三軒茶屋の栄通り商店街を抜けた住宅街へ続くバス通りに面した、1階路面に小さなテラス席が見える。赤い屋根が目印の和フレンチの店、「レストラン 愛と胃袋」が9月7日にオープンした。オーナーでもある鈴木信作氏(つくるめぐみ代表)は、生粋の料理人。15歳で料理人になろうと、名古屋の割烹料理屋にて住み込みで5年勤め、21歳で上京。渋谷の創作和食料理の後、8年前に表参道の「レストランJ」でフレンチを学んだ。その後全国のうまいもの交流サロン「なみへい」で料理長を務め、日本全国の食材を扱うようになり、ここでの経験を生かしての独立となった。「日本のおいしいとやさしいをテーブルから」というコンセプトを元に店づくりがされている。ネーミングもかなりのインパクトだが「どちらも人間に必要なものの究極。胃袋だけでも愛だけでも人は生きていけないし、その両方がありたいとの思いからつけた」と、共同オーナーであり、鈴木氏の妻でもあるフリーの編集者、恵海さんが名付け親。内装は、「ユニバーサルレストラン」をテーマに作られ、子供連れの客や車いすユーザーなどの客に配慮している。エントランスは、ベビーカーや車いすでそのまま入れるスロープを設置し、化粧室の扉は、バリアフリーの引き戸。さらに、おむつ交換台や手すり設置されている配慮ぶりは、個人店のレストランには珍しい。居抜きの物件ではあったが、この造作のために8割は改装したという。インテリアはウッディな落ち着いた雰囲気。三軒茶屋の住宅地に近い立地から、「老若男女どんな方にも、特に、ご年配の方にも来てもらいたかったので、アンティーク家具などを使いながらも、やりすぎないアンティークを意識した」と恵海さん。料理は鈴木さんの和食とフレンチの経験を生かした、オリジナルの「和フレンチ」と呼ぶ創作料理。食材の98%は日本のものを使う事を目標に、全国から取り寄せた食材のメニューが並ぶ。例えば、レモンを混ぜた餌を食べて育つ「岩城島産のレモンポーク」は半頭買いをしているので日によって調理法が変わる。あるいは、日本産のチーズとしては有名で、日本中から研修希望者の絶えない、「北海道・共同学舎新得農場」から取り寄せた「日本のチーズの盛り合わせ」(1000円)もお薦めしたいメニューだ。そのほか、ワインにも日本酒にも合うという「潮かつおを甘酢で」(600円)、小麦粉でできた細い麺状の衣“カダイフ”をあしらった「鳥の巣カニクリームコロッケ」(600円)はバルサミコソースでいただく。全国から取り寄せた野菜をふんだんに使った自家製味噌ソースの「大地の恵みバーニャカウダ」(1200円)はオーナーの“一番の押し”という。福祉施設からの食材なども取り入れているが、福祉のものだから使っているのではなく、商品としての競争力があるから使っているそうだ。「食べてもらったら、その良さはわかってもらえる」と鈴木シェフは言う。ドリンクメニューのコンセプトも日本産のワインと日本酒がベース。グラスワインは600円から、ボトルワインは3500円から取り揃えている。スパークリングワインは福島県新鶴地区で作られたシャルドネ「新鶴のあわ」(ボトル4500円、グラス700円)、また、オレンジにも近い褐色がかった黄色の色合いの甲州ブドウから作られた「甲州グリ・ド・グリ」(5500円)は、和フレンチの料理にも良く合う。フレンチでも日本酒が飲めるように、ワイングラスで提供し、日本酒とのマリアージュを楽しむ客も多いという。「格好つけて気張るのではなく、美味しい食事と美味しい空間をカジュアルに楽しんでもらえるお客様が、ここ三軒茶屋で増えたら」との願いを込め、子供連れだからとレストランを制限されてしまうファミリー層にも安心して利用してもらいたいと配慮や工夫を重ねた。地元に根付いた店を作り上げていく鈴木氏の今後の活躍に期待したい。
店舗データ
店名 | レストラン愛と胃袋 |
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住所 | 東京都世田谷区太子堂1-15-13 トキワヤビル1階 |
アクセス | 東急田園都市線 三軒茶屋駅より徒歩7分 |
電話 | 03-3411-1296 |
営業時間 | 平日11:30~14:00、18:00~23:00 土日祝12:00~14:00、17:00~22:00 |
定休日 | 月曜 |
坪数客数 | 14坪・20席 |
客単価 | 4500円 |