小規模店を大手が大胆にインスパイヤ…!?
12月6日、新橋に「すきはな 新橋銀座口店」がオープンしました。なんでも、和牛・国産牛のみを使用し、あえて野菜を入れずに肉の美味しさを味わうすき焼き専門店で、ペッパーフードサービス一ノ瀬社長の肝いりの新業態だそう。このコンセプトを聞いて真っ先に思い浮かべたのは渋谷と江ノ島にある「すき焼き ちかよ」です。同店のすき焼きも、野菜などの具材を入れずに肉のみをシンプルに調理したすき焼きをウリにしています。2店舗規模の業態を大手が大胆にインスパイヤするとは……。
本コラムでも以前に「ファスト高級店」の一例として「ちかよ」を紹介しました。ファスト高級店とは、高級店の料理のキモとなる部分のみを抽出し、それを短時間・低価格でファストフードのように楽しめる業態で、こうしたものがこれから増えてくるのでは?という提案でした。
実際に「すきはな」を体験してみました。まずは肉を「国産牛」(1980円)「黒毛和牛」(2530円)「本日の特選和牛」(3850円)の3種類からチョイスします。肉が用意され、スタッフが目の前の鍋でザラメと醤油を使ってすき焼きを焼いてくれます。それ以外にはごはんと味噌汁、生卵、お新香と食後のソフトクリームのみ。ごはんは1回おかわり可能。本当に野菜や豆腐、しらたきといったすき焼き定番の具材はありません。すき焼きのいいところだけを抽出した食体験がこの店のウリです。
「量が少ない」「コスパ悪い」はお門違い?
この「すきはな」は早速ネットでもやや炎上ぎみに話題になっており、価格は1980~3850円に対して薄切りの肉が2枚のみであることや、野菜などの具材がないことで「量が少なすぎる」「コスパが悪い」という意見がよく見られました。確かに私も食べてみて量に関しては多くはないと感じました。ただこれはターゲットの問題で「なるべく抑えた価格で満腹なりたい」という人を相手にしている業態ではないのでしょう(実際にネットで量やコスパについて批判をしている人の多くは店に行っていないようでした)。
この業態で肝になるのはインバウンド客ではないかと思います。どのくらいのインバウンド客を見込んでいるのか一ノ瀬社長に質問すると、6割ほどがインバウンドになれば、とのことでした。
日本在住者とインバウンドでは外食に対するスタンスがまるで違います。せっかく遠路はるばる旅行に来たのだから、滞在中になるべく多くの体験をしたいと思う人も多いはず。日常生活ではなく旅行なので、コスパに対する考え方も違ってきます。この「すきはな」であれば短時間でサクッと食事ができますし量が少ないので、空いた時間やお腹の余裕を別の外食体験に回すことができます。
海外の人から見て和牛は圧倒的なコンテンツ。それをファストに楽しめるこの業態が海外の人にどこまで受け入れられるのかがこの業態の命運を握っているのでしょう。この業態は急速展開する予定はないようですが、今後の動向に注目したいところです。