三軒茶屋駅から徒歩1分ほどの裏路地に、「江戸前熟成 魚割烹 雫月(しづき)」が開業した。江戸前の熟成魚と熟成酒のマリアージュを楽しませる大人の隠れ家的割烹だ。運営は、現在31歳の狩野高光氏が率いる和音人(東京都世田谷区)。20代後半~30代前半の若い感性で従来の飲食業界とは店づくりを行う経営者を指す「第五世代」。狩野氏は、その「第五世代」として活躍する経営者の一人として知られる人物だ。
2015年6月、狩野氏は28歳のとき、三軒茶屋に「和音人 月山」を開業し創業。それを皮切りに、わずか半年後の2015年12月には「GYOZA SHACK」をオープンさせ、さらに2016年12月に「華舞㐂屋 ろんど」、2017年10月に「オステリア割烹 りんどう」と出店を続け、いずれも繁盛店となっている。これらはすべて三軒茶屋エリア。そして同じく三軒茶屋に5店舗目として開業したのが同店だ。「当社では、“路地裏の一軒家”での出店にこだわっており、この物件はまさに私の理想に合致。ずっといいなと思っていた場所でしたが、昨年12月に契約できる運びとなりました」と狩野氏は話す。
同社はすべての店舗で異なる業態を運営するが、業態開発は、スタッフの実現したい夢ありきで行うという。「『こんな店をやりたい』という思いを持ったスタッフの夢を叶えるかたちで出店を行います」(狩野氏)と“スタッフ主体”の店づくりを掲げる同社。今回、「雫月」で主役となるのは、魚河岸から料理人に転身し、和音人に入社した渡部佑喜氏だ。
魚河岸経験で培った、魚に対する確かな目利きを持つ渡部氏。店長として店全体のディレクションを担った。同店料理のウリは、神経絞めされた新鮮な魚を、熟成、昆布〆、へしこ、灰干しなど、江戸前の伝統的手法で熟成させた熟成魚。「熟成刺盛り食べ比べ」(3種1080円~/1人前)は、刺身・昆布〆・熟成のそれぞれ異なる仕立ての魚の味わいの違いが楽しめる品で、熟成魚をウリとする同店の真骨頂だ。鯖の糠漬け、へしこにコートジボワールのスパイス「マニゲット」を合わせた「焼きへしこ」(1280円)のように、スパイスに精通した狩野氏が選りすぐったスパイスを合わせた料理も多数。焼物から煮物、揚げ物、椀物、炊き込みご飯など、約40品をそろえる。
ドリンクは日本酒をメインに据える。熟成魚というテーマに合わせて、酒についても「熟成」をキーワードとした。熟成酒、古酒、貴醸酒、樽熟の酒などがそろい、グラスは500円~。熟成魚と熟成酒をスパイスで繋ぐマリアージュにこだわる。同社が得意とするワインも健在。「『雫月』では、魚と好相性で醤油やみりんといった和の調味料とも合うマスカットベリーAと、魚の臭みを引き出してしまう鉄分が非常に少ない甲州という、2つの日本を代表するブドウ品種のワインに限定してそろえました」と狩野氏。グラスは680円~、ボトル4200円~で用意する。
今後も複数のプロデュース業を抱えるほか、10月には三軒茶屋で山形県河北町のアンテナショップに併設した飲食店の出店を控える狩野氏。同社ではかねてより農業にも取り組んでおり、現在、社員の一人が山形県に移住し、農業に従事しているという。将来的には自家栽培したブドウでワインの醸造事業も検討中で、「地方に産業を作り、町の活性化に貢献したい」と狩野氏は語る。
飲食店の展開についても、今後も変わらず三軒茶屋でドミナント展開していく意向だ。「単一業態を作って横展開するのではなく、店舗ごとに主役となるスタッフを選出し、そのスタッフが個性を発揮しながらそれぞれ異なる魅力の業態を作りたい」と狩野氏。また、「第五世代」として飲食業界を変えていきたいという思いも強い。「当店の店づくりを任せている店長の渡部も、まだ29歳。頑張り次第では、この年でも自らの店が持てるんだということを示し、まだまだ飲食業界は希望の持てる世界だということを世の中に知らしめていきたいですね。それが『第五世代』としての自分の使命だと思っています」と意気込む狩野氏。業界に一石を投じる存在として、今後も目が離せない。
店舗データ
店名 | 江戸前熟成 魚割烹 雫月 |
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住所 | 東京都世田谷区三軒茶屋1-40-4 |
アクセス | 三軒茶屋駅から徒歩1分 |
電話 | 03-6805-4138 |
営業時間 | 17:00~24:00 |
定休日 | 日曜 |
坪数客数 | 17.5坪22席 |
客単価 | 5000~6000円 |
運営会社 | 株式会社和音人 |
オープン日 | 2018年7月24日 |
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