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幡ヶ谷に「will o’ wisp」が開業。パリやNY、代々木八幡「PATH」を経て独立。フレンチベースに自由闊達な無国籍料理を、肩ひじ張らないビストロスタイルで提供

2月16日、幡ヶ谷に「will o' wisp(ウィル オ ウィプス)」が開業した。パリやニューヨークのフレンチレストランや、代々木八幡の「PATH」で経験を積んだ光安北斗氏による独立店舗だ。フレンチをベースにしながら世界各国の料理をアレンジした、自由闊達な料理を提供。世界で磨いた腕を振るいながらも、肩ひじ張らず気軽に使えるビストロに仕上げている。

幡ヶ谷駅から徒歩1分の好立地。通りに面した部分は前面ガラス張りにして、開放的な印象に
奥へと伸びる長方形の店内。手前にテーブル席、その奥にカウンター席と立ち飲みスペース、最奥には個室風の空間が。子連れにも楽しんでほしいと壁の棚には絵本を並べる
店内奥のテーブル席は、格子扉で区切られ、個室のように使用することも可能。天井には白と青の布を下げて空間のアクセントに
黄色いソースが特徴の「天草大王のロースト~カナリア~」。カリッと焼いた鶏肉に、マスタード、アサリ、サフランのソースには、とろろ昆布で粘度を加えている
「ウフマヨ」は、半熟卵ヒラメの卵とカラスミをトッピング。フレンチ定番の品を、たまご尽くしにアレンジした一皿だ
写真右から代表の光安北斗氏、ワイン担当のマロニさん、料理・サービス担当の岡田和樹氏。岡田氏は「PATH」の常連で、パティシエから転身

(取材=大関 まなみ)


22歳で料理人を目指しフランスへ、そしてNYに。約7年に渡って海外で武者修行

幡ヶ谷駅からすぐ、商店街通り沿いに突如登場した「will o’ wisp」。駅前とあり、地域住民を中心に注目を浴びている。オーナーは料理人としてキャリアを積んできた光安北斗氏。現在34歳だが、22歳の時にフランス・パリから料理修業を始めたという、一風変わった経歴の持ち主だ。

10代の頃はサッカーの指導者を目指し、スポーツ関係の専門学校へ。卒業後は1年間、ニュージーランドに語学留学をした。「漠然と飲食店を開きたいと思っていましたが、ニュージーランドで様々な人と出会って過ごすうちに、だんだんとその思いが強くなっていきました。当初はバーのような業態をやりたいと考えていましたが、飲食店である以上、美味しい料理も提供したいと思って。世界で一番美味しい料理といえば、フランス料理だろう!と、フランスへ行きました」と光安氏。留学を終えた後、渡仏。料理の経験はなく、しかも何のツテもなかった状態で異国の地に飛び込んだ。

そこで運よく職を得たのが、当時、日本人で初めてパリでミシュラン二つ星を獲得した「Passage 53」。立ち上げから2年ほど、シェフの佐藤伸一氏に師事。そのほか、いくつかのレストランでフランス料理を学び、計7年間を過ごした。その後は、アメリカ・ニューヨークへ。20軒以上のレストランに働かせてほしいと連絡を取り、唯一、返事をくれたのが「Battersby」だ。「同店のシェフ、Walker Sternは料理の技術はもちろんのこと、枠にとらわれない自由な発想の持ち主。フレンチをベースに、メキシカンやアフリカ料理の要素を取り入れた独創的な皿に魅了され、滞在した半年の間、大きな影響を受けました」と話す。

「ここだ!」と直感した物件と出合い、独立へ

帰国後は、友人づたいに代々木八幡のビストロ「PATH」に。立ち上げから3年間勤務した。もともと「10年経験を積んだら独立しよう」と考えていた折、ちょうどそのタイミングで知人から同物件を紹介されたことで、独立へと舵を切った。19坪ほどの元カメラ店の物件で、駅からは徒歩1分、人通りの多い商店街という好立地だ。当初は1人で回せる10坪前後の物件を検討していたが、それ以上に物件に惹かれたという。「見た瞬間、『ここでやりたい』というよりも、不思議と『自分はここで店をやるんだ』と思えたんです。立地条件などは考えていなくて、本当に直感で決めました」と光安氏は話す。

デザイナーと議論を重ねて完成させた店内は、落ち着いたダークトーンの木材を基調に、ところどころに和のエッセンスを散りばめた空間に仕上げた。入口すぐにテーブル席、その奥にオープンキッチンを臨むカウンター席、店内奥は半個室風の空間を設えた。現在は着席のみだが、今後、スタッフなどの体制が整い次第、壁側をスタンディングスペースとしても利用できるようにする予定だという。

フレンチをベースに、修業時代に触れた世界各国の料理の要素をプラス

料理は、光安氏のこれまでの経験をいかんなく発揮。フレンチをベースにしつつも、世界各国の料理の要素をプラスした無国籍料理を、軽いつまみになる前菜から、メイン料理、パスタやデザートまで約20品を日替わりで用意する。

スペシャリテの「天草大王のロースト~カナリア~」(2800円)は、熊本の地鶏「天草大王」に、マスタード、アサリ、サフランのソースを添えた逸品。ルーツはアフリカ・セネガルの郷土料理、プーレヤッサという鶏肉をマスタードで煮込んだ料理で、それを光安氏流に再構築したものだ。その他、「ムケッカ~ブラジルの煮込み~」(2400円)など、フランス時代にアフリカやブラジル出身の同僚に教えてもらった料理を生かしたという品も多い。

信頼する生産者から仕入れる旬の素材を使うこともモットーとしており、佐渡島や唐津から直送される魚介を使った「鱈のポワレ、ブラッドオレンジソース」(2600円)、「アンコウのサルサ」(600円)や、佐賀県の白石牛の「白石牛のカツレツ、焼きリンゴのピューレ」(3400円)なども。開業前に光安氏が自ら現地に足を運び、惚れ込んだ食材を多用する。

「ウフマヨ」(600円)などフレンチ定番の品も用意するが、半熟卵にヒラメの卵とカラスミをトッピングするなど、自在なアレンジを加えているのが見どころだ。

ドリンクは自然派ワインを中心に用意。常時、赤・白をグラスで各3品に加え、泡やロゼ、オレンジを用意し900円~、ボトルは5800円~。フレンチにとどまらない自由な料理に合わせて、フランスやイタリア産に加え、ニューワールド系も多くラインナップする。それ以外には、タップでクラフトビール「ヨロコブペールエール」(900円)を用意。同銘柄をタップで楽しめるのは同店が初だという。

店内はテーブル席からカウンター席、立ち飲みまで用意しているように、しっかりとした会食はもちろん、軽い食事、ちょい飲みまでの幅広いシーンで利用可能。クオリティの高い品々を用意しながら、シーンを限定しない懐の深さも同店の特徴だ。

今後も多彩な料理を展開。店外でのコラボイベントにも意欲を燃やす

現在はディナー営業のみだが、今後はランチ営業も開始予定。「オープンしたばかりでまだバタバタしているので、体制を整え、お客様にしっかりと満足してもらえる店にしていきたい。メニューの引き出しはまだまだあるので、これから色々な料理を提供できるかと思うとワクワクします」と光安氏。

「僕は20代の多くを海外で過ごし、海外で“大人にしてもらった”と思っています。恩返しを込めて、その人達に恥じることないよう歩んでいければ」と意気込む。今後、店舗の展開は考えておらず、それよりも同店を長く愛され続ける店にすることが目標だ。店外でのイベントにも積極的に参加したい考えだ。「国内はもちろん海外などでもコラボイベントを積極的にやりたい。遠くからでも読んでもらえるような料理人になるべく、これからも腕を磨いていきたい」と話す。

店舗データ

店名 will o' wisp(ウィル オ ウィプス)
住所 東京都渋谷区幡ヶ谷1-33-2

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アクセス 幡ヶ谷駅から徒歩1分
電話 03-5738-7753
営業時間 18:00~23:00LO
定休日 不定休
坪数客数 19坪24席+スタンディング
客単価 5000~6000円
オープン日 2020年2月16日
関連リンク will o' wisp(Instagram)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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