都営地下鉄大江戸線の開通以来、高層マンションやオフィスビルなどの建設ラッシュが続いている勝どきエリア。地下鉄大江戸線 勝どき駅に直結している「勝どきサンスクエアビル」には、多くの飲食店が軒を連ねている。その地下1階に2月27日、日本酒・日本ワインと共に築地からの高級鮮魚を使った料理をリーズナブルに楽しめる和風バル「kachisara(カチサラ)」がオープンし、15時の開店直後から、地元客や隣の築地市場関係者が多く訪れ連日賑わいを見せている。経営は、ビヨンドスタンダード(東京都渋谷区、代表取締役:立野新治氏)。同社は、ヘッジファンド事業とコンサルティング事業の2つを軸に展開しており、今回の同店の立ち上げは、コンサルティング事業の一環で、飲食コンサルティングのパイロット店として運営しているという。
「昨年このエリアに越してきましたが、普段使いができる手頃な飲食店がないことに気が付きました。あるのはファミレスや居酒屋ばかりで。私のような30代で家族持ちでも使い勝手の良い店が皆無だったので、真に地元住人のニーズに応える店をつくりたかったんです」と代表の立野氏は立ち上げの経緯を話す。日本酒や日本ワインを築地の高級鮮魚を使った料理と共に楽しめる和風バルというコンセプトについては、共同経営者である鶴田和也氏の協力が大きい。立野氏は、国内美容室の海外進出支援や、国内観光事業の海外への販促活動支援なども手掛けていて、海外、特にミャンマーでのビジネス経験を持つ。一方、鶴田氏は飲食業一筋で、「築地寿司清」での修行経験やダイニング業態での店長経験もあったが、海外への興味が強く湧き、2012年にミャンマーで日本食レストランを開業。チーフシェフとして活躍していた。このミャンマー時代に、立野氏と出逢い交流を持つようになる。「2014年に帰国した際、立野から日本で飲食店をやりたい、一人では難しいから手伝って欲しいと誘われたんです。東京は飲食激戦区でその難しさを知っていましたから断り続けました。でも半年間に渡るアッタクに根負けし、物件的にも良い物と巡り会えたのをきっかけに一緒にやることにしました」と鶴田氏は振り返る。両氏の出逢いによって生まれた同店舗は、海外に出た者だからこそわかる日本食材の素晴らしさや美味しさを、改めて地元の人々に伝えたいという思いが詰まっている。
「日本に居るから素晴らしい食材を調理でき、その料理を提供できる。ですから中途半端なことをせず、その時の旬な素材の美味しさを活かした料理を提供することに努めています。築地で仕入れた高級鮮魚を下町価格で多くの人に味わって欲しい」と鶴田氏が語るように、同店の料理メニューは高級鮮魚を使った刺身からひと手間かけた一品もの、日本酒やワインに合うものなど豊富に揃っている。取材当日は、淡路産「初〆サバ刺」(700円)や、出水産「旬のあじ刺」(550円)などがオンメニューだった。また旬で変わる様々なタパス(惣菜)を150円~200円というリーズナブルさで提供。なかでも、自家製の「とりもつ燻製」(200円)はスパークリングワインに合うつまみとしてオススメだ。〆には、「土鍋ごはん」(980円)などもあり、人気の高いメニューとなっている。
日本酒は、鶴田氏が厳選した銘柄の酒の数々が並ぶ。人気の銘柄「獺祭(磨き50)」(400円)や、「梵(ときしらず)」(500円)、「新政No.6R-type」(550円)など日本酒好きにはたまらないライナップが揃う。日本ワインも、山梨県産の甲州種を100%使用した「グレイス甲州」(グラス670円・ボトル4000円)や、山梨のぶどうの良さを最大限引き出せることをテーマにワイン造りをしている雨宮氏が手掛ける「ますかっとベリーA イグレック・カレ」(グラス790円・ボトル4800円)、岩手・紫波町のブドウ農家と紫波ワイナリーとで造られた「紫波リースリングリオン」(グラス670円・ボトル4000円)など、日本ワインの素晴らしさを実感できる様々なワインが楽しめる。
「これからも地域密着で、幅広い年齢層の方々に来店してもらいたい。テイクアウトだけの利用もして頂けるようタパス(惣菜)をより充実させていきたい。そして、この『勝どき』というエリア全体を盛り上げていくことに力を注ぎたいですね」と今後の展望を話す立野氏。今後このエリアは、2020年のオリンピック開催を控え、ますます海外からの観光客も増える地域でもある。海外経験がある立野氏と鶴田氏だからこそ日本の食材・料理・酒の美味しさや素晴らしさをより上手に伝えることができるだろう。また、いずれはアジア諸国での展開も視野に入れていきたいとも語っていた。同店のさらなる躍進に注目していきたい。