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エー・ピーカンパニー執行役員が独立、経堂に「酒ワイン食堂 今日どう?」が開業。“大人のファミレス”をコンセプトにワインと日本酒を500円前後で提供し、ツウから初心者までを取り込む地域密着店を目指す

12月1日、経堂駅から徒歩3分の場所に、「酒ワイン食堂 今日どう?」が開業した。「塚田農場」などを展開するエー・ピーカンパニー(東京都港区、代表取締役:米山 久氏)で、執行役員を務めていた綱嶋恭介氏による独立店舗だ。“大人のファミレス”をコンセプトに、1杯500円前後で気軽に楽しめる日本酒とワイン、煮込み串をはじめとする酒場料理を揃え、客単価3500円で経堂の地元住民から愛される地域密着店を目指す。

黄色と白の暖簾が印象的な外観。店名を目にして足を止める人も
店の中央にU字のカウンター。元ラーメン店のカウンターを活かしながら、板を張り替え、曲線部分を造作。黒のタイル張りがモダンで可愛い
左から、「豚の角煮串」「牛ほほ肉の煮込み串」。客席前の鍋で煮込まれており、お通し代わりに注文するお客も多い
「今日どう?ポテトサラダ」(500円)。厚切りベーコンと温泉卵、ミックスビーンズがこだわり
左端からオーナーの綱嶋 恭介氏、料理長の竹内氏、スタッフの井上氏、酒ディプロマを有する中越氏。「今日どう?」(=経堂)のネーミングは、博多の「ロバータ・デ・ニーロ」(=炉端・デ・ニーロ)をリスペクトし、友人が提案したもの

(取材=福井 晶 )


子会社の社長就任を断り、独立へ

綱嶋氏は学生時代、飲食店でアルバイトとして働き、卒業後も飲食専門の派遣会社で様々な店に勤務。その中でエー・ピーカンパニーの店舗に派遣されたことをきっかけに、正社員として入社した。その当時2007年ごろは「塚田農場」が店舗数を伸ばし居酒屋マーケットを席巻していたが、綱嶋氏は主に不振店舗の立て直しを行い業績に貢献した。その功績を認められ、営業本部長と執行役員を経験、計12年勤め上げた。退職直前には、同社の「焼鳥つかだ」「なかもぐろ」などミドルアッパー業態を取りまとめる事業部を担当し、将来的にはその事業部を子会社化し、綱嶋氏がその社長に就任する予定だったという。ところが「子会社を任されるのは嬉しい半面、それならばいっそ自分で店を立ち上げてみたかった」と、悩んだ末に退職を決めた。

住宅街の経堂に合わせた単価設定と業態で、地域密着店を目指す

物件は、路面店で15坪ほどを希望。五反田や恵比寿などで探していたが、条件に合う物件には見つからなかった。経堂で開業を決めたのは、古くからの知人に紹介された物件がたまたま気に入ったから。人通りの多い商店街にある路面の好立地。前店舗が10年以上続いていたこともあり、通りすがりの近隣住民からの注目も高い場所だったという。

「酒ワイン食堂 今日どう?」は、これまで、客単価3500円の「塚田農場」に加え客単価5000円から7000円の「焼鳥つかだ」「なかもぐろ」まで、様々な業態の現場に立った経験から作られた業態だ。同店は“大人のファミレス”を謳い、日本酒とワインをリーズナブルに提供する。ワインは綱嶋氏自身がソムリエの資格を取得していたからで、日本酒は店のスタートメンバーの中越氏が酒ディプロマの資格を持っていたから。「ワインや日本酒は、客単価が上がれば来店頻度は下がるし、来る人も知識のある層に限られる。経堂は住宅街立地でわざわざ来るエリアではないので、地域の人が気軽に立ち寄れるファミレスのような店にしたかった。ワインや日本酒の通なお客様も満足できて、一方であまり詳しくない人でも楽しめる。そこを狙うと1杯500円程度で客単価3500円の業態にするのがベストだという結論に至りました」と綱嶋氏。

フードの方向性は、これまでエー・ピーカンパニーで焼鳥を多く経験したことから焼鳥業態を検討するも、物件オーナーの希望で焼鳥店がNGだったため断念。物件の立地ありきで再考した。「そもそも経堂駅周辺には焼鳥店が多く、『魚真』など魚の美味しい店もあるので海鮮系も避けた。“この地域になく、求められそうなもの”を絞り込んでいった結果、煮込み串をメインに、ワインと日本酒に合う和洋ミックスの酒場メニューに落ち着きました」と同氏。

店舗は元ラーメン店の居抜きで、奥の厨房部分の一部を作り替え客席部分を拡張した。カウンターは曲線の部分のみ造作し、煮込み鍋を設置。既存の内装を活かしながら小洒落た雰囲気に仕上げている。メニュー短冊や黄色いのれんで抜け感を演出し、気軽に入りやすい雰囲気を作った。店内は15坪30席を配置し、外には立ち飲みカウンターも設えた。

「失敗してもガッカリしない」、ドリンクは1杯500円前後の価格設定

ドリンクメニューのワインは、赤白を4種類ずつ、泡を1種類用意し、価格帯はグラスで500円から670円。定番のフランス産やイタリア産よりも、ニューワールド系を中心に新鮮味のある銘柄を多く選定する。日本酒は常時10種類ほどを揃え、480円から530円で提供。周辺の飲食店とのラインナップが被らぬよう、複数の仕入先からピックアップする。「価格は高くても600円代まで。それ以上だと、せっかくチャレンジしても好みに合わなかったときのガッカリ感が大きい。500円程度であれば気軽にチャレンジできる」(綱嶋氏)。

ワインと日本酒をボトルで注文する場合は、店内の冷蔵庫から。お客自身が手にとって選べる。冷蔵庫内の銘柄を味わいごとに並べ、初心者でも酒選びを楽しめるのがポイントだ。また、ビールはキリンビールの簡易クラフトビールサーバー「タップマルシェ」を導入し、お客がセルフで注ぐシステムで1杯650円。まさに「ファミレス」というコンセプトにマッチした“大人のドリンクバー”で、お客は参加型で楽しく、店側はオペレーションが削減できる一石二鳥のシステムだ。他にも「ど真ん中レモンサワー」「ハイボール」(各390円)など、居酒屋の定番ドリンクを用意する。

名物が一通り楽しめる8品2000円の気軽なコースも用意

フードは日本酒とワインに合うメニューをラインナップ。名物はカウンターの鍋で煮込む、数量限定の「牛ほほ肉の煮込み串」(380円)と「豚の角煮串」(290円)。注文からすぐ提供できるため、お通しがわりに人気だ。その他、「今日どう?ポテトサラダ」(500円)や「枝豆ペペロン」(480円)などの酒のお供から、「つまみアジフライ」(380円)、「あさりのワイン蒸し」(780円)などの魚料理、「よだれ鶏」(680円)、「ペンネ辛ビアータ」(750円)など一品料理も揃える。

加えて、特徴的なのが8品2000円のコース料理を用意していること。名物を1串ずつ、前菜やサラダ、揚げものなど、日本酒とワインどちらも合わせられる構成で、日常使いで気軽に注文できる。注文率は3割ほどで、1~2人の少人数客にも人気だ。「コース料理をつまみにドリンクを4杯飲んでも4000円ほど。“日常使いの店”と印象付けたいので、会計時に高くついたと思わないギリギリの設定にしています」と同氏。

週4日営業の実現や地域創生など、飲食業界全体を見据えたビジョンを描く

集客状況は順調で、家族連れから1人客まで幅広い層が訪れる。平均客単価は想定通り3500円ほど。早くもリピーターを獲得し、日本酒目当てに来店したお客が次はワインにチャレンジするなど、店が理想としていた相乗効果も生まれている。「よく、近所にこういうお店がなかったから嬉しいというお声をいただきます。感度の高いお客様が多く、経堂への出店は結果的に大成功だった」と同氏。

同氏は「食を楽しんでもらうきっかけを作るのがミッション」と話し、自身がソムリエの資格を取得した経験から「お客様が感じる日本酒やワインのハードルをもっと低くしていきたい」とも語る。2店舗目は、同じく“ワインと日本酒”を主軸に展開する考えで、焼鳥、寿司、天ぷら、などの業態を検討している。持ち前の接客力を生かし、カウンターの対面接客で売上アップに繋げる戦略を取りたいと、ラーメン店などカウンターの居抜きで展開していく構想もあるという。

また、将来的には目標月商をクリアしながら、スタッフの勤務を週4にする新しい労働環境づくりや、千葉県などの地域と手を組んだ6次産業化など、飲食業界全体を見据えたビジョンを描く。経堂からはじまった同氏の事業に期待が高まる。

店舗データ

店名 酒ワイン食堂 今日どう?
住所 東京都世田谷区宮坂2-19-1

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アクセス 経堂駅から徒歩3分
電話 03-6413-6396
営業時間 【月~金】 17:00~24:00【土】15:00~24:00 【日】15:00~23:00
定休日 不定休
坪数客数 15坪30席
客単価 3500円
オープン日 2019年12月1日
関連リンク 酒ワイン食堂 今日どう?(FB)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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