渋谷と新宿のちょうど中間に位置する代々木上原は、閑静な住宅街でもあり、近年、良店が増えている注目のエリアでもある。そんな代々木上原で5店舗ドミナント展開する気鋭のフレンチシェフがいる。シェルシュ(東京都渋谷区)代表の丸山智博氏である。2010年にオープンさせたビストロ「メゾンサンカントサンク」をはじめとして、「グリ」、「ランタン」、「ナインストーリーズ」、「バーアヴァン メゾンサンカントサンク」とフレンチを軸に次々と人気店を創り上げてきた。なかでも2014年3月6日にオープンした「ランタン」は、1ヶ月に2000人が訪れる超人気店だ。
同店のコンセプトは“赤提灯居酒屋”。自身もパリによく訪れるという丸山氏によると「ビストロは、日本でいうと大衆酒場のようなもの」だという。これまでフレンチレストランで評価を得ていた同氏が、大衆酒場に目を向けたきっかけは、パリの3つ星レストラン「アストランス」のシェフ、パスカル・バルボ氏の姿勢だった。「世界でも随一のシェフである彼が、“和”をすごくリスペクトしてくれていたんです。それがすごくうれしいと同時に、日本の文化や食を深く知らない自分が恥ずかしいと思ったんです」と振り返る。以来、日本の食文化に立ち戻るようになった。その結果、生まれたのが「ランタン」だった。これまで磨いてきたフレンチの感覚に日本の大衆酒場の要素を取り入れた同店。ワインではなくビールやハイボール、シャルキュトリではなく、ポテサラや唐揚げが定番メニューだ。
丸山氏が飲食の世界を初めて知ったのは、学生時代に経験した居酒屋のアルバイトだった。「楽しくお酒を飲んで笑顔になるお客さんを見るのが好き」という彼は、大学卒業後、外苑前にあった榎本シェフの「ラミ・デュ・ヴァン・エノ」に入った。そこでフランス料理と出会い、基礎を叩き込まれたという。その後、中目黒や原宿のビストロで料理長を経験し、2010年一軒家ビストロ「メゾンサンカントサンク」で独立を果たした。飲食店を成功させる為に彼が最も大切にしているのは、「お客さんの期待値を超えること」。その点で「ランタン」は、「心地いい空間で、食事がおいしくて、安かったら必ずまた来てくれる」という自信があったという。
「ランタン」のメニューは一見すると大衆酒場のメニューそのもの。だが、これまで長い時間をかけて試行錯誤を重ね、味を深めてきた逸品のみが並ぶ。「ポテトサラダ」(550円)ひとつとっても、アンチョビを入れたり生ハムをのせたりアレンジするのではなく、じゃがいもの選び方など基本的な部分にこだわり、深める。同店の名物となっている「鶏もものカラアゲ」(500円)は、17時から19時までのハッピーアワーには100円で提供する。「たこわさ」(450円)や「肉味噌きゅうり」(600円)などの酒のつまみを豊富に揃えながら、「クミンとミモレットのフライドポテト」(700円)や「ささみのハニーゴルゴンゾーラ焼き」(600円)などビストロの要素を少しずつ取り入れたオリジナルメニューが豊富に用意されている。
そんな定番メニューをさらに特別に見せているのは、同店の空間デザインである。丸山氏自身が友人と手がけた内装デザインは、天窓から自然光が入り、木の温もりが心地いい空間に仕上げられており、パリのビストロと日本の酒場をたくみに融合させたセンスのよさが感じられる。「テーブルはハイテーブルとローテーブルのちょうど中間くらい。900mmの高さが酒場にはちょうどいいんですよね」と訪れる人がリラックスして食事を楽しめるようにと、緻密に計算されてもいる。「空間づくりが大好きなんです」と楽しげに話す丸山氏。その才能は、ケイタリング事業でも発揮され、ハイエンドのファッションブランドからも多く声がかかる。
現在は「ランタン」の2店舗目も計画中という丸山氏には、「日本の飲食の価値をもっと高めていきたい」という目標がある。そのために、会社としてチームで、一つひとつ店を丁寧に作っていくことが大切だという。一人ではできないことを、チームで実現していく。今はそんな会社づくりを楽しみながらも、日々、訪れる人たちと食に真摯に向き合い続けている。
店舗データ
店名 | LANTERNE(ランタン) |
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住所 | 東京都渋谷区西原3-5-3 ルネ代々木上原 B1F |
アクセス | 代々木上原駅から徒歩30秒 |
電話 | 03-6407-1863 |
営業時間 | 17:00〜翌1:00 |
定休日 | 日曜日 |
坪数客数 | 40席・16坪 |
客単価 | 3000円 |
運営会社 | 株式会社シェルシュ |
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