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大吟醸酒も本醸造酒もワンコインで供する斬新な売り方で、日本酒をもっと身近に! 「日本酒バル 富成喜笑店(フナキショウテン)」が1月27日三軒茶屋にオープン!

地下に立地。目立たぬ造りのため、立て看板や一升瓶で通行人にアピール
日本酒はすべてワンコインで提供。大吟醸酒も本醸造酒もすべて同一価格で供し、値段を気にすることなく好みの酒を楽しんでもらう
メニューは手書き。レイアウトも毎日変え、常に目先の変化を打ち出す
店主の舟木雅彦氏と看板娘の渡部恵氏。「日本酒バル」という業態の確立を目指して日々奮闘

(取材=印束 義則)


昨今の“ワインバル”人気の要因は、依然、どこかとっつきにくい面のあったワインを、客に「もっと気軽に楽しめるものだよ!」と親しみやすく感じさせたことが何よりも大きい。例えば、グラスいっぱいになみなみとワインを注ぐ。あるいはボトルを手頃な均一価格で提供したり、仕入れ価格に1000円上乗せしたお値打ち価格で販売するなど。こうしたことを足がかりにワインを身近なものとして感じてもらい、まず分かりやすく“形から入る”ことでワイン需要の裾野を広げたことが一番の成功理由であろう。これまでの多くの店のアプローチの仕方は、どうしても売り手目線で専門性の高いアピールに終始しがちだったが、ここに来てようやく大胆なまでに初心者の目線の高さに立ってワインを提供したことが、ワインを飲む行為をごく日常的なものとして根づかせたのである。 一方、専門性の高さゆえワイン同様に初心者からとっつきにくいと思われているアルコールに日本酒がある。“久保田”“吟醸酒”と言ったキーワードに沸いた最初の地酒ブームから早や20年以上の月日が経過。それでもまだ、「誰もが気軽に日本酒を口にしているか?」と問われたら、残念なことだがやはり「否」と言わざるを得ない。それは、かつてのワインの売り方のように専門性の高さばかりが前面に出すぎているためで、それだけで「もういいや!」と感じてしまう客も少なくないのである。そうした中、「知識がないと楽しめない!」といった客の固定観念を取り払い、日常づかいの日本酒業態を目指してオープンしたのが東京・三軒茶屋の「日本酒バル 富成喜笑店」だ。 同店を経営するのはツイテルカンパニー(東京都世田谷区、代表:舟木雅彦氏)で、経営者の舟木氏は繁盛居酒屋の「てっぺん」に3年間勤めた後、2008年に独立。「富成喜笑店」から徒歩1分ほどの場所で1店舗目の「WINE&BAR TEPPEN(ワイン&バー テッペン)」を営業しており、12坪・26席で月商360万円の繁盛店を築き上げている。そして今回、満を持して開業したのが「富成喜笑店」だ。開業にあたって大きな売り物に据えたのが、500円(税込み525円)均一のワンコインで提供する地酒。メニュー表には20種強の地酒がずらりと並び、「爽酒(そうしゅ)=新鮮で清涼感のある辛口タイプ」「薫酒(くんしゅ)=果実を連想させる華やかなフルーティータイプ」「醇酒(じゅんしゅ)=原料の旨味を感じさせる、充実した濃醇タイプ」などに分類。他に「熟酒」を交えながら味わいの順番に商品名を並べ、味の好みで選んでもらう売り方を採用する。本醸造酒も大吟醸酒も純米酒もすべて同一列上に並べて販売するため、客は余計なことを考えることなく自分の好みに沿って日本酒を楽しむことができる。この店では日本酒はすべて一括りにされ、ランクの差などない。あるのはただ、客の嗜好の違いだけである。地酒は1杯120ml、原価率は高いもので約50%、低いもので約20%、平均約40%。 同店がこうした売り方を採用したのは、「がぶ飲みスタイルのワインバルがあれだけ流行るのなら、日本酒も同様に敷居の高さを下げればもっと親しんでもらえるのではないか?」と考えたことによるもの。すべて1杯ワンコインという手頃さを打ち出すことで、仕事帰りに軽く寄って2~3杯楽しんでもらう利用を狙う。もちろん1合売りの2/3の量のため、種類をいろいろ楽しむことができる。さらに、日本酒だけでなくビール、焼酎、果実酒など、その他すべてのドリンクをワンコインにしているのも特徴だ。ただし、ドリンクによっては原価率の低いものもある。そこで、酎ハイ、サワー、ハイボール、ソフトドリンクは「中(500ml)」「大(800ml)」とサイズを2種用意し、どちらか好きな方を選べるようにして客に損した気分を与えないよう配慮している。 料理も日本酒との相性を第一に考え、日替わりで50種ほど揃える。常時4~5種揃えた刺身は、すべて4切れ付けにしてワンコインで提供。また醤油ではなく、「石カレイ」には塩とすだち、「ブリ」には柚子ポン酢というように、それぞれの素材に合わせて最適な味を添えて供する。刺身は盛り合わせの「おまかせ3点盛り」(1029円)も人気が高い。メニューは基本的に毎日内容が異なるが、例えば「きんぴら」「ひじき」「シラスおろし」(各315円)などの手頃なものから、「サバ一夜干し」「金目鯛一夜干し」(各714円)、「美桜鶏一夜干し」(1029円)などの一夜干し。「12品目ちりめんおにぎり」(210円)、「チャンジャTKG」(609円)などの食事メニューまで、オーソドックスな内容のものを中心に構成しており、原価率は35%に。 経営者の舟木氏はイタリア料理店で8年間修業を積んだ後に、創作料理店、すし店と勤めて料理の幅を広げ、「てっぺん」を経て独立。1店舗目のワインバル業態に続いて今回は日本酒業態に挑戦。立地は決して三軒茶屋にこだわったわけではなかったが、確実に成功させたいとの思いで目が行き届く距離で物件を探したところ、運よく近場の店舗が見つかったのである。常連客の中には両店を行き来する人もいて、客層はともに30代後半から50代と高めに。「WINE&BAR TEPPEN」が損益分岐点300万円で月商360万円を上げるのに対し、「富成喜笑店」は損益分岐点260万円で目標月商400万円を掲げる。この2店舗を確実なものにしながら、さらに3店舗目の出店と夢は膨らむ。 舟木氏は自らのことを「利き酒師のように詳しくはないが、おいしい日本酒は知っている」と捉えており、「富成喜笑店」の開業にあたっては敷居を下げた親しみやすさと同時に、日本酒の提供方法にもとことんこだわって突き詰めるつもりでいたという。だが、売り方の参考となるこだわりの日本酒の店に足を運んで構想を練るうちに、親しみやすさと専門性という相反する要素を融合させることへの気負いからか、自らのやりたいことがなかなか定まらずに頭を悩ませていた。そうしたある日、もっとシンプルな売り方でもいいかなと開き直ったところ一気に気持ちが楽になり、客との距離感の近さを生かしながらそのつど最適な楽しみ方を提案する売り方へ方向転換。それまで「富成喜笑店」の前に付けていたサブ店名の「和酒道」も止め、新たに「日本酒バル」と命名したのである。 日本酒もワインも知識があればあるほどより深くその魅力を楽しめる酒だが、それと同じくらいたとえ知識がなくてもそのおいしさを十分に味わえる酒でもある。親しみやすい売り方の採用で間口を広げ、専門的な持ち味を適宜提案することで客とともに成長していく。日本酒の魅力を深く掘り下げる一方で、誰もが楽しめる日本酒の店を目指す同店の試みは、まさに「深化」「進化」という2つの“しんか”を追い求める新たな可能性へのチャレンジでもある。「日本酒バル」という新たな業態の確立が成功した時、日本酒はいままでよりももっと身近な存在として客の前に登場することだろう。そんな同店の奮闘ぶりから、いま目が離せない。

店舗データ

店名 日本酒バル 富成喜笑店
住所 東京都世田谷区三軒茶屋2-9-15
TCK三軒茶屋ビルB1階

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アクセス 東急線三軒茶屋駅より徒歩3分
電話 03-5787-6302
営業時間 月曜〜土曜18:00〜翌2:00(L.O.翌1:00)
日曜18:00〜24:00(L.O.23:00)
定休日 無休
坪数客数 16坪・30席
客単価 2800円
運営会社 ツイテルカンパニー株式会社
関連ページ ワインバール テッペン(記事)
※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報は店舗にご確認ください。

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