東京メトロ上野末広町駅と湯島駅の間。春日通りから一歩、路地を入ると、割烹やスナックが軒を連ねた、昭和の面影が色濃く残る景色が広がる。この一帯は文京区湯島となるが、以前は名高い花柳界であったという。そんな横丁の一本が「おばけ横丁」と呼ばれる通りだ。このインパクトのある名前は、かつてこの辺りに芸者さんの置屋が多かったことに由来する。昼間は素顔のおねえさん達が、夜になるとお化粧をして綺麗に装い変身してお座敷に向かう様から、いつの間にかそう呼ばれるようになったという。そんな風情ある名前の通りに今年はじめの1月11日にオープンした「おばけ横丁のあおもり湯島」は、その店名のとおり、青森県に由来した店である。青森県産の旬の食材活かした創作料理とワイン、青森産の日本酒を楽しむ店で、せんべい汁の冷めない距離にある青森の本格郷土料理「あおもり湯島」の2号店となる。1号店となる本店を二人の友人と共に立ち上げ、店を仕切る蔦林直樹氏は青森県出身。
蔦林氏は、都内ホテルにてバーテンダーとして修行後、故郷の青森は八戸に戻り、「タイ料理屋を皮切りに台湾茶カフェ、モロッコフレンチなど5店舗を経営していた」と語る。しかし、そんな順調な中で「東京で、一からチャレンジしたい」との思いから、店を当時の店長に譲り、再上京。憧れであった長谷川耕造氏率いるグローバルダイニングへ入社。モンスーンカフェを経た後、自ら手を上げ、青森での経験を活かし、本社でメニュー開発を担当していたという。そして再び、「新たなチャレンジを求めて、昔からの仲間と湯島で開業した」そうだ。
「おばけ横丁のあおもり湯島」は蔦林氏のワイン好きが高じたこともあるが、「本店が人気となり、満席で入れないお客様のための店であり、一人で立ち寄れる店」と位置づけ、カウンター席を中心とした店の設えにした。
こちらのお店、当然ながら料理のメニューはあるのだが、蔦林氏は「メニューは、青森県から届く食材を見てから考えるので、毎日変わります。ぜひ、お任せで楽しんで欲しいのです」と話す。実際、訪れる客のほとんどが、お任せオーダーという。「希望の金額、お腹の状態、好き嫌いの希望などを聞き、お客様に合わせて出させていただきます」と話すように、客とのコミュニケーションを大事にするためにもカウンター中心なのだ。そんなお任せスタイルであるが、おすすめは定番人気料理の「いかのがっぱり焼き」(1100円)。基本は青森の郷土料理でスルメイカのワタ焼き。しかしここからがオリジナル。残った煮汁にバターライスを入れ、パエリア鍋で仕上げるのだ。南部せんべいをベースにした「南部せんべいのピザ」(700円)もおすすめでワインによく合う。郷土の青森料理にオリジナリティを加えた創作料理も多く、人気が高い。本店との距離が近いため、本場青森料理の出前もできる。逆に本店からのオーダーもあることも。
ドリンクはワインを主体とし、13~15種類で価格は2900円と3900円。日本酒は当然ながら青森産にこだわる。「津軽じょっぱり」をはじめ「八鶴/無ろ過生」といったレアな日本酒も一合500円から揃える。
珍しい青森産の焼酎「津軽海峡/米」「やってまれ/つくね芋」(G500円B3000円)、地ビール「津軽路ビール」(900円)も置く。日本酒と濃厚なリンゴ果汁黒酢をミックスしたテキーラならぬ「青森キテーラ」(700円)。「青森が一番キテる」という意味だとか。ノンアルコールのりんごスパークリングジュースを「そと」に日本酒を「なか」にしたホッピー風の「アオッピー」(700円)。郷土の食材を使ったユニークで独創的ドリンクからも青森への思いが伺える。
「おばけ横丁」は遊び方も熟知した大人の街という。実際、客層もミドル世代以上のシニア世代が中心で、社会的な地位もある人が多いとか。そんな昔ながらの粋が残り、人情の厚い街に魅了された蔦林氏。「今後も、おばけ横丁、湯島で巡り会う、人と人の繋がりを大事にしていきたい」語る。そして「店は人間力であり、人材こそが最大のメニュー」とグローバル譲りのコミュニケーションマインドで今日も店を盛り上げる。
店舗データ
店名 | おばけ横丁のあおもり湯島 |
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住所 | 東京都文京区湯島3-37-9 黒島ビル1F |
アクセス | 地下鉄 上野広小路駅より徒歩3分、湯島駅より徒歩2分 |
電話 | 03-6806-0159 |
営業時間 | ランチ11:30~13:00、ディナー17:30~深夜 |
定休日 | 日・祝 |
坪数客数 | 9坪・15席 |
客単価 | 4500円 |