大井町を形作る、象徴的な横丁群。その一つ、駅から東へと続く「東小路」は、老舗中華そば「永楽」や昭和34年創業の「いさ美寿司」など、シンボリックな店と濃度の高い常連客が集まる場所だ。2016年10月31日、その東小路を抜けたところにストーブスマーケット(東京都中央区、代表取締役 戸塚庸平氏)の新店「豚のいろ葉」がオープンした。店舗デザインは、1号店の「豚バルBYO」から付き合いのあるスパイスワークス(東京都台東区)代表の下遠野亘氏が手がける。
6年前に「バル肉寿司」で大井町に初進出して以来、「かき殻荘」「牛タンいろ葉」、そして今回の「豚のいろ葉」と短期間で4店舗の出店を果たした同社。そのドミナント戦略の背景には、マーケット面と人材育成面での狙いがある、と戸塚氏は説明する。
「僕らは、街に必要とされる業態を見極めて勝負してきました。神田の『豚バルBYO』も蒲田の『sasaya』も、豚×ワインという業態や魚介ビストロが当時その街になかったんです。大井町の場合、独特な雰囲気に需要があると思います。ところが、昔から続く横丁には何十年も通っている年配のお客さんが多く、若い人が入りたくても入れない。そこで、敷居を下げた店づくりを心がけています。今のところ横丁のお客さんと客層は被っていないので、まだまだマーケットがあると考えています」。メインターゲットは“リアル横丁”に憧れる若者層。元からある柱や梁を生かした気取らない内装、そして横丁感の演出には密着感が欠かせないと考え、隣のお客と肩が触れ合うくらいの席感覚を意識した。
では、人材育成面ではどうか。「複数業態を展開する理由には、スタッフたちに力をつけてほしいから。同じ業態だと、いざ店舗を移動しても業務内容に変化がなく正直飽きてしまうと思います。一つマスターしたら、卒業して次の店舗で成長してもらいたい気持ちです」。
価格設定のモットーは、値段を3桁に抑えること。いずれも299円から799円に収め、既存店「牛タンいろ葉」の人気メニューを取り入れつつ、松坂豚など国産豚に特化した新作も仲間入りした。また「これだけ大衆酒場があって、もつ煮なんてどこでも食べられる。同じものを出していては意味がない」と、焼き台での提供で臨場感を味わえる骨付きカルビや、角煮を豚骨で煮た濃厚なつまみ・白煮豚など、捻りのあるメニュー、さらに1合・2合ではなく50ml290円~と独自の日本酒の価格設定でも古参との差別化を図る。
「街を変える」を出店のテーマとしてきたストーブスマーケット。今後の展望について「大きく言えば、新しいマーケットで街を活性化すること。100店舗展開なんていう目標は持たず、物件があれば進め、そうでなければ既存店の売上を伸ばす、こうして着実に1店舗ずつ進めていくだけです。先を見過ぎて目先がおかしくなってはいけない」と戸塚氏は話す。昭和前半から続く大井町の大衆文化が次の世代へと繋ぐ若き経営者。街のマーケットを把握し、飲み手への門戸を広げる店作りに取り組んできた氏の次なる業態とは。
店舗データ
店名 | 豚のいろ葉 |
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住所 | 東京都品川区東大井5-4-14 |
アクセス | JR・私鉄 大井町駅より徒歩3分 |
電話 | 03-3474-8822 |
営業時間 | 月~金 16:00~24:00(フード23:00LO、ドリンク23:30LO) 土日祝 16:00~23:00(フード22:00LO、ドリンク22:30LO) |
定休日 | なし |
坪数客数 | 12坪・40席 |
客単価 | 3000円 |
運営会社 | 株式会社ストーブスマーケット |
関連リンク | 豚のいろ葉(FB) |
関連リンク | 株式会社ストーブスマーケット(HP) |