西荻窪駅南口を出てすぐ、吉祥寺方面へ向かって延びる飲み屋街。この界隈は、長年続く焼き鳥屋をはじめ、いわゆるせんべろ飲み屋が軒を連ね、明るい時間からもうもうと煙が立ち上り、老若男女が路地に並べられた小さなテーブルで一杯飲む姿で賑わっている。その南口からわずか26mという至近距離の場所に、「煮こみや 富士山」が2014年12月10日オープンした。手掛けるのは、阿佐ヶ谷の「ビストロ 猫の髭」、新店舗の隣店「浜魚」を展開しているANAGUMA(東京都杉並区、代表:加賀美誠氏)。同社の三業態目となる今回の新店舗は、米沢牛を赤ワイン、白ワインそれぞれで煮込んだ“ワイン煮こみ”がメインの立ち飲み屋。店名・看板からは想像がつかないギャップ感が興味深く、この南口の飲み屋街の風景に既にしっかりと馴染んでいる。
「塩、味噌、醤油の煮込みは普通にありますけど、ワイン煮込みの店はあまりないですし、うちは、『こぼしワイン』のオーダーが入ると、煮込み鍋の上で、ワインをこぼしながら注ぎます。煮込みにワインが継ぎ足されて、更に美味しくなるんです。お客さんがオーダーすればする程、ワインが継ぎ足される。みんなで美味しい煮込みを作ってるという感じは他にはないですから」と同店のコンセプトを語る加賀美氏。コの字型カウンターの真ん中に大きな煮込み鍋が二つ並び、客との距離も近い。立ち飲みという気軽さから、客同士も自然と打ち解け合い、和気あいあいと楽しみながら煮込み料理がより一層美味しくなっていくという。もともとはサラリーマンで、自身もよく飲み屋に通い、一日の疲れをリフレッシュし、また翌日への英気を養っていた。美味しいものを楽しく提供し、働いている人を応援したいという思いから、脱サラして飲食業界に入った。時間が経った今でもその思いは変わることのない同氏の原動力であり、業態が変わり展開を広げてもブレることのない中心軸となっている。
姉妹店である阿佐ヶ谷「ビストロ 猫の髭」の協力を得て作られた看板メニューの「富士山 特製 煮こみ」は、赤煮こみと白煮こみ(各380円)の2種類。山形県飯豊町から直送される米沢牛を厳選したチリ産のワインで3~4時間ほど煮込む。じっくり丁寧に作られた煮込みは、柔らかくほっこりする味に。白ワインで煮た「白煮こみ」はさっぱりした味わいで、皿の横に少量のスパイスが添えられ、付けると味にアクセントが出て、また違った美味しさが広がる。赤ワインで煮た「赤煮こみ」は、しっかりコクのある味でバゲットとワインがすすむこと請け合いだ。ファーストオーダー率が高い「生ハム」(200円、大皿750円)は、専用スライサーにて店舗でスライス。フレッシュなその日の切りたてが提供される。姉妹店の人気メニュー「猫の髭 レバパテセット」(480円)や、その時々のスポットメニューで「猫の髭 真鯖のリエット」(500円)などもあり、既存店の常連客も来店するという。また店頭の専用ロースターでじっくり焼くローストチキンの「富士山ロースト丸鷄」(Sサイズ 1/4羽 580円、Mサイズ 1/2羽 980円、Lサイズ 1羽丸鶏 1580円)も同店オススメの一品だ。オリジナルベジソースと一緒に食べると野菜の美味しさが鶏肉の旨味を引き立てる。
ドリンクは、看板メニューの煮込み料理を美味しくする「富士山こぼしワイン(赤・白)」(各380円)や、「富士山 こぼしワイン(スパークリング)」(400円)、煮込みの米沢牛とも相性が良い「富士山 こぼし日本酒 若乃井(山形県飯豊町)」(400円)などが人気。自家製すりおろししょうがを使った「ジンジャーサワー」(480円)、「ジンジャーワイン」(500円)、「ジンジャーハイボール」(500円)や「ジンジャービール」(550円)は、しょうがの効き具合が絶妙でクセになる美味しさだ。
「煮込みをメインに和洋を問わずに広げていきたいと思っています。立地も特に中央線沿線にはこだわっていませんが、とにかく人材と物件のタイミングが大事だと思っています」と今後を語る加賀美氏。自身が飲食業に飛び込んだ理由の「毎日一生懸命働く人達に美味しいものを提供したい」という、熱い想いを込めて作る煮込みは、より一層柔らかい食感とほっこりした味わい深い料理になって多くの人に届けられるだろう。
店舗データ
店名 | 煮こみや 富士山 |
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住所 | 東京都杉並区西荻南3-25-6 |
アクセス | JR西荻窪駅南口より徒歩10秒 |
電話 | 070-6668-3426 |
営業時間 | 18:00~翌2:00 |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 5.5坪 立ち飲み |
客単価 | 1500円~3000円 |
運営会社 | ANAGUMA |
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