JRと京急が乗り入れる川崎駅。古くは東海道の宿場町であり、近年は工業の街として発展してきたが最近さらに再開発が進みニューファミリー層が転入し、人口増が続いている。外食マーケットとしてのキャパシティーは申し分ないが、駅周辺で目立つのはチェーン店ばかり。そんな没個性的なイメージに一石を投じるべく、地元を愛する若き飲食人が、ユニークな飲食店を開店。10月17日にオープンした「大衆酒場 おきがる煮」は、オーナー店長の伊原保氏による新規独立店舗。窓は2面とも通りに面して大きく取り、明るく開放的な雰囲気を演出している。看板メニューはギアラの煮込みで、お客がセルフでお酒を作る“どぶ漬け”のドリンクと相まって、意表をついている。
三軒茶屋の“三角地帯”で得た財産
オーナーの伊原氏は、生まれも育ちも地元・川崎。大学卒業後、ダイヤモンドダイニング勤務を経て、川崎などで馬肉料理の人気店を展開する型無で経験を積んだ。「独立を志したのは、型無の矢野 潤一郎社長に感銘を受けた部分が大きいです。一番学んだのは、人を重視すること。味はもちろんのこと、楽しさの重要性を思い知らされました。楽しかったからまた行こう! というお店を作りたいです」と、30歳目前に、念願の独立を果たした。型無時代に三軒茶屋の店舗で長く店長を務めたが、「三軒茶屋には、楽コーポレーションの卒業生さんが多く、人脈が広がり多くの刺激を受けました」と、ここで過ごした濃密な時間が大きな財産となっているようだ。
川崎の新たなキラーコンテンツ
同店のコンセプトは、ズバリ「大衆酒場」。「ギアラ煮込み」(580円)をメインにしたのは、自分がホルモンのギアラ(牛の第4胃)が好きだったからと潔い。おでんの具材としてギアラを食べたときに「これはいける!」と確信したという。煮込みと言えば味噌が一般的だが、ギアラの魅力を際立たせるため、焼肉のタレをベースにコチュジャンをきかせるなどして味に深みを出している。そのほかの一品料理は、「ガリポテサラダ」(420円)や「ハムカツ」(380円)など。大衆酒場らしいアイテムと価格、洒落っ気を意識している。「最初は調理が簡易なものを中心にグランドメニューを構成していますが、以後は日替わりのおすすめメニューも増やしていきます。得意の刺身もやりたいですね」と意気込みを語る。
ドリンクは、オペレーションの平易化をしつつ、エンタメ性もある“どぶ漬け”がメイン。コの字型のカウンターを囲むように氷水を配置し、さまざまな瓶を冷やしている。お客は、テーブル上の「宝」の焼酎(なか250円、360mlボトル980円)を、氷水の中から取り出した「ホッピー」(240円)や「バイス」、「ガラナ」、「パクチーレモン」などの割り材(各200円)で割る。そのほか、東京の立ち飲み・千ベロ界隈では定番の「ポン酢サワー」450円も、同店で川崎初上陸となる。
マンパワーで街にさらなる活気を
現在は、伊原氏自ら調理を担当し、計3人で店を切り盛りする。オープンに向けて一番骨を折ったのは、やはり人材の確保だった。「とても苦戦しましたが、なんとか横のつながりがあってよい人材に巡り会えました」と、やはりここでも「人の重視性」を痛感したそうだ。客層としては男性客が目立つが、「脱チェーン店」を考えはじめる同年代のアラサー男女を呼び込みたい。その根底には、ありふれた居酒屋ではない、個人店ならではの個性を楽しんでほしい、川崎を魅力ある街にしていきたいという思いがある。最近の川崎駅周辺は、そんな思いを同じくする「魚炉魚炉」などの繁盛店があるが、アラサー同年代の仲間同士だという。そんな仲間もいて、地元川崎が好きでたまらない! という熱い思いと若い力が新たな時代を切り開くのだろう。
店舗データ
店名 | 大衆酒場 おきがる煮 |
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住所 | 川崎市川崎区小川町13-1 |
アクセス | JR・京急線川崎駅より徒歩5分 |
電話 | 044-276-8288 |
営業時間 | 17:00~24:00 |
定休日 | なし |
坪数客数 | 10.5坪 26席 |
客単価 | 3000円 |
オープン日 | 2018年10月17日 |