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イタリアンイノベーションクッチーナ出身者が祖師ヶ谷大蔵に「にほん酒処 翁」を開業。得意のイタリアンに、あえてワインでなく店主自身が好きな日本酒のペアリングに挑む

7月8日、祖師ヶ谷大蔵に「にほん酒処 翁」がオープンした。店主の井口幸樹氏は、イタリアンイノベーションクッチーナ(東京都渋谷区、代表取締役:四家公明氏)が運営する「トスカーナ」で修行を積み、経堂店と代々木店で店長を務めた人物だ。「トスカーナ」でイタリアンの修行を積みながらも、「もともと日本酒が好きだった」ことから、ワインではなくあえて日本酒で勝負を挑む。

店舗があるのは、昭和30年代から続く「まるよし横丁」。昭和の匂いが色濃く残り、隠れ家的なムードが漂うエリアだ
6坪の店内はカウンター8席、テーブル席の合計12席というこぢんまりとした空間。小料理店だった居抜き物件をリニューアル。カウンターとカウンター内の棚に手を加えたという
「タイのアクアパッツァ」(時価)は、「トスカーナ」時代から幸樹氏が得意としてきた逸品。これに合わせるのは人気が高まっている長野の「大信州」
「薫るポテトサラダ」(500円、写真左)には、華やかな香りが特長の福島の「寫樂」がオススメ。また個性が強い 「カボチャのニョッキのゴルゴンゾーラソース」(680円、写真右)には、山廃や古酒などボディが強い酒との相性がいいのだという
店主の井口幸樹氏(右)と弟の拓人氏。イタリアンで修行を積んだ幸樹氏が、ワインではなく日本酒で勝負に出た

(取材=松野孝司)


栄養士の資格を持つ実母の影響を受け、料理の世界ヘ踏み出す

ウルトラマンの生みの親である「円谷プロダクション」があったことから祖師ヶ谷大蔵につくられたウルトラマン商店街。駅構内や商店街にはウルトラマンやそれをモチーフにデザインされた街頭照明が立ち並び、街全体がウルトラマンで盛り上がろうという意識がうかがえる。そんな祖師ヶ谷大蔵駅近く、ウルトラマン商店街から一本路地を入った先にある、まるよし横丁(祖師谷大蔵丸芳飲食街)の一角に7月8日オープンしたのが「にほん酒処 翁」だ。

カウンター8席テーブル1席の合計12席のこぢんまりとした店内には、店主の井口幸樹氏と弟の拓人氏の兄弟ならではの息の合ったコンビの爽やかな声が響く。「独立することを決めて、弟に『一緒にやってみないか』と相談したところ二つ返事で引き受けてくれました」と兄の幸樹氏が言えば、弟の拓人氏も「ちょうど進路に悩んでいたところだったので、兄の誘いは渡りに船でした」と当時を振り返る。

幸樹氏は栄養士の資格を持っていた母の影響を受け、高校卒業後、北海道の短大に進学。そこで栄養士と調理師の資格を取得。卒業後は都内の宿泊施設の調理部門に配属されたものの、料理に対する方向性が合わずに退社。その後に就職したのが「トスカーナ」だった。「味もさることながら、料理に取り組む姿勢に共感を覚えました」と幸樹氏は、その入社の経緯を語った。

2年間の物件探しの結果、探し当てた『隠れ家的』な居抜き物件

そんな幸樹氏にとって大きな転機になったのは、先輩に連れられて訪れた日本酒で有名な居酒屋だった。「そこで日本酒の美味しさを知り、それから家でもイタリア料理を作っても、日本酒に合わせるようになりました」

その後、経堂店と代々木店で店長を務め、料理だけでなく売上管理や社員教育まで任されるようになり、「いつかは独立して自分の店を持ちたい」という夢が徐々にふくらんでいったという。「スタッフと協力しあいながら店づくりを進めていくと、売上の数字が上昇しました。手をかけた分だけ、スタッフも店舗も成長する。そこに面白さを感じました」と幸樹氏は独立を決意した経緯を語った。

独立資金の目途が立ち、退社する1年前の2016年頃から物件探しをスタート。当初は小田急線沿線をはじめ、土地勘があった高円寺や阿佐ヶ谷、浦和などエリアを特定せずに色々な物件を探したという。「条件としては箱は10坪以下。これは弟と二人で回すことを前提にしていたので、カウンター中心で一人ひとりのお客様に目が届く限界がそれくらいだと思ったからです。また、地元密着型の店舗にしたかったので、商店街が活発に活動しているという点にこだわりました」

その条件にマッチしたのが、まるよし横丁(祖師谷大蔵丸芳飲食街)。ウルトラマン商店街から一歩路地を入った一角にある、昭和30年代から続くアーケードビルだ。現在も定食屋、居酒屋、中華料理店など20軒以上の飲食店が立ち並ぶ。古びた外観と暗めの照明も手伝って、どこか怪し気な雰囲気さえ漂う。探し当てたのは、同所で17年営業していた小料理店の居抜き物件だった。「フリーのお客様が気軽に足を運ぶ場所ではありませんが、地元の方が隠れ家的に使う店を目指すにはピッタリだと思いました」と幸樹氏はその理由を語った。

ただし、改装する際には、のれんを短めにして、ガラス戸から中の様子が見られるように工夫するとともに、看板を見て立ち止まっている客に対しては、積極的に声がけをするようにしているという。そうした地道な努力のかいもあり、オープンして1カ月で6回足を運んでくれたお客もいるというから、確実にリピーターを獲得しているようだ。

日本酒との相性を考え、隠し味に味噌やしょう油などの和の調味料を加える

料理はイタリアンで修行を積んだこともあり、「カキとキノコのアヒージョ」(800円)、「カツオのカルパッチョ」(800円)、「タイのアクアパッツァ」(時価)とおなじみのイタリアン料理が並ぶ。「オープン当初は、もっと居酒屋よりのメニューしていたんですが、お客様から『中途半端はやめて、得意のイタリアンを生かしたほうがいい』とアドバイスを受けて、イタリアンを意識したメニューを提供するようになりました」しかし、単にイタリアンを提供するのではなく、日本酒に合うように、料理にしょうゆ、味噌、日本酒、みりんなど和の調味料を加えるようにしているという。このあたりに「日本酒のおいしさをひとりでも多くの方に知ってもらいたい」という幸樹氏のこだわりがうかがえる。

メインターゲットとしては地元の30~50代のサラリーマンを想定。客単価は一人3000円程度。アルコール類と料理の割合は半々ぐらいだという。日本酒は銘柄にかかわらず、一杯500円の均一価格に設定している。「日本酒になじみが薄いお客様にも飲んでいただきたいので、わかりやすい値段設定にしました。特別な飲み比べセットは設定していませんが、2種類の日本酒をグラス半分ずつに注ぐなど、お客様の希望に応じて対応しています」

料理については「普段使いに利用していただきたいので、できるだけ旬の食材を使い、季節感を演出しながらも一品一品の値段は抑えるように工夫しています」と語る。「薫るポテトサラダ」(500円)、「自家製ピクルス」(300円)、「ドライトマトとオリーブのマリネ(300円)というワンコイン以下のメニューも充実。それでいてポテトサラダには自家製の燻製玉子を添えるなど独自の工夫を施している。このあたりにも幸樹氏の料理人としてのプライドがうかがえる。「開店前にイタリアン以外の世界を体験するために、フレンチと居酒屋でバイトしたのがいい経験になりました」と幸樹氏は語る。

将来を見据えて、仕入れルートの開発と蔵元とのイベント開催を模索中

現在、肉類や魚介類などの食材は前職の仕入れルートを活用しているという。「気心が知れた業者なので非常に助かっています。ただそれに甘えることなく、これからは漁師や生産者と直接取引できるような新しいルートも必要になるでしょうし、蔵元や杜氏を招いてイベントなども開催していきたいと思っています」と力強く語ってくれた。最後に将来の夢を尋ねたところ、「5年を目途に開業資金の借入を返済したら、2店舗目の出店をしたいという気持ちはあります。ただし、現在お付き合いしている方の実家が栃木で飲食店を経営をしているので、そちらの店舗を経営することも視野に入っています」という。

店舗データ

店名 にほん酒処 翁(にほんしゅどころ おきな)
住所 東京都世田谷区祖師谷1-8-17 まるよし横丁 102

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アクセス 小田急線祖師ヶ谷大蔵駅徒歩3分
電話 050-1037-7452
営業時間 16:00~24:00(L.O.23:00)
定休日 月曜、毎月最終週の日曜
坪数客数 6坪・12席
客単価 3000円
オープン日 2019年7月8日
関連リンク にほん酒処 翁(FB)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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