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20代のIT出身者が立ち上げたゴーストレストラン、直営5店舗&全国46拠点のFCを展開する「デリステーション」とは?

タイ料理や和食、薬膳スープなど複数業態を1つのキッチンで製造しデリバリー中心で販売するゴーストレストランブランドの「デリステーション」。中野に2店舗と、幡ヶ谷、武蔵境、住吉にある直営店に加えて、全国46拠点の飲食店やビジネスホテルの厨房を使ったフランチャイズ店も展開する。直営の中野店では8坪のキッチンで月商400万円。現在、展開する25業態のうち100万円越え業態を7つ擁する、気鋭のゴーストレストランだ。運営は合同会社Wiaas(以下、Wiaas)、代表はIT業界出身で現在28歳の盛永哲志氏。世界を代表するフードテックカンパニーを目指すというビジョンを掲げ、ゴーストレストランを社会インフラ化するというミッションに取り組む同社の戦略に迫る。



盛永哲志氏
Wiaas代表。1992年生まれ。立命館大学大学院MOTを卒業後、2016年4月に新日鉄住金ソリューションズに入社。システムエンジニアとして勤務する傍ら、民泊ビジネスや飲食店の経営を行う。その後、2019年2月にITスタートアップのデータサイエンスプロフェッショナルズに転職し、宅配型レンタル倉庫システム「Sharekura」のサービス立ち上げに携わる。2019年6月にWiaasを創業し、インバウンド向けの洋服レンタルサービス「Kitemee」など、いくつかの事業を企画・運営。現在はゴーストレストラン事業を中心に展開する。

会社勤めの傍ら飲食店を開業。イートイン不振でもデリバリーに勝機を見出す

―盛永さんの経歴、そしてゴーストレストランを始めるきっかけを教えてください。

大学院を卒業後、新卒で新日鉄住金ソリューションズに入社しました。そこではシステムエンジニアとして働いていたのですが、同時に個人事業主として民泊ビジネスを行っていました。学生時代に海外留学やバックパックで旅をした経験から、将来は海外で展開できるビジネスをしたいと考えていたからです。結局、民泊は法改正により閉じることになってしまったのですが、その時にできた不動産業者とのつながりから、武蔵境にある居抜きの飲食物件を紹介されました。会社勤めをしながらオーナーとして飲食店をやろうと考え、僕は料理ができないのでシェフとなってくれる人を探し、タイ料理の料理人だった知人の兄とともに店をオープン。2018年5月のことでした。

―営業状況はいかがでしたか?

当初はかなり苦戦しました。というのも、駅から徒歩15分で店をやるには難しい立地だったんです。近くに大学があったので、リーズナブルな価格設定にして学生を集客できれば……と考えていたのですが、甘かった。と、同時にオープンして1か月後からデリバリーにも着手していました。当時はまだ今ほどデリバリーが普及していませんでしたが、出前館に登録し自社配送で販売を始めました。もともとマーケティングを学んでいたことから、データを収集して分析することは得意。デリバリーは店内飲食に比べてデータが溜まりやすく、お客様の反応や販売データを見ながら試行錯誤を繰り返して売上を伸ばしていきました。コスパの高さも評価され、やがて出前館の人気店ランキングでは武蔵野市内で2位になったときには、大きな手ごたえを感じました。

―会社勤めと同時並行で続けていたのですか?

はい、その間ですが、新卒入社した新日鉄住金ソリューションズは3年弱で退職し、ITスタートアップに転職。AIを使った宅配型のレンタル倉庫のサービス開発に携わる中で、事業展開のやり方を学んだことで自信がつき、2019年6月、Wiaasを創業しました。インバウンド向けの洋服レンタルサービス「Kitemee」をはじめ、民泊関連など複数の事業を立ち上げ、飲食店経営と同時並行で展開していました。

―複数の事業を行う中で、ゴーストレストランに振り切った理由は?

武蔵境のデリバリー販売が軌道に乗り、新たな拠点を探していたところ、中野のバー居抜き物件に巡り合い、2020年1月、テイクアウトとデリバリー専門のゴーストレストランとして営業を開始しました。初期費用をなるべく抑えてリスクを低く開業したいと考えていたのでデリバリー中心にし、内装外装もこだわらずにスピード開業を目指しました。また、空いているスペースは間貸して賃料を得ることでランニングのコストも抑えるモデルを実現しました。

そして世の中に新型コロナの影響が出始めた2020年春頃、インバウンドの需要が見込めなくなったこと、一方でフードデリバリーの需要は拡大したことを受け、インバウンド向けのサービスは停止し、ゴーストレストラン事業に注力するよう方針を転換しました。
 
(バーの居抜きでデリバリー中心に営業する「デリステーション」中野店)

これを機に、それまではタイ料理の業態だけでしたが、それ以外のジャンルの業態も増やしていきました。また、武蔵境、中野に続いて幡ヶ谷にも拠点を増やし、1駅に拠点1つを目指し、“配達員も地域のお客様もたくさん集まる場になる”というコンセプトで「デリステーション」と命名。最近では中野にもう一か所と住吉にも拠点を構え、計5拠点の「デリステーション」があります。加えて、開発した複数のゴーストレストラン業態をパッケージ化し、フランチャイズ展開を開始しました。現在は全国46拠点にフランチャイズ店を広げています。加盟金ゼロで居酒屋やビジネスホテルの厨房の空きスペースや空き時間を使って、ニーズに応じた最適な業態でゴーストレストランを営業してもらっています。

―売上は?

直営の中野1号店では8坪のキッチンで7業態を営業し、月に400万円を売り上げます。うちタイ料理業態の「ヒウマイ」はじめ2業態は月商100万円を超える人気業態に成長しました。業態作りでは「ヒウマイ」のように月商100万円を売れること目標にしており、売れ行きを見ながら、常に業態の入れ替えを行っています。最近、UberEatsでは新規で出店する場合、1拠点で出店できる業態の数に制限ができてしまったので、拠点ごとで違う業態を開発・運営しながら業態を増やしています。2020年の末には、同じゴーストレストラン事業を展開する合同会社OFUZARIPPUと経営統合したこともあり、この1年間でゴーストレストランブランドは25業態、100万円越え業態は7つになりました。


(月商100万円を売るタイ料理業態「ヒウマイ」イメージ)

流行りものの「二番煎じ」ではなく、シェフのアイディアを生かした業態開発が身上

―どのように業態開発を行っていますか?

僕は飲食出身ではないので、料理人や様々なバックグラウンドをもつ人たちとコラボし、彼らの個性やストーリーを大事にして業態開発をしています。業態開発は主に二つの軸で、「データ分析を起点した開発」と「シェフ起点の開発」に取り組んできましたが、結果としてゴーストレストランの価値は、商品や業態の「個性」にフォーカスすることだと感じたので、主に「シェフ起点の開発」を中心にした戦略に行き着きました。結局、データを見て「流行っているもの」を作っても、誰かの二番煎じになってしまう。それよりも、シェフのクリエイティビティを生かし、世の中にまだないものを生み出し、新たな可能性を切り開くのがゴーストレストランの本質的な価値になるなと。ただし、お客様の求めるニーズを満たすことも大前提。デリバリーにおける業態開発のカギは、商圏の3、4キロに住むユーザーをよく理解することだと思っています。そのためのデータは重要だと捉えています。

毎月2~3業態を常に開発していますが、飲食以外の他業種とコラボしたり、地方の農家と提携したり、売上や認知度を上げたい店舗と組んだり、様々な方と協業できる仕組みを作り上げていることがコアコンピタンスになっています。

(取材時、中野店で営業していた業態ラインナップ。人気のものを残し、業態は売れ行きを見ながら入れ替えていく)

―ほか、デリバリーで売れる秘訣はありますか?

細かい戦術は色々とありますが、ひとつ言えるのは、ストーリーのあるブランドは強いということです。デリバリーは新規客の取り込み以上に、リピーターの獲得が肝になります。ストーリー性のある商品はファンが生まれやすく、リピートにつながりやすい。シェフのバックグラウンドだったり、商品が生まれた経緯だったり、そこにあるストーリーとしての面白さは大きな価値になります。

お客様と直接対面できないデリバリーだからこそ、ストーリーの伝え方には工夫が必要で、商品に同封するチラシやパッケージに書き込むメッセージやSNSの発信など、できることからストーリーを伝えていくことがファンの獲得につながると考えています。

目指すのは「食のiTunes」的サービス。ワンクリックで誰でも飲食店を開業できる仕組みを

―今後の展望は?

20年以上先になると思いますが、長期的な目標としては「食のiTunes」的な食のマーケットプレイスを作りたいと思っていて。iTunesは、好きな音楽や映像をワンクリックで購入できるプラットフォーム。それをゴーストレストランに応用したいと考えていて、レシピもしくはゴーストレストランブランドをマーケットプレイス化し、IOTやハードウェアも絡めて、誰でも簡単に、ワンクリックで世界中の好きな場所で飲食店の出店ができるようなプラットフォームを整えたいと考えています。

―そのアイディアのきっかけは?

今では飲食業界ではお馴染みのPOSシステムですが、POSシステムは、それがなかった時代からすると革新的なものだった。POSがあったからこそ、各店舗の売上・販売管理ができるようになり、すかいらーくグループのような大型チェーンシステムができあがったという話を聞いたとき、感銘を受けました。システムができたことで、新たな企業が生まれる土壌が整う。今はデリバリーがそのシステムであり、すなわち今が次世代の企業が生まれるタイミングなので、その先駆者になりたいと思っています。また、もともと世界のマーケットに出ていきたいという思いがあったので、その点でも食はチャンスが大きい領域だと感じています。

目下、今年中にあとキッチンを3拠点ほど増やし、フランチャイズ店も200店舗ほど増やして、月商100万円を超えるヒット業態もあと30業態は作るのが目標。業態のバリエーションを増やすことで、フランチャイズ展開の際も加盟店のエリアのマーケット特性に合わせた最適な業態を提案できるようになり、よりメリットの大きなフランチャイズのパッケージにできる。加えて、加盟店へのフォローアップやOEM化などによる現場負荷の低減にも力を入れていきます。

ゴーストレストランは、飲食業界の利益構造や働き方に新たな可能性を与える手段だと思っています。そんなゴーストレストランを社会インフラ化し、世界を代表するフードテックカンパニーを目指します。

―ありがとうございました!

(取材=大関 まなみ)

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