料理、低温調理を施した「れば」、「はつ」、「たん」(各700円)の刺身も好評だ。また、一品料理の「田代屋さんのしらたき」(500円)は「ひとひら」から独立した居酒屋「田」の田代善彦さんから引き継いだ一品。学芸大学にある居酒屋「ひとひら」と「田」と同店の3店舗をつなぐストーリーのあるメニューも用意した。ホルモン焼きはその日のおすすめを盛り合わせた「ホルモン盛り合わせ(4・6・8種から選べる)」(1500円〜)のほか、「れば」、「はつ」、「がつ」(各600円)などの豚、「サンドミノ」、「ハチノス」、「センマイ」(各700円)などの牛をそれぞれ約10種類揃える。〆メニューは7種類と豊富で、ゴマの葉を特製のタレにつけておにぎりに巻いた「ゴマの葉にぎり」(500円)やモッチリとした麺が特徴の韓国風「冷麺」(850円)などが並ぶ。佐藤氏は「ハシゴ飲みの最後に欠かせない〆メニューは、ラインナップも味わいもこだわりました。意外だったのですが、これだけを食べに来る人もいるのが嬉しいですね」と笑顔を見せる。

ドリンクメニューは居酒屋仕様で「生ビール」(500円)、サワー類450円などを揃えながら、ホルモンに合う酒をラインナップ。また、マッコリとビール「もっこり」(600円)や、フルーツリキュールを辛口のジンジャーエールで割った「学大スカッシュ」(500円)など、お客とのコミュニケーションを生み出すドリンクも用意する。また佐藤氏の「学芸大学は本格焼酎のソーダ割りや日本酒を好んで飲まれる方が多い」との見立てから、常時焼酎を8種類、日本酒も季節ものを中心に3種類程度揃えている。

学芸大学の街に馴染む、長く続く店に

2019年11月には物件の契約が終わり、コロナの影響でオープン延期なども経験した同店。現状はオープンから22時頃まではホルモン焼きができるテーブル席をメインに回転し、22時以降は他店舗からのハシゴ客も訪れ、カウンター、テーブル共に席が埋まることも珍しくないという。また席間の広さが功を奏して、感染予防を気にする一人客のニーズも掴めている。今後はホルモン焼きの店としての認知拡大と共に、ライトな居酒屋づかいができるという点も訴求し、回転率を上げていきたい考えだ。

長期的な展望として佐藤氏は、「飲食立ち上げの経緯にもある通り、複数店舗展開したいというよりは、地域に根ざして長く続けられる店でありたいと思っています。それこそ私が助けてもらったお店のように世代を超えて愛してもらうくらいでやっと還元できると思っているので、まだまだ先は長いです」と話し、学芸大学への想いを熱く語った。

店舗データ

店名 一哲(いってつ)
住所 東京都目黒区鷹番2-20-19 RC学芸大学 1F

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アクセス 学芸大学駅から徒歩3分
電話 03-6452-2422
営業時間 17:00~24:00
定休日 無休
坪数客数 21坪48席
客単価 4000〜5000円
運営会社 株式会社ジェイ・エス・ビィ
オープン日 2020年7月22日
関連リンク 一哲(Instagram)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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