コラム

「バルの街」へ変貌遂げる赤羽

老舗居酒屋や大衆酒場が密集するオヤジ臭い街"というイメージの赤羽。しかし、ここ2~3年で、ワイン系の店やバルが急増し、繁盛店には若い女性客が押し寄せる風景を垣間見ることができる。「バルの街」に変貌遂げる赤羽をレポート。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。
現在、フードスタジアム 編集主幹。商業施設リーシング、飲食店出店サポートの株式会社カシェット代表取締役。著者に『イートグッド〜価値を売って儲けなさい〜』がある。


赤羽で飲食店が集まるのは東口エリア。駅前には大手チェーン系の居酒屋ビルが立ち並ぶが、街場を代表する通りは一番街。そのど真ん中に位置する「まるます家」は赤羽を代表する老舗大衆酒場。朝9時から夜9時までの通し営業。昼間から酒を飲む客の姿は、赤羽らしい光景といわれてきた。その隣に2007年12月、殴り込みをかけた浜倉好宣氏プロデュースの「赤羽トロ函」もいまやすっかりこの街に溶け込んでいる。この2店が代表するように、赤羽はベタコテの居酒屋、大衆酒場が似合う“オヤジ臭い街”というイメージがずっとあった。しかし、2011年7月、一番街の奥に突如としてコジャレた「グッドミート・バル」がオープン、たちまち人気となった。「グッドミート・バル」は食肉問屋のグッドミートが飲食店関係者と共同出資で経営。出店前にかなり市場調査をし、「赤羽になかったワインバル業態」にチャレンジした。もちろん、料理のメインは肉で、いわば“肉バル”のハシリである。一番街は東京メトロ南北線の赤羽岩淵駅ともつながっており、通勤客や若いビジネスマン・OLの居住者も多く、ワインバル業態への潜在ニーズもあったようだ。赤羽岩淵駅近くにには4年前にオープンしたイタリアンバル「カツキッチン」が人気店として定着。オーナーはHUGEの「リゴレット」出身とあって、話題を呼んでいた。「グッドミート・バル」はJR赤羽駅側からいえば“隠れ家”だが、赤羽岩淵駅とつながる一番街として見れば、ちょうどセンターに位置する絶妙な立地。通りにせり出したビニールシートのテラス席がまた印象を強めている。女性客が7割で、週末は地元の年配客も多いという。運営はgoonies。店を取り仕切るのは専務取締役の栗城義徳氏。8月6日には同じビルの2階には“肉屋直営ビストロ”と銘打った2号店「ボンビアンドゥ」をオープン。今度は欧州ビール約50種類を揃えた。赤羽のワイン系酒場の地域一番店「グッドミート・バル」グループがバージョンアップしたと言っていいだろう。「ボンビアンドゥ」オープンに先立つ7月27日、一番街の少し駅寄りにオープンエアのひと際目立つ角物件の「アジアンバル BOTE(ボーテ)」がオープンした。店のコーナー両サイドの店前には大胆に通りまでハミ出したテラス席を並べ、まるでアジアの屋台のような光景。池袋でブレークしている「アガリコ」と同じようなパワーがある。経営は不動産系のバンブーインターナショナル。飲食部門を取り仕切るのは、グローバルダイニング出身の安藤紘氏。安藤氏は「ビストロDai」のプレジャー・カンパニーの望月大輔氏の後輩。店づくりにあたり、望月氏や「アガリコ」の大林彰芳氏からアドバイスをもらったという。アジアンバルというスタイルも赤羽にはなかったし、今後「グッドミート・バル」にじゅうぶん対抗していける存在となりそうだ。「まるます家」「赤羽トロ函」が“旧”とすれば、「グッドミート・バル」「アジアンバル BOTE」は“新”を代表するコンビとなるだろう。この2店以外にも、周辺にはビザ&パスタの「赤バル レッツェ」、「ワイン酒場 赤羽Gabu」、イタリアン居酒屋「タベルナナカナカ」、イタリア料理とワインの店「アンジュ」のほか、今年に入ってからもスパニッシュイタリアン「カフェランドスケープ」(HUGE出身の及川秋紀氏経営)、スペインバル「トレボ」、「ヒロズラウンジ」「ネネキッチン」「union」「タペオ」などワイン系の店のオープンがラッシュを迎えている。ひと通りチェックしてきたが、いま東京ローカルや地方都市でのワインバルの多様化、進化は大きなトレンドだが、大衆酒場の金城湯池、赤羽でワインバルが根付いていることに注目したい。決してオシャレ過ぎない、少し垢抜けていないという意味で、この赤羽では“大衆ワイン酒場”というジャンルが新しく生まれるかもしれない。そんな予感がした。

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