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コラム

「居抜き」は是か非か?

6月25日、私の主宰する若手飲食ベンチャー経営者の集まり「サードG」の第8回交流会を開催した。今回は講師にゼットンの稲本健一社長を招いた。稲本さんの「居抜きに走るな!」という警告はショッキングな内容だった。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


稲本さんは講演で、「飲食業はコミュニケーションツールの提供。携帯電話がライバル。飲食店がなければ女性も口説けない」、「居抜きブームは疑問。 若い経営者が最初から居抜き出店に走るのは疑問だ」、「一から不動産屋なり物件オーナーを感動させられるようなプレゼンができるか?」(オリジナリティの ある業態を熱意をもって提案しているかということ=クリエイティブ力を持てということ)、「時代の真ん中を追っかけてはいないか?一歩先に立って店作りを せよ」(トレンドを追いかけるな、時代の先を読んで仕掛けを先にしろということ)――といった内容の話をしてもらった。
とくに、いまの「居抜き出店」というブームへの疑問は、居抜きに走ってスピード出店することがいいことだといった若手経営者に蔓延している風潮に問題提起を投げかけるもので、有意義だった。私もかつて「居抜きで業態は作れない」と いう主張をしてきたが、業態よりも食材コンテンツ重視になってきた今、居抜き=ダメとも言い切れない時代になってきたし、低投資早期回収というビジネスメ リットから考えるとむしろ不況下ではスタンダード化しつつあると考える立場だ。しかし、物件取得の手法について、私がかつて稲本さんから聞いた話を思い出 した。今ほど家賃が高くなかったとはいえ、東京に出てきたばかりのゼットンは、いきなり人気エリアの恵比寿に店を出した。そのとき、「佐藤さん、僕は直接 ビルのオーナーさんに“こんな店がやりたいんです”“こんな店をやればこのビルも前の通りも価値が出ますよ”と交渉するんです。そして絶対坪1万円台で出 店する。そう決めているんです」と稲本さんは言っていた。
つまり、安易な居抜きに頼ることなく、物件オーナーや不動産屋を口説き、格安で出店する努力をせよ、ということである。その分、店の内装にもある程度投資できるようなクリエイティブな店づくりをせよ、と。ゼットンとコラボし、横浜に「DDZ-POINT」を七夕出店するダイヤモンドダイニングは、そのオープンのわずか10日後に恵比寿で5階建て一棟借りのビルに4店舗複合の「えびす一棟地」を 出す。今回は業界初のデザイナーコラボ。人気の金沢拓也さんと戸井田晃英さんに設計を依頼した。担当者はこの狙いについて、「いま一度“店創りは楽しい” ということをこのプロジェクトを通して訴求したかった。物件の条件も恵比寿ではありえない破格の安さで取得することができ、賃貸条件が安ければ、きちんと したデザイナーを使い、適正な投資金額でお客様にとって居心地の良い店を創ることができるという好例になればと考えた」と言っている。
DDといえども、無駄に投資しているわけではない。いや、それどころか、家賃を徹底的に交渉し、今回は坪1万円平均で借りたという。設計料もあくま で低いレベルでの適正料金だという。でも、「きちんとしたデザイナーを使う」ことが大事なのだ。それは最終的に顧客が楽しく居心地よく店を利用するための 必要条件だからだ。DDの特徴として、メディアではほかにあまり取り上げないが、同社の業態開発・コンセプトメークの持ち味は、複数の設計者、施工会社を 随時使い分けていることだ。これは非常に労力が伴うことで、チェーンストア理論、効率経営とは相反する。しかし、それをやり遂げることが、飲食業界の活性 化、レベルアップにつながるということである。それは、稲本イズムにも通じるだろう。いずれにしろ、「居抜きが是か非か」よりも、オーナーの経営スタンス が問われるということだろう。

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