コラム

「第4回居酒屋甲子園」傍観記

昨日、「第4回居酒屋甲子園」決勝大会が終わった。業界一の大イベントである。今回は参加申込みが低調で、「はたして5,000人収容の会場が埋まるのか?」と心配されていた。しかし、蓋を開けてみたら...。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


決勝大会の行われた横浜パシフィコの国立大ホール。会場に入ってみて、びっくりした。立ち見やが出るほどの盛況ぶり。プレス席さえ関係者らしき人た ちで埋まっており、空席を探すのが大変だった。あるプレス仲間は「すごい人ですね。どうしたんですかね?」と首をかしげていた。今回は理事長がカリスマの 大嶋啓介氏から二代目の高橋英樹氏に交代してから初めての大会。理事・実行委員たちは意地とプライドにかけて、この大会を成功させければならなかったのだ ろう。“甲子園批判派”の私のもとには、「内部にはこのまま進んでいいのかという危機意識をもっている人もいる」といった“リーク”が入ってきていた。推 測すると、「年々参加店舗数を拡大しなければならない」(236→739→770→今回1103)、「会場の5,000席を参加者で埋め尽くさなければな らない」といった“総論”がベースにある半面、「それだけの参加者を満足させる内容をどう構築していくのか、不況の中でスポンサーをどう獲得していくの か」といった“各論”におけるジレンマがあったに違いない。 予選大会のあり方や決勝での“壇上プレゼン”の内容については、大嶋理事長の“お父さん、お母さん、私を生んでくれてありがとう”のフレーズで有名 になった歌と踊りを交えた「夢と感謝のパフォーマンス」中心だったものを、今回からは各店舗の“日常業務”と“他店にも学びとなる取り組み”を表現するプ レゼンに変えた。それが成功したかどうかについては、賛否両論があるだろう。“大嶋経”の信者からすれば「感動がなくなった」と言うだろうし、決勝に残っ た優秀店舗から経営を学ぼうと参加した人たちは「もの足りない」と思ったのではないか。昨日の決勝大会を見ていて、率直にそう感じた。結局、優勝した 「OHANA」はチームワークづくりに優れ、顧客、業者を巻き込んだファン作りの秀逸性が評価されたということだろう。日常業務の改善点や集客のための新 しい取り組みなどについては、さほど飛び抜けて参考になるケースはなかったのではないか。メディアとして客観的に言わせてもらえば、“ニュースバリュー” は低い。業態的にも、「創作系料理」を売りにするところが多く、まったく目新しさがない。次回から、「業態の革新性」という評価を入れて欲しいものだ。 とはいえ、「居酒屋から日本を元気にしたい」「外食業界で働いている人が夢や誇りを持てる大会にすること」という居酒屋甲子園の基本理念には敬意を 表する。実際に、その理念を具現化していることに異論を差しはさむつもりはない。居酒屋に限らず、飲食店の最も大きな資産は人である。その人の個性とチー ムワークが繁盛店をつくる。しかし、「日創建的洗脳主義と日本LCA的なネットワークビジネス手法の融合」という遺伝子が残っている限り、人を重視しなが らも“没個性主義”を生み、チームワークを大事にしながらも“異分子排除主義”が働く。その点に私は疑問を持つのだが、次回の居酒屋甲子園の方向性はどち らに向くのか。課題は“夢とありがとうイズム”からの卒業と、メディアからの客観的評価を取り入れた“開かれた甲子園”を目指すべきなのではないだろう か。

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