東京都中央区新大橋通り沿いに「ぶーみんVinum 水天宮」が3月19日オープンした。運営はシェアハピネス(代表取締役 白根智彦氏)。「ぶーみんVinum (ヴィノム)」は2011年に裏銀座・新富町、2012年、同じく中央区新川に出店。両店舗とも好立地とはいえないが、“わざわざ行く価値のある店”として人気を得ている。両店舗のテーマは「ワインと豚と世界のお料理」だが、水天宮店ではテーマを「水天宮の街にリストランテを!」「ぶた×イタリアン=ぶたリアン」とする。「水天宮エリアは大人が満足できるイタリアンが見当たらなかった。隣の日本橋には老舗が多く、地元住民やワーカーにとって使い勝手の良い店は少ない。日常使いができる“リストランテ”が必要だと思った」と白根氏は話す。
食べることを楽しめる本格的な店に必要なのは、やはり腕とセンスを兼ね備えたシェフである。白根氏は「水天宮の街にリストランテが必要だ」と思っていた矢先、シェフ星野允人(よしひと)氏と出会う。星野氏は10年前、22歳の時に飲食業界に飛び込み吉祥寺の人気店「リストランテ プリミ・バチ」で修行を始める。北イタリア ピエモンテ出身のイタリア人シェフや、同地に渡伊経験を持つシェフの下で学び、その後、他店に移り料理長を務めた。「メニューは豚をメインにしつつ、好きにつくって構わない」。白根氏のオーダーのもと、得意の北イタリア料理や生パスタを軸としながら、イタリア各地方の豚料理から創作料理まで幅広く展開。看板メニューは「水天宮ラグーミートソース タリアテッレ」(1380円)。豚100%のミートソースだ。通常仔牛からつくる出汁“フォン・ド・ヴォー”は豚骨を使用。肉はゼラチンが多く含まれている“すね”部分を長時間煮込む。仕込みは4日間におよぶ。仕上がったラグーソースは旨みが凝縮され、食感はまるで牛すじのような柔らかさだ。
他に豚を使用した伝統料理は「Tonno del chianti キャンティ地方の豚のツナサラダ」(800円)。Tonno(トンノ)はまぐろの意味。同地方は山に囲まれていることから魚が手に入りにくかったため、豚を長時間煮込んだあと繊維をとってツナのような食感にしていた。本来はレモンドレッシングで和えるが、オリジナルマヨネーズをベースに白トリュフを加えた“贅沢なツナマヨ”に仕上げた。合わせるワインはピエモンテ産「モンテイ ビアンコ」、「モンテイ ロゼ」。両方とも味が濃くしっかりとしているので白トリュフの香りにもよく合う。「ぶーみん名物豚焼き」は、「豚焼きイタリアン 豚ヒレのスカロッピーネ」(780円、1枚~)にアレンジ。豚肉をたたき伸ばしたものに、粉をかけバルサミコ酢とバターを乳化させたソースでソテーする。豚をメインに本格リストランテメニューが味わえる。ワインはピエモンテに料理留学の経験を持つ、シニアソムリエの三角店長が担当。ガブ飲みワインではなく、リストランテメニューとの相乗効果となるイタリア産ワインをメインにセレクト。グラスワインは全5種。赤・白・泡(500~1000円)。ボトルは3000~4000円台を中心に、舌のこえた大人が満足できるように幅を持たせ、イタリアを中心に100種揃える。客の好みを丁重に聞き、料理に合わせてセレクトする。今後はイタリア20州のワインを揃える予定。
飲食店のコンサルティングを兼務する白根氏自身の店作りは、「街に対してどんな飲食店が必要されているか」、「それに対して、自分たちが応えられることは何か」をキーとしている。新富町出店後、エリアが裏銀座と呼ばれるようになり、今では“ワインの聖地”となったように、飲食を通しその街を面として捉えたときに、どんな発展をしていくことができるかを念頭に店づくりを行なう。今月は京橋に出店を控えている。「飲食は生活する人たちにとってかけがえのないもの。飲食店は街のエネルギー源となり活性化に役立つ。そのような役割でありたい」と白根氏は最後に語ってくれた。