メディアにも度々登場する発酵食材を使用した、祐天寺隠れ家レストラン「発酵食堂 豆種菌」や、薬膳・手作り調味料の中華料理店 渋谷「月世界」など、知る人ぞ知る店舗を展開し、新しい食文化を仕掛けるイイコ(東京都目黒区、代表:横山貴子氏)の5店舗目「ナポレオンフィッシュ」が麻布十番にオープンした。
通常、中華といえば、油を多く使用し高カロリーな料理。ヘルシーなイメージとは程遠いが、本来の中国料理は、発酵調味料を使用したヘルシーなものだった。しかし現在では、中国の大都市でもこの本来の料理は食べる事ができないという。「ナポレオンフィッシュ」が目指すのは、日本にまだ入ってきていない貴州省、雲南省、広西省などの少数民族が作る、発酵調味料を使用した中国本来の料理だ。オープン前、横山氏と料理長の小山内耕也氏は、少数民族の村を訪ねたり、現地の食堂や屋台でローカルフードを食べ歩いたりした。また、民家では家庭料理や、昔ながらの製法で作られている手作りの発酵調味料を学んだ。「本来の中華料理の原始的なおいしさ、発酵調味料を使用した、ヘルシーな料理を日本に持ち帰り、伝えたい……」。そんな思いから店づくりをはじめた。
実は渋谷にある既存の中華料理店でも、メニューに手作りの発酵調味料を使ったものを提供していたが、なかなか客には受け入れられなかった。それは立地が関係していたのだろう。渋谷はエンターティメントの街であり、客層は若者が多く、食の探索やヘルシー志向の客のニーズは低い。「成熟した大人が集まる麻布十番であれば、新たな食への出会いを求める人やヘルシー志向のマーケットがあるのでは」と思い、出店を決めたという。
メインは発酵中華だが、店舗名にあるように、目玉は「ナポレオンフィッシュ」。この魚は、香港や中国では高級食材として扱われ、蒸し魚料理で世界一おいしい食材と言われている。日本でも食べられるのは、高級中華店くらいだ。同店では、沖縄の海で育った天然物を直送し、かぶと蒸し2400円、切り身蒸し100g/1200円と、手軽な価格で提供する。タンパクな味わいに、ふわりとした食感が特徴の魚を蒸し、発酵唐辛子で調理する。
その他には、「蒸し鶏の発酵唐辛子ソースがけ」(850円)、「自家製発酵ベーコン、干しチャトウ田舎煮込み~江西省風 干鍋仕立て~」(1100円)、「色々きのこの土鍋煮込み~青山椒と発酵レモン風味~」(1250円)など。いずれも豆板醤やテンメンジャン、乳酸発酵させた漬物や発酵大豆(納豆)、唐辛子などの発酵調味料を取り入れ、美味しく健康的な中華を提供する。また、「中華にワインを」というオーナーの強い思いが反映されたドリンクメニューには、料理に合う赤、白、スパークリングワインを用意。特におすすめはロゼワイン。爽快でフレッシュな香りのスペインのタペーニャボトル(3800円)、日本の酒井ワイナリー バータップ ロゼ(4800円)、赤ワインボトル(3800円~)、白ワインボトル(3800円~)、スパークリング(4200円)などを取り揃える。
中華というテーマではあるが「未知の食に出会って欲しい」という思いから、インテリアには中華のイメージを出さないように心がけた。床はテラコッタ調のタイルを貼り、おしゃれなカフェテラスのような佇まいである。とはいえ、ガラス貼りで見える厨房はしっかりとした造りだ。中華鍋をふりながら料理をつくる料理長の姿が店内に活気を伝える。
時代のニーズを読み、型にとらわれないユニークな店づくり展開してきた横山氏。今後の展望は「5店舗を大切に育て、深堀し、より広めていきたい。そして、これからは自分の周りにいる人たちや、若い人たちのやりたいことを実現出来るように応援していきたい」という。新たなステージに向かう横山氏の今後に期待が募る。
店舗データ
店名 | ナポレオンフィッシュ |
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住所 | 東京都港区麻布十番1-6-7 2階 |
アクセス | 都営大江戸線・東京メトロ南北線 麻布十番駅より徒歩5分 |
電話 | 03-3479-6687 |
営業時間 | 18:00〜23:30(9月よりランチ営業開始 11:30〜15:00) |
定休日 | 月曜日 |
坪数客数 | 21坪・32席 |
客単価 | 7000円 |
運営会社 | 株式会社イイコ |
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