この会の活動目的は、居酒屋を中心とする中小、個人経営の飲食店の開業を支援する“入り口”づくりと経営不振に苦しんでいる飲食店の再生、さらに後継者のいない老舗名店の継続支援等を行う。役員理事たちの知恵と経験を結集し、それぞれの得意技を持ち寄って“ボランティア価格”でサポートしていくという。理事長に就任したのは、IT業界から飲食業界入りし、人気串焼き店「紅とん」「備長扇屋」のチェーン化に成功し、500店舗に及ぶ飲食店を全国でプロデュースした実績をもつ山本浩喜さん。専務理事には「外食アワード2009」を授賞した“浜焼き”“横丁”の仕掛人であり、多くの再生事業を手がけてきたプロヂューサーに浜倉好宣さん。
そして、今回の全般的なスキームづくり、執行理事のキャスティングを行ったのが副理事長の佐藤吉文さん。飲食店支援のシステム会社「ジャストプランニング」元副社長で同社を上場に導いた人物。“業界人脈づくりのキーマン”である。執行理事には現役で活躍する飲食店経営者たちが15名参加した。基本的には、協会に持ち込まれた飲食店支援・再生活動をメインとするが、そのほか「各種技能検定と認定」「居酒屋優良店舗認定」「居酒屋道場の運営」「日本銘店文化遺産活動」などユニークな活動もスタートさせる。技能検定では、例えば居酒屋には欠かせない焼き鳥職人養成のための「焼き師検定」を実施する。協会が年2回の検定試験を主催し、「中級」「職人」「達人」「鉄人」などの段位を付与する。
また、居酒屋経営の実地研修の場として、「居酒屋道場」の運営を開始し、店長候補生や経営幹部候補生の育成も行う。さらに、数十年続く老舗銘店といわれる居酒屋や大衆酒場などの“遺産店舗”を協会で保存、継続していくための施策を講じる。具体的には、後継者がいなくなった銘店のレシピを引き継ぎ、協会理事のネットワークで若手経営者に引き継がせるといった活動も行う。こうした活動を重ねながら、協会が居酒屋業界の再生、発展のための土台となる組織として機能していきたいという。技能検定や各種協会認定を行うのも、「安心して行ける居酒屋という基準、モノサシをつくりたい。大手チェーンや食品メーカーは独自でISOやHACCPなどを取得できるが、中小や個店には無理。そうした店作りのレベルアップにつながる基準づくりをしていきたい」(山本理事長)からだ。
これまで、外食業界には、NPO法人の「居酒屋甲子園」や接客サービス技術を競う「サーバーグランプリ」などの組織があり、主にモチベーションアップやサービスパフォーマンスの向上という“人づくり”に重点を置いてきたが、今回旗揚げした「日本居酒屋協会」は商品力向上という“物づくり”の発想をベースに総合点のレベルを上げていこうという趣旨。プロの視点で見て、バランスの良い店舗を評価する「居酒屋グランプリ」の開催も行う。山本理事長は「協会活動を通じて、世界に羽ばたけるような居酒屋を育てていける礎になりたい」と力強く語った。不況が続く外食業界にどんなインパクトを与えるか、見守っていきたい。
コラム
2010.04.01
「日本居酒屋協会」の旗揚げ!
3月31日、「社団法人日本居酒屋協会」の執行理事会が開催され、活動が実質的にスタートした。業界でのエキスパートが集まって、低迷する飲食業界の活性化を目指すというが、いったい何をやるのだろうか?
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。