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もつの“沼田”新業態「肉焼屋 はなれ」
肉料理とおばんざいのカウンター酒場

「もつ煮込み専門店 沼田」の隣りのビル1階。入り口は奥まったところにあり通りからは分かりにくいが、すでに予約困難の同店
既存店の常連客も多く訪れる同店は、カウンター12席のみで、一人でも気軽に立ち寄れる
新たな名物「すき焼き」は、一人で食べられる程の量がちょうどいい。〆は、白ご飯を追加して卵とじに
秘伝のタレで食べる「ねぎ鶏れば」(500円)は、新鮮でぷりぷりの食感。日本酒との相性も抜群だ
珈琲新鮮館代表取締役 沼田慎一郎氏

(取材=望月 みかこ)


数多くの飲食店がしのぎを削る新宿三丁目エリア。そのなかでも行列が絶えないホルモン専門店として知られているのが「もつ煮込み専門店 沼田」だ。“日本一おいしいもつ煮込み専門店”を目指し、2006年創業。沼田慎一郎氏(珈琲新鮮館 代表取締役、神奈川県相模原市)が、老舗のもつ焼き屋・い志井(東京都調布市、代表取締役石井宏治氏)からのれん分けしてオープンさせた店だ。創業から10年を経た今でもまったく色褪せず、毎夜、溢れんばかりの人々で賑わう。そんな沼田氏が新たに9月4日にオープンしたのが「肉焼屋 はなれ」である。カウンター12席のみ、6.5坪の店内。“肉とおばんざい”をテーマにした、これまでの“もつ煮込み専門店”とは一線を画す新業態だ。

沼田氏が飲食をはじめたのは、実は20年以上も前。脱サラして父親が地元・相模原ではじめたコーヒーショップを一緒にすることになったのがきっかけだった。豆の卸や付属品の販売、配達などの事業を広げ、3年目で売上を3倍にまでのばした。2号店を中央林間にオープンし、会社として軌道にのせたものの、一方で“コーヒービジネス”に限界を感じるようになっていた。大手のコーヒーショップと戦っていくには、物件が勝負。個人でやっていくにはこれ以上事業を拡大できないと読んだ。そこで、コーヒーを卸していた縁から、い志井グループからのれんを分けてもらい「もつ煮込み専門店 沼田」をオープンさせたのだった。昭和25年から続く老舗のもつ焼き屋に入り、もつをゼロから学び、名の知れたもつ煮込みを食べ尽くして研究に研究を重ねての出店。当時は珍しかった「もつ煮込み専門店」というニッチな業態と、クオリティの高さ、コスパの良さで、たちまち新宿三丁目を代表する人気店に駆け上がっていった。連日満席の同店に、なかなか入れないお客のために2号店「もつやき処 沼田」をすぐ近くに出店。こちらも一号店同様、すぐに予約がとれない繁盛店になった。そして、今回の3号店。その繁盛ぶりを見れば、いかに「沼田」が新宿のお客たちに愛されているかがわかる。現在、同社はもつ・肉業態のほかにコーヒーショップ&カフェも含めて計7店舗を展開している。

今回の「肉焼屋 はなれ」、“もつ”をあえて看板には出さない。「肉専門店の重たさと魚メインの店の物足りなさをカバーしたかった」と話す沼田氏。肉だけではなく、今回はおばんざいや一品料理にも力を入れる。フードメニューはポーションは小さめにし、一人客でも様々なメニューを楽しめるように配慮されている。また、「プロがベストな状態で焼いた肉を提供したい」と、お客がセルフで肉を焼く“焼肉”のスタイルはとらない。肉を炭火で焼上げるため、素人が焼くのと、日々焼き場に立つプロが焼くのとでは、まったく味も食感もなにもかもが違ってくるからだ。料理長として腕をふるう羽牟雄樹氏は、この道20年。フレンチのシェフとしてのキャリアを積んできたが、“食”への研究意欲が高く、もつ焼に挑戦したいと入社したそうだ。イタリアンも和食も、ジャンルにこだわらずになんでも深く研究する。肉によって、串焼きで出したり、塊肉で出したりとベストな調理法でメニュー化されている。

メニューは肉とおばんざいを軸に構成。「もつ煮込み」(390円)などの沼田名物も入れながら、「たん」「はつ」「しろ」(各150円)、「レタス」「生姜」(各250円)などの串焼きや、塊肉の炭火焼「黒毛和牛もも」(100g、1580円)「岩中豚ロース」(100g、880円)なども量り売りで提供する。沼田氏おすすめの「すき焼き」(980円)は、春菊とえのきを牛肉で巻いた串焼きを炭火でレアに焼上げてから、割下の入った鍋で徐々に火入れをしていく。牛肉自体は脂身が少なくあっさりしているが、割下に和牛の風味がしっかり溶け込んでいて絶品だ。具材を食べ終わったら、ご飯を卵でとじて〆の一品に。すでに常連客の間で必食のメニューとなっているそうだ。合わせるドリンクも面白いオリジナルメニューが揃う。焼酎をホッピーではなく、キリンフリーで割った「ヌッピー」(500円)、どぶろくをトニックウォーターで割った「どぶろくハイボール」(500円)などは、沼田氏が独自開発したものだ。ほかには、肉との相性を考えてセレクトした岐阜の酒蔵「群馬泉」の3銘柄(480円〜)も揃える。どのメニューからも“沼田”の遊び心とオリジナリティが感じられ、ここにしかない価値を生んでいる。

これまで肉業態を10年も続けてきた沼田氏だが、食材の確保や、原料の高騰など、その難しさを嫌というほど味わってきた。「焼きとんブームがきて、10年前に比べたら20%くらい原価は上がったんじゃないですかね。そんな状況の中でいい食材を仕入れることも大切ですが、手に入る食材をいかにおいしく、上手に提供できるかが肝心です」。だからこそ、料理もドリンクもスタッフも空間もすべてが“沼田”ブランドでなくてはならないのだろう。最後に会社としてこれから何を目指していくのかと問うと、「10人の社長を育てたい」と返ってきた。“もつ・肉の居酒屋”という軸は変えずに、それぞれの人材にあった物件があれば、場合によっては新会社をつくって出店する。長く続く、しかも繁盛し続ける店をつくるのは、まさに至難の技だ。それを沼田氏は、失敗を繰り返しながらも、ひたすら真摯に店とお客と向き合いやってきた。彼の今の願いは、現場から自分が退いた後も、そんな店をつくれる経営者を育てることだという。

店舗データ

店名 肉焼屋 はなれ(にくやきやはなれ)
住所 東京都新宿区新宿3-6-3 ISビル1階

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アクセス 新宿三丁目駅より徒歩2分、西武新宿駅、新宿西口駅より徒歩4分、新宿駅より徒歩6分
電話 03-6273-1558
営業時間 18:00〜翌2:00
定休日 無休
坪数客数 6.5坪・12席
客単価 3000円
運営会社 有限会社 珈琲新鮮館
関連リンク 肉焼屋 はなれ(FB)
関連リンク 珈琲新鮮館(HP)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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