練馬や中央線沿線エリアで、おしゃれなイタリアンバルとネオ和酒酒場を展開する注目のボウチラ(東京都中野区、代表取締役:高橋智行氏)が、新感覚の本格炉端業態「ROBATA IPPUKU(ろばた いっぷく)」を練馬駅南口に2月16日オープンした。山海の幸をシンプルに焼く野趣豊かな炉端料理は、自然の恵みを実感する料理である。素朴でありながらも現代の生活、なかでも都会では、贅沢な料理の一つとも言えるだろう。11人も座れば満席となる変形コの字形カウンターの中央、手の届きそうな距離にある特注の囲炉裏。赤く燃える炭火の周りには、竹串に刺した魚や野菜が並ぶ。網の上では、貝や肉がこんがりと焼かれ、美味しい香りが五感を刺激する。
先人の時代、なかでも北海道や東北の地のような寒冷地では、囲炉裏は大事な生活の火元であり、家族が集う家の中心であり、食卓の場でもあった。「会津や北海道で体験した炉端料理の醍醐味、美味しさをいつか具現化したかったのです」と高橋氏はオープンの訳を話す。そして「皆で囲む炉端の楽しい雰囲気を気軽に味わって欲しいのです」と続ける。同氏は、ただ炉端料理を提供するだけではなく、人が集い、食を分かち合う場としての炉端業態を創ったのだ。そんな囲炉裏、炉端の真髄を形にしたく、スタイルや空間創りまで詳細にこだわったという。
駅前の飲食繁華街からは少し離れた、練馬警察署、消防署の裏、飲食店と住宅が混在するエリアの生活道路に面した場所に構える店。杉玉を下げ、蔵を思わせる和仕上げのファサードで、新鮮な山海の幸を並べたショーケースが美味しいオーラを放ち、目を惹き付ける。店内に一歩入ると、ナチュラルな土壁風仕上げの田舎家のような環境が迎える。出来る限り機械類を隠し、会津の農家の古い農機具や生活材を飾った懐かしいような空間で際立つ、中央に炉を設えたシャープでモダンなカウンター。燈りを落としたほの暗い中に、柔らかく温かな炭火の灯が、囲炉裏の古くて新しい世界観を垣間見せる。
子供の頃から焼き物に馴染み、自ら竹串まで手作りしてしまう料理長の鈴木篤氏が素材の旨味を逃さずにほっこりと焼き上げる炉端焼料理。それぞれの産地から届く旬の野菜、水揚げされたばかりの鮮魚や干物、肉類に加え「大吟醸の酒粕の炙り」(200円)のような珍しい一品まで多彩な種類を揃えるが、鮮魚は一尾 600~800円台、肉類 500~700円台と、どれも驚くほど手頃な価格。「鮮度の良い素材にこだわるだけに、高いというイメージが大きい炉端焼きを手頃な価格で提供したいのです」と高橋氏は話す。ほかには「イカワタのルイベ」など15種類以上ある380円均一の肴に、「炙りダチョウ」(850円)などの刺し類(400円~)、「ポテトサラダ」(380円)などを揃える。
ドリンクは、その時々で替わるおすすめの日本酒を冷酒15種類(グラス430円~)。燗酒向けは5種類(400円~)を置く。芋、麦などの本格焼酎が24種類(380円~)。ワインはグラスが480円からで、ほかに常時ワインセラーには40種類以上(2500円~4000円台)が揃う。ほかに、割りもの類(480円均一)、ハイボール類(480円~)などと、充実している。
「bar DON TSUCCHI(ドンツッキ)」、「evino(エヴィーノ)」と独創的なネーミングからも判る個性的なイタリアン業態でスタートした高橋氏。近々では、日本酒専門店「酒晴(さかばる)」、ネオ大衆酒場「かわ焼き まいける」といった、古典的な和業態を斬新なスタイルにしたネオ和業態などを含め、現在6店舗を展開している。古典的な業態である炉端業態を新感覚でいて大人使いの隠れ家に仕上げているのは、同氏らしい手腕である。立地、マーケットを踏まえ、個性的な店を創り続ける秘訣は、常に幾つものアイディアを考え、ストックしているからだ。高橋氏が、次はどんな店を創るのかが楽しみである。