なかでも「串カツ田中」の快進撃が止まらない。2012年1月にFC1号店(8店舗目)を学芸大学にオープンしてから、わずか2年半で60店舗を超えてきた。9月に入ってからも、話題のオーナーの店が続々オープン。3日には東海エリア初となる金山店がオープン。オーナーは名古屋の飲食業界では若手経営者を中心に精神的な道を説くカリスマ的存在の奥志摩グループの中村文也さん。4日には北千住に「アガリコ」でお馴染みのビッグベリー大林芳彰さんがオーナーとなって、西池袋店に次ぐ同社2店舗目の「串カツ田中」をオープン。大衆酒場の多い北千住であえてネオ大衆酒場にチェレンジする。そして、8日には沖縄初の「串カツ田中」がオープンする。FCオーナーは、設計施工のかたわら多くの直営飲食店や横丁型商業施設も手掛けるスパイスワークスの下遠野亘さん。すでに沖縄に直営店や設計施工のクライアント店舗を出し、「これから内地的なコンセプトの飲食店が求められるマーケット」と先を読み、「串カツ田中」の沖縄エリアでのFCライセンス権を取得し、多店舗展開を目指す。
「串カツ田中」の急成長の秘密は、こうした注目経営者たちがFCオーナーを名乗り出るところにある。彼らは、直営店でもじゅうぶんに成功してきている。平均以上の繁盛店をつくりあげてきている。それなのに、「『串カツ田中』は魅力あるのでぜひやってみたかった」と口を揃えるのである。FCパッケージは、15~25坪までのハコで、席数は坪×1.7~1.8。物件賃料は坪2万円までの路面店が基準。月商は坪30万円(全店の年平均月商は坪35万円)を目標とする。初期投資はスケルトンからで約2000万円。出店地はブルーオーシャン立地を攻め、“地域密着型住宅街”を基本とする。FCのロイヤりティーは売上げの5%、加盟金300万円と決して安くはない。運営本部のノートの貫啓二社長は、「しっかりとブランド価値を守ってくれる個人、法人とともに発展していきたい」と語る。関西弁で訥々と話すソフトで謙虚な人柄が「串カツ田中」の最大の魅力かもしれない。
飲食FC業界も、「串カツ田中」のような「業態パッケージ販売型」から「ライセンス・プロデュース型」へと変化を遂げつつある。新しいパターンとして、私は「ライセンス販売型(商標使用料固定額と食材提供、売り切り)」と「プロデュース型(業態立ち上げ指導、売り切り)に注目している。「ライセンス販売型」としては、エーピーカンパニーの「じとっこ組合」、20店舗を超えてきたドリーマーズの「串屋横丁」などがある。空中階のスナック型店舗でクオリティの高いワインを均一価格で提供する「ワインカフェ」もワイン供給のほかはあまり縛りはなく、ライセンス型といえるだろう。「プロデュース型」は、大林さんの「アガリコ」町田店や静岡店が上げられる。福岡の繁盛店「フィッシュマン」の森智範さんがプロデュースした「頂鯛」のケース。オーナーはワイン輸入販売のモトックスだ。繁盛店オーナーがプロデュースするスタイルがこれからは増えるのではないか。