大箱店が“冬の時代”を迎えている昨今、なかなか借り手が見つからずに家賃も値下がり傾向にあるとはいえ、リスクを考えるとそう簡単には大箱物件に手が出せないというのが一般的な飲食店の常識である。そうした中、荻窪の人通りの寂しい路地裏の大箱店舗に“2.5業態”の店を出店し、新しいビジネスモデルにチャレンジしているのがティー・カンパニー(東京都国分寺市、代表取締役・月田 賢氏)だ。同社が東京 荻窪の57坪の物件に開いた“2.5業態”とは、「居酒屋 彦べえ 荻窪店」「オギクボバル」「餃子お持ち帰り専門 ミムラ」の3店舗だ。店舗左側を「居酒屋 彦べえ 荻窪店」として営業し、その右側を「オギクボバル」に。そして、中央に「餃子お持ち帰り専門 ミムラ」の看板を掲げ、「彦べえ」の店舗の一部を“間借り”する形で餃子の焼き場と売り場を設ける。餃子は「彦べえ」のメニューとしても販売しており、同社がこの店舗を“2.5業態”と謳うのはこのためである。客層は「彦べえ」が30~40代中心で、一方の「オギクボバル」は20~30代と「彦べえ」よりも若く、男女比はともに半々だ。57坪の店舗のうち3分の1が厨房スペースで、残り3分の2のうちの7割が「彦べえ」、3割が「オギクボバル」で、入口は別々に設けている。 飲食店の出店に当たってもっとも費用のかかる厨房を兼用することでコストダウンを図り、さらにトイレも共有している。厨房が店舗の3分の1と広めではあるものの、「彦べえ」85席、「オギクボバル」43席の計128席分の客の料理を作らなければならないため、オペレーション面を考えてメニューを構成する。まず、「彦べえ」ではお客自身が卓上の鉄板で焼く“焼肉”を売り物として採用。牛、豚、鶏の3種の肉を揃え、牛は「丸腸」「小腸」「シビレ」「レバー」「ハラミ」(各490円)、豚は「しろころ」「かしら」「たん」「豚ばら」「どーなつ」(各390円)、鶏は「もも肉」「せせり」「ぼんじり」「なんこつ」「ささみ」(各390円)の15種のラインナップに。よりオペレーションを簡素化するためにこれらを盛り合わせたおまかせの3種盛り(牛は1290円、豚・鶏は各990円)も開発し、おすすめメニューとして提供している。こうした素材型メニューを主軸に据えながら、その他のメニューで脇を固めてさらにバリエーションアップを図っているのだ。また、「オギクボバル」では「自慢のカルパッチョ」(700円)、「きまぐれアヒージョ」(500円~)、「自家製イワシの酢漬け」(500円)、「フィッシュ&チップス」(600円)など、バルならではのメニューで客を楽しませている。客の中には両店をハシゴする人もいるなど、地域の幅広い利用スタイルに柔軟に対応することで、路地裏の大箱店という難しい条件下での集客を可能にしている。目標月商は「彦べえ」が700万円で、「オギクボバル」が500万円。大箱物件が出やすい時代だけに、はたして新しいビジネスモデルとして定着するのか?同社の意欲的な試みには、大いに注目が集まるところだ。
店舗データ
店名 | 居酒屋 彦べえ 荻窪店 |
---|---|
住所 | 東京都杉並区上荻1-18-3 |
アクセス | JR荻窪駅より徒歩2分 |
電話 | 03-6796-9529 |
営業時間 | 17:00~翌1:00(L.O.24:00) |
定休日 | 無休 |
坪数客数 | 57坪(オギクボバルと併せて)・85席 |
客単価 | 3500円 |
運営会社 | 有限会社ティー・カンパニー |
関連リンク | 彦べえ(ぐるなび) |