渋谷駅南口に誕生した大型複合ビル「渋谷ストリーム」。1~3階はすべて飲食店で、日本初上陸1店舗、新業態13店舗が出店するなど、飲食シーンに一石を投じた。老舗パン店「木村屋總本店」創業家に生まれ、アメリカやフランスでパンの修業をしたのち「ブーランジェリーエリックカイザージャポン」「メゾンカイザー」を設立した木村周一郎氏は、新業態「MEAT TAVERN 煮込みや四兵衛」を出店。メインコンテンツはジビエ料理で、木村氏自らが猟に出て獲物を仕留めてくるという力の入り様。実力派の料理人を揃え、順調な門出を迎えた。
木村氏についてはパンのイメージが強いが、同店ではパンの存在感を最小限に留めている。「パンには“昼間”のにおいがつきすぎて、セクシーさがないんです。それで、私が日本全国、パンの講習会で行った先で見つけたおいしいものをかき集めようと考えたんです。すると、“野獣”の比率が高いことに気づき、それを煮込みで提供することを思いつきました」と語る。木村氏がジビエをあえて“野獣”と呼ぶのは、「シカやイノシシなどは昔から日本人が食べてきたもの。ジビエなんて気取った呼び方は必要ない」という考えが根底にあるからだ。店づくりにおいてその考えは徹底されており、ビストロではなく煮込みが似合う“酒場”であること、ボトルワインではなく銘々が好みの酒を“1杯ずつ”注文できることを想定している。
同店の料理は、店名通りに煮込みが主役で、居酒屋や大衆酒場でおなじみの牛・豚・鶏を使った煮込みと、ジビエを使った煮込みの2グループがある。前者は、「牛スジのみぞれ煮込み」(680円)、「泡盛で煮込んだ豚バラ角煮『ビバーチ』」(880円)など、親しみやすいラインナップ。後者は、「対馬鹿の黒ビール煮込み」(1480円)、「イノシシの赤ワイン煮」(1380円)など、骨太・本気のジビエ料理だ。これ以外に、1品各380円とリーズナブルなおばんざい(「ラタトゥイユ」、「小松菜のお浸し」など)も用意し、ジビエ目当てでない人の“ちょい飲み”ニーズにも対応している。
お酒は、「ジビエにはワイン」のセオリーを崩し、カクテルからサワー、日本酒、泡盛まで幅広く、ただし銘柄は厳選して取り揃えている。例えば泡盛は、スタンダードな「久米島」(600円)を押さえつつ「美ら蛍」(700円)という珍しい銘柄も揃えるなど、ひとクセあるラインナップだ。そのほかに、「あずき茶ハイ」(500円)、「ポップコーンハイボール」(550円)など、遊び心のあるドリンクも興味深い。もちろんワインリストもあるが、やはり“1杯売り”の商品が人気の傾向。これも木村氏の狙い通りで、店が多様なニーズをきちんと受け止めていることの証左であろう。
「飲食店って夢の国なんですよ。ディズニーランドと一緒なんです」というのが木村氏の信条。「楽しく飲んで食べて、お会計のときに現実に引き戻されたとしても『おいしかったし、こんなものだよね!』という印象を持ってもらえれば、また来ていただけるはず」とのことだ。スタッフについても、長く働いてもらえるよう気配りを忘れない。同店には有名レストランで腕を磨いた料理人が多く集まっており、経営者としての木村氏の人望をうかがわせる。女性料理人も多く、目をキラキラ輝かせながら立ち働く姿が眩しい。食材よし、人材よしの同店。今後の展望は明るい。
店舗データ
店名 | MEAT TAVERN 煮込みや四兵衛(ミートタバーン にこみやしべえ) |
---|---|
住所 | 東京都渋谷区渋谷3-21-3 SHIBUYA STREAM 2F |
アクセス | JR線ほか渋谷駅16b出口直結 |
電話 | 03-6450-6017 |
営業時間 | ランチ11:00~14:30、ディナー17:00~23:00(フードLO.22:00、ドリンクL.O.LO.22:30) |
定休日 | なし |
坪数客数 | 34坪 50席 |
客単価 | 3800~4500円 |
運営会社 | 有限会社シュウフードプランニング |
オープン日 | 2018年9月13日 |