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コラム

「角ハイボールブーム」仕掛けの真相

サントリーの「角ハイボール」ブームの仕掛けがいよいよ実りの秋を迎えそうだ。銀座コリドー街の立ち飲み「マルギン」から始まった「ハイボールサーバー」設置店も急激に増えつつある。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


昨日、小伝馬町の超繁盛店「鳥番長」で 岩田オーナーから驚くべき話を聞いた。この店は独立1号店だが、都内におけるハイボールサーバー設置6店舗目。今年2月オープンからブレイクし、25坪で 月商平均1,200万円を売る。岩田さんが言うには、「ハイボール人気は次第に高まっていまして、7月は2,770杯売りました。生ビール、瓶ビールなど ビール系全体で3,200杯ですから、サントリーさんもビックリするほど、ハイボールが出ています」とのこと。これも“ハイボールサーバー効果”であるこ とは間違いない。サーバーから注がれるハイボールは確かに爽やかで、味にブレがないし、どんな料理にもよく合う。「鳥番長」のライバルとして、岩田さんと 同じラムラ出身の佐藤さんが8月20日に人形町にオープンする「鶏大名」(経営はメッドダイニング)もタワーを客席から目立つ位置に設置、“桃太郎地鶏を提供するハイボール酒場”をコンセプトに展開を開始していく。
「角ハイボール」の仕 掛けが始まったのはまだ1年前だ。昨年秋、サントリーが女優の小雪やお笑いコンビのおぎやはぎらを起用したテレビCMを放映するなど、“空中戦”によるプ ロモーションに加え、「角ハイボール」を提供する飲食店の数を、昨年までの1万5千店から一気に4万店へ拡大したことが功を奏した。飲食店をいわば“地上 戦”で一軒一軒攻めていったのだ。すでに“生ビールの陣”において、「プレミアムモルツ」を巨人「スーパードライ」や老舗「エビス生」の牙城に攻め込んで 善戦した実績があった。社内では「せっかくプレミアムモルツ市場を開拓したのに、生ビールに代わるスタータードリンクとなる角ハイボールを売りつけるのは 矛盾じゃないか」という議論もあったようだが、飲食店の顧客ニーズが追い風になった。20~30代の“ビールを飲まない”層が、サワーやチューハイからハ イボール志向に移ってきたのだ。さらに「イボールタワー設置店で“美味しいハイボール”が飲める」という情報がブログや口コミで一気に広がったのである。
こうして「角ハイボール」はわずか1年で大きなブームになったが、サントリーはさらにその仕掛けに拍車をかけているようだ。お酒検索サイト「酒ロ グ」を運営する有限会社ビズスタイルは、サントリーとのタイアップによって、「角ハイボール」が飲めるお店を地図にマッピングしたり、感想を投稿したりす ることで、お店の情報をみんなで共有することができるサイト「みんなで作る角ハイボールマップ」を オープンすることになった。「角ハイボール」が飲める店を地図にマッピングしたり、感想を投稿したりすることで、お店の情報を共有することができるCGM 形式のサイト。また、7月の某日、都内のテストキッチンに5人のグルメブロガーを呼び、「角ハイボールセミナー」を開催したという。その5人が公式サイト 「サントリーグルメガイド」の中で、“角ハイボールが飲める美味しい店”を回り、「東京 おいしい居酒屋 酒場 特集」の 記事を書くという仕掛けだ。かつて、「アサヒスーパードライの奇跡」がアサヒビールを変革したように、11年ぶりのウイスキー復活の原動力となった角ハイ ボールがキリンとの統合を目の前にしたサントリーという会社を大きく変革するかもしれない。「キリンに高く売るための仕掛けでは?」という声も業界にはあ るが、“地上戦”にも強くなったサントリーは確かに昔のサントリーではない。

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