業務用食器、調理道具・設備を販売しているローヤル物産(東京都港区、代表取締役 辻武博氏)が、一般も購入可能となる料理のプロが認めるキッチンツール・テーブルウェア専門店「THE HARVEST KITCHEN GENERAL STORE(ザ ハーベスト キッチン ジェネラル ストア)」を恵比寿に2014年10月15日オープンした。「ニューヨークには『フィッシュズエディ』『バワリーキッチンサプライ』、パリには『ア・シモン』や『モラ』など、ローマでは『グスト』と、世界各地には、料理のプロも認め、一般のお客様もワクワク・ドキドキするようなキッチンツール・テーブルウェア専門店が点在しています。そんな各地を旅するうちに、いつかは自分も“こだわりのセレクトショップ”をオープンさせたいと思っていました。今後20年先を考えたときに、IKEAやASKULなどの他業他社の登場によって、安い物が気軽に買えるようになり、僕らのような“御用聞き”の商売は成り立たなくなっていくと思います。BtoBだけに捕われることなく、BtoCにも発信できる橋渡し的な役でありたいと思いを馳せる中で、今回、ADエモーションのフミさん(中村文裕氏)から背中を押してもらうかのように声をかけてもらいました」と出店経緯を代表の辻氏は話す。
コンセプトは、一軒の家。入り口からメインの売り場はリビング。その奥には、書斎をイメージしたこだわりの逸品がディスプレイされる「HARVEST ROOM」。横にはデッキフロアもあり、外には芝生の生い茂った庭もある。そして、店内の右奥の帆布のカーテンを開けるとキッチンと称される大きなカウンターのみの小さなレストラン「Farm To Table Y(ファーム トゥ テーブル ワイ)」(運営:ADエモーション、代表取締役 中村文裕氏)が併設されている。もちろん、厨房やテーブルセッティングには店内で販売するキッチンツールやテーブルウェアが用いられている。「単なるショールームにはしたくありませんでした。発信力のあるワクワク・ドキドキするようなストーリーのあることをしたかったのです」と辻氏。レストランは料理とワインを楽しみながら、実際に商品に触れて、その魅力を実感する場でもあるのだ。
店内にディスプレイされる世界中からセレクトした商品は、「男性目線」で選ばれるような、インダストリーな男性的商品が多い。例えば、アメリカの「LODGE(ロッジ)」やドイツの「M.HELMENS DORFER(ヘルメンズドルファ)」の“アイアンウェア”や日本が誇るアルミ鍋ブランド「中尾アルミ」の4mmもの極厚のアルミ材で作られた“ハムエッグパン”など、 手に取ってみると、“ストーリー”が浮かんでくるような商品ばかりだ。
「料理に欠くことができない、食材を収穫し、調理し、器をコーディネートして、食卓が存在するというストーリーを店前で表現したかったので、『収穫= HARVEST』に。そして、もう一つ、アメリカのロックスター、ニール・ヤングの70年代を代表する名盤『HARVEST』からインスパイアさせてもらい、その武骨な容姿と独特の音楽性と歌詞のセンスと同じように、そんな独特なセンスある武骨な商品を紹介したいという想いを表現してみました」と店名の由来を教えてくれた辻氏。今後は、店舗敷地内にテラスガーデンも設置し、子供からプロのシェフまで楽しめるワークショップを企画していくという。さらに、シェフやソムリエが農園やワイナリーに造り手を訪ねるように、器や焼き物の造り手を訪ねに行くこともすでにアテンドしている。同店は他に類を見ない、同社が長年培ってきた強みを活かした“サンプルショップ”ではなく、辻氏の審美眼が光るキッチンツール・テーブルウェアに特化した“ライフスタイルショップ”。同氏の新たな挑戦のようでいて、ずっと変わらない熱い想いのかたちなのだ。