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【RT_Meetup連動企画】コロナ禍で飲食店を支えた、飲食店の先払いサービス「ごちめし」に見る「恩送り」の概念が、飲食店支援サービスに革命を起こす⁉

ユーザーが飲食代と手数料10%を支払い、誰かにご馳走できるアプリ「ごちめし」。飲食店は加盟すれば店側の負担なく来店が促進されるサービスだ。2019年10月に正式リリースされ、現在、加盟店舗は約1万4000店、想定ユーザー数は7万人に成長。コロナ禍では「ごちめし」の仕組みを利用し、応援したい店に先払いをする「さきめし」を打ち出し多くの飲食店を支援した。仕掛け人は音楽プロデューサーの今井了介氏。「これまでの飲食関連サービスは、店舗側に負担をさせて送客するというものがほとんど。そうではなく“恩送り”の概念で、お客様側が手数料を負担し、店側に余力を残す仕組みこそが、新しい価値を生み出すのではないか」と語る。異業種ならではの今井氏の視点に迫る。



■「ごちめし」とは
Gigiが運営する、アプリを通じて、ご馳走したい人が飲食代と手数料10%を支払うことで飲食店の食事を誰かにご馳走できるサービス。ご馳走する相手は、例えば「感謝の気持ちを伝えたい友人」のような特定の人へはもちろん、「お腹を空かせた地域の子供ども」といった不特定の人でも可能だ。感謝や応援などの気持ちを、ITの力によってスマートかつスピーディーに届ける“恩送り”のサービスとして注目を集めている。
https://gochimeshi.com/

ごちめしアプリダウンロード
AppStore
Google Play Store


■Gigi代表取締役:今井了介氏
安室奈美恵「Hero」や、TEE/シェネル「Baby I Love You」などを手掛け、世界的に活躍する音楽プロデューサー。2018年9月、Gigiを設立。2019年10月、「ごちめし」をリリース。

東日本大震災を機に食の領域に関心。帯広の食堂「結」の先払いサービスをインスパイア

―音楽プロデューサーとして活躍している今井さんが、飲食店向けサービスを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

長年、音楽プロデューサーとして活動する中で、2011年の東日本大震災をきっかけに、食の事業をやりたいと思うようになりました。当時、東北を中心に多くの人が苦しむ中、自分も何か助けになりたいと思っていましたが、まず被災した方々が最初に求めたのは温かい食事だったり、雨風をしのげる住まいだったり、最低限の衣食住の確保でした。音楽の仕事は人に感動を与えられるとやりがいを感じていましたが、音楽のようなエンタメは最低限の衣食住が足りてこそ楽しめるものだと気づき、その時は無力感でいっぱいでした。このような非常時に人の役に立てるよう、食の領域で何かしたいという思いが芽生えました。

かといって、素人である自分がいきなり飲食店を開業するのもリスクが高すぎる。しばらく、自分にできることは何だろうかと思いあぐねていたとき、北海道の帯広にある「結(ゆい)」という食堂がやっている「ゴチメシ」という取り組みを紹介する記事を目にしました。「結」は、もともと東京で建築関係の仕事をしていた店主の本間辰郎さんが、地元である帯広の豊かな食材を食べてほしいという思いでオープンされたお店です。コンビニやファストフードなど便利な反面、画一的な食事があふれる中で、地元で採れる栄養のある美味しい素材を、特に食べ盛りの子供たちに食べてほしいと思っていたということです。

しかし、子供たちは限られたお小遣いのやり繰りでどうしてもコンビニやファストフードに走ってしまう。それならばと考えたのが「ゴチメシ」という仕組みでした。店で食事をした人が、飲食代よりも余分にお金を置いていき、その金額分で誰かの食事を無料で提供できるというもの。店頭には、その時点で集まった「ゴチメシ」で、何を何個、無料で提供できるのかを書いたボードを置いておき、それを見た地元の高校生達が「無料なら……」と食事をしていくわけです。このシステムはもともとイタリアでホームレスや次のお客様に1杯のコーヒーをご馳走する「サスペンデッド(保留)コーヒー」という取り組みからインスパイアを受けて始めたそうです。

私は「これだ!」と思い、帯広まで本間さんに会いに行きました。この取り組みに感銘を受けたこと、そして、この取り組みをWEBによって効率化し、より多くの人に広めたいということを伝えました。本間さんも賛同していただき、サービス名は平仮名で「ごちめし」と名付けて事業として展開することになりました。2018年9月にGigiを立ち上げ、1年にわたってサービスを構想、2019年10月に「ごちめし」を正式リリースしました。

店ではなくユーザー側が手数料を負担する、常識破りの仕組みに

―このサービスで最も特筆すべき点は何でしょうか?

「ごちめし」では、店側の手数料負担が一切ないことが特徴です。ご馳走する側が支払う手数料によってサービスを運営しています。ですので、飲食店は「ごちめし」対象店として加盟するだけで、一切の費用負担なく集客につなげることができます。

―確かに飲食店側に負担がないのは嬉しいですが、手数料10%を払ってまで、他人にご馳走したい人はそこまで多いのでしょうか?ビジネスとして成り立たせるのに不安はなかったのでしょうか?

確かに、創業当初は多くの人からそういった意見をいただきました。「数%だけでも、店側からも手数料を取った方がいい」というアドバイスも。ただ、飲食関連サービスを見渡したとき、多くのサービスは店側が料金を負担するものばかり。私はそこに違和感があったんです。グルメサイトなどは店が掲載料を支払う代わりに送客してもらうシステムで、店からすれば儲けの少ない状況でお客様をもてなすことになる。他のお客様とサービス内容に差がつくこともあるだろうし、店側のモチベーションも上がらない。逆に、例えばタクシーでしたら、自分が配車する場合、その手数料はタクシー会社ではなく乗客が支払いますよね。飲食業との関りがまだ浅い私だからこそ、あらゆるサービスの手数料を店側が負担することを当たり前のように受け入れている飲食業界は特殊に見えました。

そこで、たくさんの飲食関連サービスがある中で、ひとつくらい、お客様側が手数料を支払うサービスがあってもいいのではと考え、そんな発想から「ごちめし」はできています。店の負担がなければ余力ができ、よりよいサービスを提供できる。そこからリピーターになる可能性だってあるわけです。

私は、これからのビジネスでは「一歩引くこと」が大事になってくるのではないかと思うのです。今、しきりに叫ばれる「持続可能な社会」や「SDGs」というキーワードを考えても、この発想は必要だと思います。少し大きな例えになりますが、SDGsの項目のひとつ、気候変動問題の対策で、私達は二酸化炭素の排出量を減らす努力をしてくべきなのですが、今まで二酸化炭素を多く排出してきたのは先進国ですから、当然、まず先進国が先んじて二酸化炭素の排出を抑える行動をとらなければならない。今まで先進国が多くの二酸化炭素を出しておきながら、これから経済成長をする新興国に対して「二酸化炭素の排出は抑えてね」というのは違うと思うんです。

先に相手に負担させてからこちらが何かを返すのではなく、先に一歩引いて、こちらが進んで負担をすることで、後から大きなリターンが返ってくる。今後、世の中ではこうした「恩送り」に基づいたサービスが求められており、飲食業界も例外ではないと思います。

コロナ禍で飲食店を支援。ユーザー・加盟店数は一気に増加

―実際に「ごちめし」をリリースし、反響はいかがでしたか?

リリースから約1年、多くの人から「ごちめし」は評価をいただき、ユーザー数や加盟店舗を大きく増やすことができました。例えば友人にちょっとしたお礼をしたいときに「ごちめし」で食事代を送ったり、「こども食堂」のように地域の子ども達への食事代を支払ったりというように、様々な使い方がされています。

奇しくもリリース直後の2020年初頭、コロナで飲食店がピンチに見舞われました。「ごちめし」ローンチ当初はじわじわとサービスを広めていく予定でしたが、「さきめし」を打ち出したことで一気に加盟店・ユーザー数が拡大しました。「さきめし」は「ごちめし」の仕組みを利用し、コロナ禍で集客がままならない店に自分あてに食事を先払いし、飲食店にお金を送るとともに「コロナが落ち着いたら食べに行きます」という応援の気持ちを表現できるサービス。2020年2月末で250店舗ほどだった加盟店は5月末には4700店舗ほどになり、それに共感していただいたサントリーから協賛を受けた現在では1万4000店舗が登録されています。

※さきめし
https://www.sakimeshi.com/

「ごちめし」や「さきめし」で、飲食店に喜ばれたのはもちろん、ユーザーからも「支援したい気持ちがあってもどうしたらいいかわからなかったが、『ごちめし』を使って支援することができた」との声をいただいています。

「ごちめし」では、随時、行政や商工会、企業やコミュニティーなどとコラボした企画を打ち出しているほか、最近では「ごちめし」の仕組みを利用して、企業が社食替わりに従業員に飲食代を渡す福利厚生サービスの「びずめし」もリリースしています。また、私がファウンダーとして参画しているチップサービス「ごちっぷ」も始まりました。いずれも基本的には「ごちめし」と同じ着想。「ごちめし」を通じて、感謝や応援などのポジティブな気持ちを気軽に伝えられる世界を作っていきたいと思います。

―ありがとうございました。

(取材=大関 まなみ)

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