日本橋蛎殻町を路地裏に入った場所にあるビルの2階に、12月3日「日本酒専門店 ぽんしゅ家」がオープンした。日本酒をこよなく愛する店主・鈴木登子氏はOLとして働いていた10年前から構想を練り、3年前に退職。同じく人形町の老舗居酒屋「笹新」や、日本酒の専門店などで修業を積み開店に至った。全国津々浦々の酒蔵から仕入れる日本酒は200種以上。その中から旬の酒を中心に厳選した30種ほどが、品書きに名を連ねる。メインターゲットは女性客で、「今まで苦手だった人でも、本当においしい日本酒を飲んで好きになってほしい」と、鈴木氏。他にも、日本酒を使ったカクテルや、甘酒のスムージーなど、飲みやすいドリンクも開発した。
一口飲んで惚れ込んだ日本酒の世界。しかし、世間には苦手な人が多いことに気づく
山形出身の鈴木氏が初めて口にした酒は、地元の銘酒「十四代」。すぐさま日本酒の深い味わいに心奪われ、気に入った酒と出合った時には酒蔵へ足を運ぶほど虜になる。しかし、酒の席で耳にするのは「日本酒は飲みにくい」という声だった。
「現代の日本酒は、甘口が多かったり、ワインに似せた味にしたりと、造り手が工夫して飲みやすいものが増えています。けれど、世間ではいまだに端麗辛口で臭いがキツいという印象が強く残ってしまっているんです」と、鈴木氏は語る。実際に造り手の姿を目の当たりにし、話を聞いてきた鈴木氏は、自分が大好きな日本酒の素晴らしさと酒造の想いを多くの人に伝えるため、会社勤めの仕事のかたわら唎酒師の資格を取得。さらに「一番おいしい状態でお酒を出すためには、より深い知識が必要だ」と、「インフィニット・酒スクール」にも通い、日本酒の知識を醸造理論から学び、見聞を広めた。
希少な日本酒やオリジナルのカクテル、発酵食材のつまみなど、すべてにこだわりを詰めたメニュー
日本酒のメニューは、「寿」「松」「竹」「梅」でそれぞれのラインナップがある。特に、他の店ではなかなか目にかかれないような珍しい酒が並ぶ「寿」には30ml(500円)のお試しサイズも。「寿」(120mlは2000円、60mlは1000円)では「十四代別撰播州山田錦(山形)」や「洗心 純米大吟醸(新潟)」。「松」(120mlは1200円、60mlは600円)には「仙禽ナチュールドゥ(栃木)」や「風の森 純米大吟醸(奈良)」。「竹」(120mlは800円、60mlは400円)の「太平海 1314」や、「梅」(120mlは600円、60mlは300円)の「七田(佐賀)」など、初心者から呑兵衛まで唸らせる日本酒が充実している。また、鈴木氏が「これは絶対店で出したかった」と語る日本酒カクテル「ぽんぐりあ」(650円)も外せない。九頭龍の本醸造を辛口ジンジャエールとシロップで割ってミントを添え、さっぱりとした味わい。酒が苦手な人にも楽しんでもらえるように開発したソフトドリンク「八海山甘酒スムージー(白/緑/赤)」(680円)とともに、女性からの人気を集めている。
また、料理は日本酒とのペアリングを考え、発酵食材を中心とした構成だ。黒龍の酒粕だけを食べて育った「黒龍吟醸豚」を、へしこの要領で18カ月熟成させた「黒龍吟醸豚のへしこ生ハムと細ねぎの巻物」(880円)や、「霜降り牛サーロインの生ハム~熟成バルサミコレモン~」(1580円)、「燻製牡蠣」(3個680円、5個980円)など、鈴木氏のこだわりが詰まった品々が客の心を掴む。
日本酒のおいしさと酒造の想いを客に伝え、業界を盛り上げることに熱意を注ぐ
今後も店で様々な酒を出していき、日本酒ファンを増やしていきたいという鈴木氏。「日本酒はブームが来ていると言われていますが、蔵の数は減っていく一方で、本当の意味で盛り上がってるとは言えません。うちの店で日本酒のおいしさを知っていただいて、全国の酒造さんがもっと元気になるお手伝いをしたいですね」と、語る。
鈴木氏が言うように、造り方や味わいなど、日本酒を取り巻く環境は変化をしているが、それが飲み手に浸透するには、まだ余地があるように感じる。逆を言えば伸びしろや可能性も秘めた日本酒業界、その魅力の伝道師たる店になるか、今後の展開に期待がかかる。
店舗データ
店名 | 日本酒専門店 ぽんしゅ家 |
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住所 | 東京都中央区日本橋蛎殻町1-11-9 マガザン人形町2F |
アクセス | 東京メトロ日比谷線・都営浅草線人形町駅から徒歩4分 東京メトロ日比谷線・東西線茅場町駅から徒歩8分 東京メトロ東西線日本橋駅から徒歩7分 東京メトロ半蔵門線水天宮駅から徒歩5分 |
電話 | 03-6661-2666 |
営業時間 | 17:00~22:30 L.O. |
定休日 | 日・祝休 |
坪数客数 | 10.64坪 14席 |
客単価 | 2000~3000円 |
オープン日 | 2018年12月3日 |
関連リンク | 人形町 ぽんしゅ家(Facebook) |
関連リンク | ponshuya(Instagram) |