博多の人気店のメニューが約30品も勢揃い!
まず「博多金の蔵」のメニューの一部を紹介しよう。『赤坂こみかん』名物にしたい‼コールスロー(699円)、『釜喜利うどん』元祖!雲仙ハムカツ(1ケ349円)、『博多水炊き とり田』せせり黄金ポン酢(399円)、『炉端NUMBER SHOT』リッツレーズンチーズ(399円)、『博多炉端 魚男』博多肉じゃが?(699円)、『ラピュタファーム』味噌漬け豆腐のオリーブオイル漬け(399円)、『ビストロ ピサンリ』スープドポワソン(499円)、『レストラン ママゴト』NICE!メンチカツ(1ケ399円)、『博多天神 とり祥』博多水炊き(1人前1499円・2人前~)、『バソキ屋』辛玉焼きそば(799円)、『博多だるま』豚骨ラーメン(799円)…といった具合に、博多の人気店の料理が店名とともにメニューブックに記されている。他にも数々の博多(一部宮崎)の人気店のメニューがラインナップされており、デザート(『かきの家』梅ケ枝餅バターぜんざい・499円等)や、ドリンク(『STAND BY ME』等を展開するブルースカイのイトシマレモネードやイトシマレモンスカッシュ・各399円)も含めると、その数は約30品にも及ぶ(ほとんどが1店につき1品)。東京にも博多料理の店は数多くあるが、このように博多の人気店の料理が一堂に会した例は他にない。というよりも、こんな凄いメニューを作ることができるとは、今まで誰も考えなかったのではないだろうか。
「博多金の蔵」は、「お刺身」「冷たいアテ」「温かいアテ」「絶品」「逸品」「鍋もん」「金のおでん」「漬物(15種)」「漬物巻き焼」「博多焼鳥」「〆もん」と多彩な料理を揃え、客単価の想定は2500~3000円。リーズナブルな総合居酒屋でありながら、数々の「博多の人気店の料理」を味わえるという大きなインパクトと価値をプラスした。革命的な総合居酒屋として大いに注目を集めそうだが、そもそもどのような経緯で出店に至ったのか、非常に興味深いところだ。そこで、「博多金の蔵」でタッグを組んだ、三光マ一ケティングフーズの代表・長澤成博氏と、プロデュースした森 智範氏のそれぞれのコメントを紹介しながら、同店がどんな狙いを持って誕生した店なのかをレポートしたい。
チェーン店の資源を生かしながら、外のアイデアを融合
現在、100店舗強の飲食店を展開する三光マ一ケティングフーズの主力業態が、約60店舗を要する「金の蔵」。低価格で大箱の居酒屋チェーンとして知られた存在だ。ただし、全盛期ほどの勢いは無くなっている。そうした中、2018年9月に同社社長に就任した長澤氏は、森氏とタッグを組んだ「博多金の蔵」の出店の経緯について以下にように話す。
「過去にいくら実績があっても、今はその延長線上には答えがない時代です。この5~6年、中から何かを生み出そうとしてやってきたものの、『もうそこには答えがないぞ』ということを認識しました。当社には店舗や場所、そして店長を始めとした人材という貴重な資源があります。長く飲食業をやってきたネットワークもある。そうした資源を活用しながら、外からのアイデアも融合することで、新しい価値を提案していこうという風に舵を切ってきたのです。そうした時に、森さんとの出会いもありました。森さんのお店にも行き、何度か会って話をする中で、互いの構想とやりたいことが合致しました。博多の人気店の料理がこれだけ揃ったのは、森さんの人脈と人間力があってのことです」(長澤氏)。
マルコポーロ由来の「金の蔵」に紐づけしたストーリー
では、プロデュースを依頼された森氏は、「博多金の蔵」をどのような発想で作ったのか。森氏は、博多の有名店「博多炉端 魚男」を経営するM&Coの代表で、数々の飲食店のプロデュースでも活躍しているヒットメーカー。その斬新な発想やアイデアが注目されてきたが、「人気店の料理」をこれだけ一度にラインナップしたのは今回が初めてだ。
「チェーン店と一緒にやらせてもらう時、僕がまず考えるのは、そのチェーン店の強みが何かということ。強みに紐づけした店を作らないと、浮ついた店になってしまいます。『博多金の蔵』のコンセプトも、『金の蔵』に紐づけしたストーリーになっています。『金の蔵』という店名は、マルコポーロが東方見聞録で日本を表現した言葉だと聞きました。そこで、マルコポーロが博多を旅して見つけた逸品を集めた『セレクトショップ酒場』というコンセプトで、これまでにない居酒屋を作ろうということになったのです。最近は居酒屋チェーンが不振だと言われますが、僕からすればチェーンはやっぱり凄い。組織力一つとっても凄いし、それぞれに強みを持っています。特に今回は、長澤社長の柔軟性や先見性に共感し、この人の役に立ちたいと強く思いました。僕が考える『金の蔵』は、良くも悪くも、こだわりがない。だったらそれをプラスに変えよう。こだわりがないから大胆なことがやれるじゃないか。そんな感じで思いっきりバットを振らせてもらいました」(森氏)
人気店の料理は、レシピ買い取りと納品の2パターン
博多の人気店の料理が一堂に会する、「セレクトショップ酒場」という画期的なメニューを実現した「博多金の蔵」。先の長澤氏の言葉にもあったように、森氏の博多での人脈があってこそ実現したが、各店の協力の仕方には主に2つのパターンがあるという。一つは、レシピの買い取り。もう一つは、それぞれの店から納品してもらう形だ。納品してもらう店には、森氏が自社で構築してきた、料理をキット化するノウハウを提供。協力店は、これを機会にキット化のノウハウを今後の外販に生かすこともできる。加えて東京での自店の知名度アップという点でも、ギブアンドテイクの関係になっている。
一方、「博多金の蔵」の現場については、料理のキット化などで調理負担は軽減されているものの、新メニューの数々を提供することから、全体の調理オペレーションはこれまでの「金の蔵」よりもハードルが高くなっているという。しかし、それも挑戦の一つと捉えている。「決して無理ではなく、挑戦すればクリアできる。スタッフの成長のために、コーチ役の森さんが、それくらいのちょうど良いハードルに設定してくれました」と長澤氏は話す。
裏テーマは「人の開発」。新しい取り組みの総本山に!
「コーチ役」の森氏も、今回のプロデュースの「裏テーマ」は「人の開発」だと話す。「業態開発も重要ですが、もっと大切のなのが『人の開発』。言ってしまえば、人さえ良ければ、どんな業態でも売れます。『博多金の蔵』は、調理スタッフだけでなく、ホールスタッフの成長にも重点を置きました。中でも、お客様とのコミュニケーションがスタッフの働く楽しさ、やりがいになるので、例えば、客席で仕上げるメニューを作り、ユニフォームのTシャツはプリントの文言を変えて10種類用意するなど、会話のきっかけになる仕掛けを色々と施しています」(森氏)。「博多金の蔵」の立ち上げに当たっては、社員数名を、人材育成に定評のある絶好調(東京都新宿区、代表取締役:吉田将紀氏)の研修にも参加させた。研修から戻ってきた社員は、まるで別人かと思うくらいのサービスマインドを身につけて戻ってきたという。「『博多金の蔵』は、当社の新しい取り組みの総本山のような存在。ここで人もしっかりと育てていきたい。これからも森さんと連携しながらさらに磨きをかけ、この業態をモデルに『金の蔵』の業態転換を進めていくことも考えています」と、長澤氏は今後の展望ついて語る。
また、「金の蔵」ではタッチパネルを使ってきたが、「博多金の蔵」ではさらに新しいシステムを導入。利用客に、QRコードでスマートフォンにメニューをインストールしてもらう。利用客のスマートフォンが従来のタッチパネル代わりになることで、タッチパネル導入の初期費用を削減しており、こうした取り組みからも経営改革の意欲的な姿勢がうかがえる。三光マ一ケティングフーズは、12 月 19 日には、赤坂のソウルミュージックバーの名店「鶴千」とコラボした新業態「Soul Dining Bar 歌舞伎町 鶴千」もオープン。新社長の長澤氏の元、新たな展開を見せている同社の今後の動向に要注目だ。
店舗データ
店名 | 博多金の蔵 |
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住所 | 東京都渋谷区恵比寿西1-13-2 サンキビル B1F |
アクセス | 恵比寿駅から徒歩3秒 |
電話 | 03-3780-5760 |
営業時間 | 17:00~24:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 90坪・117席 |
客単価 | 2500~3000円 |
運営会社 | 株式会社三光マーケティングフーズ |
オープン日 | 2019年12月9日 |
関連リンク | にのまえ屋 博多金の蔵(FB) |