コラム

飲食の潮流「三つの変化」

2014年年明けは静かなスタートだ。飲食店は12月に大きなピークを迎え、1月はその反動もあって客入りが落ち込む。新年会需要は毎年減っているが、今年はアベノミクスの影響で若干増えてはいるものの、それも局地的な現象だろう。リサーチ始めに私が感じたことは、「三つの変化」である。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


一つ目は、「徹底した深堀りが勝つ」ということである。東上野、浅草通り沿いに昨年11月にオープンした「純米酒専門 粋酔」。閑散とした通りにポツンと1軒、普通の居酒屋風のファサード。間口は狭く奥行きがある好物件とはいえない店舗だ。しかし、平日水曜日で満席。店内は活気に満ちていた。その秘密は、店名のキャッチにあるように“純米酒専門”にこだわり、種類を徹底して増やしたこと。しかも、全国47都道府県の日本酒を揃え、常時105~110種類の旬でこだわりの純米酒を提供する。純米酒がブームで、都内にも多くの新しい日本酒の店がオープンしている。妥協した品揃えや当たり前の提供法では、もはや埋もれかねないほどの競争が生まれつつある。そのなかで、勝つためのセオリーの一つが「徹底した品揃え」「専門性をさらに深堀りすること」だ。私はまだ飲んだことがなかった沖縄、鹿児島、宮崎、大分、熊本、長崎の純米酒をいただいた。エクスペリエンス!だった。

二つ目は、「○○だけの発想よ、さらば!」である。昨年暮れに五反田にオープンしたクラフトビール専門店「クラフト麦酒ビストロ CRAFTSMAN(クラフトマン)」。オープンから満席状態で、1月に入っても客足は落ちない。クラフトビールは常時31種類を用意し、それに合う料理には、和食材を用いたビストロメニューを提案。7~8割を蔵元から直送した樽で提供する。30のタップに、ハンドポンプを1種揃え、樽替わりでラインナップを変更する。価格はスモールサイズが550円、ラージサイズが850円の均一価格。この店が凄いのは、クラフトビールだけではなく、ワイン・スパークリングを50種類、日本酒も用意することでビアバーではなく、あくまでもビストロとしての立ち位置にこだわっていること。「クラフトビールマニア向けではなく、和ビストロ料理に合うクラフトビールを提案していく。あくまでビストロポジションから入るクラフトビールの店なんです。これが業態開発のきっかけにもなっています」とオーナーの千倫義氏は話す。もうワインだけ、日本酒だけ、クラフトビールだけの時代は終わるかも。それぞれのジャンルを深堀りしつつ、クロスオーバーさせる“ミックス・サケカルチャー”の時代が来る。

そして、三つ目は「外食から“会食”へ」「居場所の提供」「ローカルバリューに気付け」です。三軒茶屋に1月27日オープンした「picnic A go go! 」。三茶のディープゾーン三角地帯でワイン酒場「ほしぐみ」を営む柳生久輝さんの3店舗目だ。白を基調とした“カワイイ系”のメルヘンカフェのような内装。夜のネオ大衆酒場的なメニューに合わせるのは、自家製サングリアと生シードルにワイン。L字型のカウンターはまさに大衆酒場的なコミュニケーションスペースとなっている。2階はロフト席。ここは明らかに出会いの場になる。毎日、常連さんが顔を合わせる“会食”の場。女性一人客もターゲットで、三茶に住む女性たちの会社、自宅以外の「居場所の提供」が裏コンセプトに違いない。そして、ランチは地域のお客さんにヘルシーな料理を提供していく。空間的にもランチやテイクアウトにかなり力を入れていくとみられる。三茶には女性にやさしいランチの店がありそうで少ない。そんな潜在ニーズの掘り起こしを狙っている。いわゆる「ローカルバリュー」へのアプローチ。同じ地域ドミナントをするにしても、これからはローカルバリューを意識したライフスタイルシーンに沿った業態開発が重要になってくるだろう。

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