シェフとして自分の料理を出したい。自分の店、ビストロを開業したい
大学生時代に飲食店でアルバイトをした経験から、当時はうどん店の開業を目標とした小杉龍介氏。卒業後、飲食チェーンのキッチンスタッフとして入社したが、会社は1年足らず辞めてしまったのだ。その後はうどん店開業から目標を変え、料理人として都内のビストロやイタリアンなどで働き経験を重ねていたという。そんな折、あるビストロで出会った一人のシェフが小杉氏の将来を決定づけた。「一から料理をつくる確かな知識と技術を持ち、ステージに立つように客と向き合えるシェフになりたい」と。料理の世界に入って10年を過ぎた小杉氏が初めて料理の奥深さと面白さに開眼した時だった。その後シェフとして移籍した店で「シェフとして自分の料理を出したい。自分の店、ビストロを開業したい」と独立の意思を明確にした。それから約1年間、焼肉店などで働き開店資金の貯めた開業に至ったのだ。
元ラーメン店だった同店と出会った瞬間にフランスと日本の出汁で炊く「おでん」を閃いた
当初からすぐ出せる料理を考えてカウンターのある居抜き物件を探していた小杉氏。そして元ラーメン店だった同店と出会った瞬間に、フランスと日本の出汁で炊く「おでん」が閃いたという。日本のおでんは、出汁で煮込むフランスの家庭料理の「ポトフ」に通じると。まして「おでん」を定番にした酒場の敷居は低く、気軽なフレンチビストロをイメージする小杉氏の考えに合致したのだ。なによりも2大出汁文化として知られる日本とフランスでは料理の基本は丁寧にとる出汁から始まり、料理人としての重要な仕事となるからだ。こうしてクラシックな手法に則り2日かける澄んだフランスのフォン、3日目に合わせる日本の昆布出汁のハイブリッドな「フランスおでん」が生まれた。
ゆっくりと時間をかけてワインと共に楽しむ本場風ビストロスタイル
名物「フランスおでん」はその日や季節により多少具材は変わる。「赤玉子」、「だいこん」、「にんじん」といった馴染み深い具材から「牛のほほの赤ワイン煮込み」、「フォアグラのポワレ」などフレンチらしい具材までを提供する。単品は200円から1000円代。おすすめは「おまかせ5種」(1200円)だ。メニューにはビストロとしての料理も揃う。「自家製パテ・ド・カンパーニュ(田舎風)」(800円)、「とろける白レバーのムース」(600円)。「フラ屋特製つまめるキーマ」(900円)「蝦夷鹿のステークアッシェ(超赤身極粗ハンバーグ)」(1500)。店内の黒板にもその日おすすめ料理を用意する。前菜からデザートまでをゆっくりと時間をかけてワインと共に楽しむ本場風ビストロスタイルを基本としているのだ。
最初の一杯からぜひ飲んで欲しいとワインはグラスでスパークリング、赤白が合計で20種類(500円〜)を用意する。ボトルは4、50種類(3500円〜)。優れたクオリティは当然として、誰もが驚くようなコストパフォーマンスを実現するために日本ワインから海外ワインまでを幅広く厳選するという。セレクトするのは小杉氏の心強い二人のサポーター。経営管理からワインの選定、接客も担当するフリーで飲食経営コンサルタントを行うマネージャーの渡邉司氏と、ワイン仕入れから接客までを担当する馬見塚寿年氏(SOU代表取締役埼玉県所沢市)だ。
天性のフラを持つシェフがいると言われる店にしたいし、そんな人間になりたい
店名の「フラ屋」のフラはフレンチ(フランス)のフラ。フラっとこれる。酔っぱらいがフラフラ、といろいろな「フラ」が盛り込まれているが一番は落語の用語にある「ふらがある」という。理屈では説明できない天性の不思議なおかしさがあることなどを指し、芸人への一番の褒め言葉とも言われるらしい。「天性のフラを持つシェフがいると言われるお店にしたいし、そういう人間になりたい」という小杉氏の想いが込められているのだ。また小杉氏は新井薬師前をフレンチカルチャー発信地にしたいと考えている。実は新井薬師前のエリアには小箱店鋪ながらも実力派と呼ばれるフランス料理店やワインバルが集まっているが認知度は高くない。そんな知る人ぞ知る街の存在を広めて行くのが小杉氏の目標の一つにあるからだ。
店舗データ
店名 | フランスおでん フラ屋 |
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住所 | 03-5942-7089 |
アクセス | 新井薬師前駅から徒歩6分、中野駅から10分 |
電話 | 03-5942-7089 |
営業時間 | 【火〜金】17:00〜24:00【土日祝】15:00〜22:00 |
定休日 | 月曜 |
坪数客数 | 15坪15席(カウンター10席:テーブル5席) |
客単価 | 5000円 |
オープン日 | 2020年1月17日 |