政府による「Enjoy Japanese Kokushu」(國酒プロジェクト)が推し進められる中、銀座一丁目の昭和通り沿い角に47都道府県の國酒を揃える「KUNIZAKE-YA」が5月24日オープンした。トリコロールカラーを基調としたカフェのようにスタイリッシュなファサード。扉を開けると、4坪10席という小さなスタンディングバースタイル。大手企業から脱サラし、同店を開業した店主の土屋豊氏は、鉄道と飛行機が大好きで国内旅行が趣味という。47都道府県はもちろんのこと、日本の東西南北の最果てまで歩いたという旅の玄人。 同店のコンセプトは、「お酒で日本を旅しましょ」。サラリーマン時代、大阪に転勤。もともと飲み歩きが好きという土屋氏が、大阪・北新地の立ち飲み屋の面白さを知ることとなる。大阪の「面白ければいい」というフリースタイルが東京には何故ないのだろうか。いつか日本中を旅できるような、ニュートラルな雰囲気の自分の店を持ちたい。50歳前に飲食店の開業をすると目標にしていたと振り返る。そんな計画とは裏腹に、早期退職の話が持ち上がり、少し計画より早いが、思い切って決断した。大阪転勤の経験が、店を持つ夢を叶えたと言っても過言ではない。 取り扱う酒は、日本酒が40種、焼酎、ワイン、ビール、リキュール全て國酒のみ。日本酒は、デリケートな性質 、ラインナップ数から、在庫リスクを回避するため、四合瓶のみを置く。最大のこだわりは、東西南北の最端にある蔵元の酒を揃えていること。なかには、生産量が少なく入手困難なため“幻の”という形容詞がつく希少な泡盛「泡波」までもある。カウンター上の大きな黒板には、47都道府県の國酒が名を連ね、壁の大きな日本地図には季節の酒とフードメニューが書かれている。酒が得意でない人にと、ノンアルコールビールや岩手の「マスカットサイダー」(500円)を用意。地サイダーは、評判を集めていることもあり人気という。 フードは「作らない、持ってくる主義」に徹する土屋氏。日本全国を旅して選りすぐったアテは、保存が可能な珍味が中心であるが、その土地に行かなければ手に入らないものばかり。島根の「鮎うるか」(550円)や、石川の「鰤のぬか漬け」(500円)など、来店客が「これあるの?!」と驚く品々。東京の「あきる野燻製チーズ」(350円)は、普段チーズを食べない人も美味しいと言う逸品。まさにここは、バイヤーが目利きして選んだ商品を並べる“セレクトショップ”だ。 仕事帰りに一杯。もう少し飲みたいときの2店目に。早い時間から1杯引っ掛けて帰りたいニーズにも応えられるように16時から店を開けている。「立ち飲みなのでチャージ料なし。気軽にコーヒーを飲むように、1杯だけでも大歓迎ですよ」と土屋氏。壁には、「腰当て」が設置され、寄り掛かって飲むとき楽になる工夫がされている。「飲食とは、エンターテインメントであり、情報と出会いがプラスα(アルファ)となること」だと語る同氏。今後の展望を、「まずは、ここを3年以内に地域に根ざす店にすること」と語る。次に、今の倍の広さの8坪バーをやりたい。さらには、大阪にも店を出したいそうだ。 第3土曜日を定休日とした理由を「連休にして、大阪の仲間と一緒に呑みに行きたいから。旅をして、お酒を仕入れてこないとなりませんからね」とハニカミながら教えてくれた。ひとり、またひとりと店は埋め尽くされて行く。客同士が、國酒片手にいつの間にか仲良くなり、旅の話で盛り上がれる場所、土屋氏のセカンドライフがはじまった。
店舗データ
店名 | KUNIZAKE-YA(クニザケヤ) |
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住所 | 東京都中央区銀座1-20-11 伊藤ビル1階 |
アクセス | 東銀座駅より徒歩5分、銀座一丁目駅より徒歩6分 |
電話 | 03-3563-8300 |
営業時間 | 月〜金16:00〜23:00(L.O. 22:30) 土 16:00〜22:00(L.O. 21:30) |
定休日 | 日曜日・祝日・第3土曜日 |
坪数客数 | 4坪 10席 |
客単価 | 2000円 |