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農産物直売所から飲食店へ。都市農業に活路をひらく「くにたち村酒場」、2012年5月1日オープン。地元生産者と消費者を結ぶ拠点に

駅から徒歩3分ほどの場所。「西友」が入るビルの地下1階。開け放されたファサードは、間口が広く気軽に立ち寄りやすい雰囲気だ
店内には、バースペース横のカウンターもあり一人からでも楽しめる。無類のワイン好きというオーナーの菱沼氏。日本ワインも数多く揃えている
「村一番のご馳走!地野菜のドカ盛りバーニャカウダ しゅんかしゅんか印」。地場でとれた珍しい品種も含め15種類以上の新鮮な野菜が盛りつけられた一皿は、見た目も鮮やかだ
「ピンチョス 半熟地卵とアンチョビ(日野・由木農場のさくらたまご)」(左奥・190円)、「地元野菜のピクルス」(右奥・390円)、「地元産オクラのフライ トマトチリソース添え」(手前・490円)。鮮度のいい地元食材をふんだんに使った品々。色鮮やかで、濃い味わいが印象的
エマリコくにたち代表取締役 菱沼勇介氏

新宿から電車で30分足らず、住宅街が広がる国立は、近年駅前に商業施設がオープンするなど再開発がすすむ注目のエリアだ。一橋大学のキャンパスがあり学生層も多く、駅を中心に広がる商店にも活気のある街である。そこに地元客のみならず地元の生産者からも親しまれている店がある。2012年5月1日のオープンした「くにたち村酒場」だ。「農産物直売所による“とれたて野菜とワイン”のコミュニティバル」をコンセプトとし、連日賑わいをみせる人気店だ。経営するのは、エマリコくにたち(東京都国立市、代表取締役 菱沼勇介氏)。もともとは国立の農産物直売所からスタートした会社だ。現在は、国立、多摩、国分寺、日野、立川の5市圏内の生産者から新鮮な食材を集荷し、直売所と飲食店という2つの事業をてがける。飲食店は同店の1店舗のみだが、直売所はエキナカ、百貨店内のものも含め4店舗を運営する。

代表の菱沼氏は、一橋大学進学を機に神奈川・逗子から国立に上京。大学では経営学を学び、将来は会社経営を何となく思い描いていたという。学生時代に、商店街の空き店舗を利用してカフェを開設。国立の商店街活性化に尽力した。その結果、地元の人たちが集う場所に。この時、コミュニティを作るということに確かな手応えを得た。この活動は、後輩へと受け継がれ現在13年目を迎える。大学卒業後は、大手不動産会社やコンサル会社に就職するものの、自分の手で会社=コミュニティを作りたいという想いが満たせない日々が続く。2010年、ついに会社を飛び出し、国立の農業を支援するNPO法人に参画した。その翌年、都市農業の農産物を販売する直売所「しゅんかしゅんか」を国立にオープンし、会社を設立した。

現在100件以上の地場農家と取引のある同社。菱沼氏が都市農業に興味を持ったのは、NPO法人の活動を通じて、国立にも豊富な生産地があるということを知ったからだ。そして、それが今衰退の危機にあるという現実も。国立の農地面積はここ20年で半減しているという。「都市農業にはつねに“農地転用”の恐れがつきまといます。都市部では農地の相続税負担も大きいなどの理由があります。そうやって高齢化、後継者不足に拍車がかかってしまうんです」と危機感を募らせる。

そのようなどの地域も抱える農業の課題に対し、“直売所と飲食店”という二つのビジネスで立ち向かう。同社の特筆すべき点は、高効率の物流網を地域単位で築いている点だ。毎日、国立、立川、国分寺、日野、多摩の5市内をバン2台、ハイエース1台で地域の農家に農産物の集荷にまわる。そこで、リアルタイムに生産状況や作付計画などの情報を得て、ほかの農家と競合にならないよう誘導したり、新たな地場野菜を販路にのせたりしているのだ。同氏いわく最も重要なのは「物流効率」だという。一筆書きでまわれるルートを開発し、そのルート上に位置しない農家はあきらめる。つきつめた物流効率が、小売価格を抑えるのに大きく貢献している。それは、より身近に地場野菜を味わってほしい、感じてほしいという同氏の願いなのだ。

「くにたち村酒場」で提供するメニューは、新鮮な地場野菜をいかした料理だ。「地場野菜や有機野菜を使っている=価値ではなく、おいしい食事ができて、ふと気づくとそれが地元の野菜だった。それで初めて野菜にプラスαの価値になるんです」と語る同氏。フードメニューはその日入った野菜をいかした日替わりと、定番メニューから構成される。「前菜3種盛り合わせ」(890円)は、1~2名分のボリュームたっぷりの人気の一皿だ。この日は、青大豆とマッシュポテトサラダ、くにたち名物ノイフランクの大葉入りハム、地のトマトとタプナートのキッシュが盛り合わされた。ほかに「ラタトゥイユ 日野の地卵の温泉卵乗せ」(590円)や「くにたち・佐伯渡さん ナスキャビア バケット添え」(490円)、「立川・清水俊喜さんの大葉 大葉とシラス、ワイルドライスの炊き込みご飯」(1690円)などを日替わりメニューとして提案する。定番メニューは、その日入る野菜に合わせて柔軟に対応できるサラダ類やタパスなどが多く並ぶ。同店の名物メニューでもある「村一番のご馳走!地野菜のドカ盛りバーニャカウダ しゅんかしゅんか印」(1290円)は、都市農業の直営所という基盤があるからこそ実現できる象徴的なものだといえる。15種類以上の多種多様な野菜は、鮮度抜群で、味わいも濃厚だ。2人でシェアしてちょうどいいほどのボリューム感だが、リーズナブルに提供している。これが他店では真似できない同店の強みとなっている。ドリンクは、ワインをメインとしているが、同社がカバーするエリアでもある多摩のクラフトビール「多摩の恵 ペールエール」(850円)も入れるなど“地”にこだわる姿勢が垣間見える。

「『食』は万人の関心事です。だからこそ、万人をつなぐことができる」と食がまちづくりにおいて持つ大きな可能性に、ひとつの理想を描く菱沼氏。「農業が街にとって重要なファクターであることを知ってほしい」と話す彼にとって、農業は単に一次産業の中で終わる課題ではない。持続可能な農業を支援することは、持続可能な街づくりにもつながってくるのだ。この気づきを広めるために、少しずつ出店エリアや農産物の卸先を拡大していくことも計画中だ。飲食店、直売所、物流—。出来る限り農業に寄り添い、ともに歩んでいこうとする彼の一歩一歩が、食と地域を少しずつ変えていくことだろう。

(取材=望月 みかこ)

店舗データ

店名 くにたち村酒場
住所 東京都国立市中1-9-30 せきや国立ビルB1F
アクセス JR中央線 国立駅から徒歩3分
電話 042‐505-6736
営業時間 17:30〜23:00
定休日 第1火曜日
坪数客数 33坪・48席
客単価 4000円
運営会社 エマリコくにたち
関連リンク くにたち村酒場(FB)
関連リンク くにたち村酒場(HP)
関連リンク エマリコくにたち(HP)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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