新・編集長コラム

飲食人手不足時代、若手が「働きたい」と集まる店は「レベニューシェア」と「多彩な事業展開」がカギ

人手不足に悩む飲食店が多い中、いまの若手スタッフはどんな店で働きたいと考えているのか?去る1月18日、「居酒屋ジャパン」内にて「令和の若手経営者が語るチーム論~イマドキの理想の職場ってどんな?~」と題して3人の飲食店オーナーと対談セミナーを行った。その中で見えてきた、若手が「働きたい」と集まる店の特徴についてまとめた。

PROFILE

大関 まなみ

大関 まなみ
1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月よりフードスタジアム編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100軒を取材する。


登壇したのは、志成NEXTの佐藤廉也氏、Mostfunの大崎拓実氏、「大人気」の砂田康太氏の3人

不確定性の時代で「先が見通せる」「納得できる」職場が理想?

いまの若い世代は根性がない、努力をしない、と嘆く経営者も多いが、特別いまの若手が劣っていると結論付けるのは早急だ。古くは三無主義、新人類など、いつの時代も「最近の若者は…」と言われてきたのは周知のとおり。とはいえ、生まれ育った環境により形成されたその世代ならではの性質はある。それを理解したうえで若手と接していくことが重要だ。

いまの20代半ば、いわゆるZ世代は生まれた時にはバブル崩壊で不景気が続き、アメリカの同時多発テロや東日本大震災など、たくさんの不測の出来事を経験してきた世代と言える。終身雇用や年功序列が約束され、高度経済成長に働き盛りだった世代と比べて、「将来は何が起こるかわからない」という不安にさいなまれている。

独立を目指すなら若い頃はがむしゃらに努力することも必要で、自分はそうしてきたからこそ独立して成功した――という飲食店オーナーもいるかもしれない。ただ、それは頑張れば成功が約束されていた時代だったという側面もある。実際に、以前と比べて独立にかかる費用は跳ね上がっているうえ、飲食トレンドはめまぐるしく変化しており競争は熾烈に。飲食店経営には、料理だけ、サービスだけ、数字管理だけできればいいという時代でなくなり、マーケティングなど様々なスキルが要求され、難易度は各段に上がっている。

「世の中、何が起こるかわからないので、頑張っても報われない可能性がある」と考える若手が働きたいと思うのは「将来が見通せる」職場だ。どこまでスキルを付ければ店長になれるのか、昇給できるのかといった評価制度が明確であること。先が見えないのに努力するのは誰にとっても難しい。それに伴い、会社の状況を社員に対して隠さず説明していることも大切だ。

セミナーの中で、恵比寿で「amme」「sqall」などを展開する志成NEXTの佐藤氏は、組織づくりにおいて「レベニューシェア」を大切にしていると話した。「レベニューシェア」とは、発注側と受注側で成果を互いに分配する成功報酬型の契約ことだが、同社では、業績に応じて会社と社員で互いに利益を分配するような給与体系だという。会社の財務も積極的に社員に開示し、現場スタッフが頑張って上げた売上がどのように配分されるのかを透明化している。そうした情報を知って“納得”してもらうことが何より働き手の安心につながっているのだろう。Z世代は効率性や合理性を重視するとも言われている。たとえ給料が高くなくても会社の財務状況を見れば納得してもらえて、むしろ「もっと頑張らなくては」と奮起することもあるかもしれない。「何が起こるかわからない」時代の中で、将来の予測がある程度つき、自分がいましている仕事に合理性を感じる状態が「イマドキの理想の職場」かもしれない。

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