中目黒・目黒川沿い、さっぱりと瀟洒なビルの2階に、フランス料理店「CRAFTALE(クラフタル)」が9月11日オープンした。オーナーシェフの大土橋真也(おおつちはし しんや)氏は1984年生まれ。辻調理師専門学校 フランス校を卒業後、「ザ・ジョージアンクラブ」、「ジョエル・ロブション」を経て渡仏。パリのネオビストロ「Saturne(サチュルヌ)」でさらなる研鑽を積んで帰国し、初台「レストラン アニス」にオープニングから従事した後、独立。「CRAFTALE」のオープンに至った。
「CRAFTALE」は、“CRAFT(手技)”と“TALE(物語)”の2つを重ねた言葉。生産者の“手”で生み出された食材をシェフやスタッフの“手”で調理してお客に伝え、お客と店とでレストランという“物語”をつくり上げたいという思いを込めた店名だ。この店名にはもうひとつ、より深い意味が隠されている。それが“FRACTALE(仏語:フラクタル)”。フラクタルは、どんなに微小な部分を取り出しても全体に似た形になる図形(自己相似)のこと。CRAFTALEはFRACTALEのアルファベットを組み替えたアナグラムでもある。野菜のロマネスコの小さな蕾が大きな蕾を形成し、ひとつのロマネスコになるように。枝が木をつくり、木が森をつくり、森が地球をつくるように。人がつくり、人がテーブルへ運び、人が食べ、血となり肉となり人をつくる。それぞれが一部であり、同時にすべてであるという“フラクタルな”考え方。それが「CRAFTALE」の基本理念だ。
オーナーシェフの大土橋氏はとにかくおいしい物が大好きで、幼い頃から西洋料理への憧れがあったという。「私が生まれ育ったのは田舎でしたからね、洋食を食べる機会がなかったんです。実家はパンもめったに食べないほどの和食党。フォークで食事をしてみたい、ハンバーグやシチューのように茶色いソースの料理はどんな味がするのだろうと、さまざまな空想をしていました」。学生になりアルバイトをするようになってからは、お金を貯めて行ける限りの飲食店に行ったという。「それでも食の世界は果てしない。どこまで求めても終わりがない。そこで、食の世界に入れば究極にたどり着ける、世界でいちばんおいしい物が食べられるだろうと思い、料理人の道を選びました」。
食の道を駆けのぼり、フランス料理界を代表するグランメゾンなどでの仕事を経験するにつれ、世界でいちばんおいしい物は“食べたい”から“つくりたい”に変わり、自分の理想とする“おいしい”を実現するためには、自分で考え、自分で一からつくりあげなければならないことに気付く。その思いがこの秋、「CRAFTALE」として形になった。装飾や色彩を極力排した店内。席についた瞬間からCRAFTALEの鮮やかな世界が繰り広げられる。「ディナーコース」(7000円)は8皿の構成で、うち4皿にはその料理に合わせたパンが用意される。これにワインを中心としたアルコールのドリンクペアリング(6杯 5000円/4杯 3000円)を合わせることができる。
ひと皿ひと皿の料理にはそれぞれフラクタルなテーマが与えられている。ひとつの食材の各部位をそれぞれ違った手法で調理し、ひと皿にまとめてその食材全体を表現したもの。同じ色合いの違った食材を複雑に組み合わせ、見事にまとめたもの。ひとつひとつの料理が美しい色彩とともに、細やかさと調和、奥深さを感じさせてくれる。また、パンは野菜のシフォンや具の入った揚げパン(9月時点)など実に自由なスタイルで、合わせる料理の完成度をさらに高めているのも注目すべき点だ。今後は料理のソースにもできるスープなどを含むノンアルコールドリンクのペアリングも予定されていて、さらに複雑に、無限に広がる世界観を楽しめそうだ。コースメニューは1カ月半程度のサイクルで変更予定。週末のランチコースやアラカルトなどもスタートする。大土橋シェフ率いるCRAFTALEの、“フラクタルな”表現に今後も注目したい。
店舗データ
店名 | CRAFTALE(クラフタル) |
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住所 | 東京都目黒区青葉台1-16-11 2F |
アクセス | 東京メトロ 日比谷線・東急東横線 中目黒駅から徒歩約6分 |
電話 | 03-6277-5813 |
営業時間 | 17:00〜25:00 |
定休日 | 水 |
坪数客数 | 27坪 24席 |
客単価 | 10000円 |
関連リンク | CRAFTALE(HP) |
関連リンク | CRAFTALE(FB) |