もつ鍋店のFC経営を経て、自社ブランドのすき焼き店を出店
森氏の飲食経験はコーヒーチェーンのドトールコーヒーで働いたことが始まりだ。その後、一時期は家業の手伝いをしていたが、神戸で人気の塩もつ鍋店「博多もつ鍋と炭火焼き鳥 権屋」の業態に興味を持ち、2010年にFCでは関東初出店の店舗として開業。2年ほど経営を続けた。「惜しくも店舗は閉業しましたが、この頃に繋がった肉の卸業者と今でも取引していることは大きな財産ですね」と、森氏。手に入れた肉の仕入れルートを活かし、2012年に自社ブランド1号店のすき焼き店「厨 七代目 松五郎」を渋谷に出店。人気を博し広尾に2号店を出店するも、店舗展開の難しさに直面する。森氏は当時を振り返り「ドトールの頃に多店舗の運営をしていたので自信があったのですが、いざ自分の店となると想いが強すぎることが枷になっていたのだと思います」と、語る。自身の接客や人柄で常連を掴む一方、森氏と同様のパフォーマンスをこなす後進を育てることが難しく、両店舗の経営は煩雑に。一度整理をつけるため、2店舗目を畳み、1号店のみの経営に戻すという決断を下した。
近藤氏が慣れ親しんだ関西式の一人鍋しゃぶしゃぶを提案
店舗展開の難しさを痛感した森氏は、経営の学びと人の繋がりを得るためにパッションリーダーズという異業種交流会に参加し、代表の近藤太香巳氏と出会う。「厨 七代目 松五郎」に魅力を感じていた近藤氏から、同社の事業「ネクシィーズ・ゼロシリーズ」の新サービス「お店まるごと初期投資オールゼロ」の旗艦店舗として出店することを提案される。多店舗展開を前提として、パッケージ化された商品と店舗モデルをコンテンツとする事業モデルに可能性を感じた森氏は、これを快諾。近藤氏とともに開業準備を始めた。
業態は、関西出身の近藤氏の提案で、ひとりしゃぶしゃぶ店に。関東ではほとんど見かけない珍しさと、一人で鍋をつつける気軽さで、一名客の利用を狙う。
オペレーションの簡略化も視野に入れたメニュー構成
看板となる肉は昼、夜ともに熟成されたA4、A5の黒毛和牛を、注文が入り次第お客の目の前でスライスして提供するスタイルだ。また、肉以上にこだわったのが自家製のポン酢。酸味に加えて塩味が強い関西系の味わいを再現するべく、年単位の開発期間を経て完成させた。
ランチタイムは「切り落とし」(980円)や「ネック」(1280円)、「ロース」(1580円)など9種類のラインナップ。それぞれ、ご飯(おかわり自由)と野菜10種盛り合わせ、タレ1種(ポン酢、ゴマだれ)、〆の一口ラーメンが付くセットで、近隣のオフィスワーカーが気軽に利用できるよう価格帯を1300円前後と抑えた。
ディナータイムは「特選ロース」(3880円)や「上ロース」(3180円)、近藤氏の名を冠した京都産の「TAKAMI豚」(1880円~)など、それぞれの肉に野菜13種盛り合わせとタレ2種(ポン酢、ゴマダレ)が付いたセット10種。肉の部位とボリュームを上げ、飲み客の利用も狙う。
ドリンクは「生ビール」(600円)、「レモンサワー」「ウーロンハイ」(550円)、「角ハイボール」(500円)や「山崎プレミアムハイボール」「白州森香るハイボール」(800円)などのウイスキー。カクテル(各650円)やワイン(赤白、グラス600円、ボトル2800円)など、多彩。今後の店舗展開に向けてオペレーションをパッケージ化するため、シンプルなメニュー構成でシステマナイズにすることを優先した。
苦境にあえぐ経営者の新たな選択肢にすべく、事業拡大を目指す
今回の出店は、近藤氏のプロデュースのもと「店舗まるごと初期投資オールゼロ」の旗艦店として開業したかたちだが、森氏はこの事業に可能性を感じているという。「商品力のあるコンテンツを持つ業態を、初期投資ゼロで開業できることは、経営者にとっては魅力的だと思います。特に、今回のコロナショックで店舗運営に苦戦している経営者に向けた対策になるよう、この事業が広がっていけばいいですね」と、語る。
店舗データ
店名 | ひとりしゃぶしゃぶ 七代目 松五郎 |
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住所 | 東京都港区赤坂3-7-12 ベストウェスタンホテルフィーノ東京赤坂1階 |
アクセス | 赤坂駅、赤坂見附駅から各徒歩3分 |
電話 | 03-5544-9977 |
営業時間 | ランチ 11:30~売り切れ次第、ディナー 17:00~22:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 46坪 30席 |
客単価 | 3300~4400円 |
運営会社 | 株式会社しゃぶしゃぶ 松五郎 |
オープン日 | 2020年6月15日 |
関連リンク | ひとりしゃぶしゃぶ 七代目 松五郎(Facebook) |