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コラム

いま、アジアの飲食マーケットが熱い!(バンコク編)

沸騰するアジア市場。日本の飲食マーケットに閉塞感が漂うなか、いま「アジアのに出よう!」という飲食店経営者が増えている。チャイナリスク"から中国を避け、シンガポール、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアなどに目を向ける動きが広がっている。そこで、アジア進出の夢と現実について現地を歩いて考えてみた。今回は「バンコク編」。"

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


6月13日から16日まで、足早でバンコクの街を歩いてきた。バンコクは人口830万人、ここ1~2年、中心部では商業施設のオープンが相次ぎ、商業、飲食の街として非常に賑やかになってきている。雨が降ると、タクシーはほとんど拾えない。現地在住の邦人が言うには、「毎日が日本のバブルのときみたいな交通事情」。一人あたりのGDPは5000ドル近くに達し、ASEAN域内でシンガポール、ブルネイ、マレーシアに次いで4位。バンコク中心部だけだと、1万5000ドルともいわれる。現地で人材ビジネスの「パーソナルコンサルティング」を起業して20年になる小田原靖さんによると、「昨年1月、今年1月と労働者の最低賃金が40%ずつ上がり、現在日給300バーツ(約950円)になっている」とのこと。それでも失業率は0.5%で、ほぼ完全雇用状態。要は、サラリーマンもOLも「毎日が好景気」であり、財布の紐が緩くなっているのである。一方、バンコクにおける在留邦人は3.6万人(タイ全体では5.0万人)で世界第3位。狭い街は日本人だらけでもあるのだ。したがって、日本レストランの需要は高い。タイ人の日本食へのリスペクトも強い。商業施設でも街場でも、「日本食」「日本人経営」の飲食店はどこも賑わっているわけである。その数、バンコクだけでザッと1500とも2000ともいわれる(カシコン銀行日本人スタッフの話)。主な商業施設には、外食チェーンの大戸屋、吉野家、CoCo壱番屋、すき家、幸楽苑などが軒を連ねている。街場は、バンコク中心街を東西に走るBTS(高架電車)の下の通り、スクムヴィット通りの東北エリアに日本人経営者の店が集中している。駅名でいえば、中心地のアソーク駅から東へプロンポン駅、トンロー駅、エカマイ駅までのエリア。各駅から北に伸びる通り(ソイ)、さらにそこから東西に伸びる路地沿いに飲食店や飲食ビルが点在する。とくに日本人経営者の店が多いのが、トンロー駅の北側。現地で居酒屋を展開する「なぎ屋」など日系飲食店が入居している「日本村」やその近くの沖縄料理「ニライカナイ」(3店舗展開)がある。「日本村」の並びには「日本村モール」が近々、グランドオープンする。「日本村」とトンロー通りを挟んだ東側のベンツショップの奥には、「トンロー横丁」がオープンしたばかり。バンコク初の日本横丁とあって、注目を集めていた。この横丁をつくったのは、飲食プロデューサーの伊藤貴士さん。12年前にバンコクに来て、和食店「写樂」立ち上げ名を上げた。焼き鳥の「秋吉」のバンコク展開をサポート、社員として本格的に飲食プロデュースにも関わっている。また、2000席と1000席のロンビアー業態「タワンデーン」をプロモートし成功させ、現地では“天才飲食プロデューサー”と呼ばれている。その伊藤さんが言うには、「もうバンコク中心街では日本人を相手にした飲食店は飽和状態にある。ここ一年以内にオープンした店の売上げもピークを打ち、じわじわ下がっている」。すでに、バンコクでは日本人相手の店はオーバーストアだというのだ。そこで、伊藤さんがターゲットにするのは日本人ではなく、あくまでタイ人。タイ人のニーズや感性に合うメニューづくりや内装にすることが生き残る道だという。既存の日本人相手の店も、タイ人客比率を上げていかないとジリ貧になっていくだろうと警告を発する。幸い、タイ人の所得は上がり、富裕層だけでなく、中間層が厚みを増してきてきている。そういう“ニューリッチ”に向けてじっくりと店を育て上げることが、バンコク飲食ビジネスの成功のセオリーというわけだ。そんな戦略でバンコクに進出してきたのが、「イカセンター」で話題のスプラウトインベストメントの高橋誠太郎さんだといわれる。高橋さんは、日本人が集まる歓楽街のタニヤ通りやゴーゴーバーのメッカであるパッポン通りのあるシーロムエリアに、焼き鳥業態「鳥波多゛(とりはだ)」をオープンした。出店をサポートしたグローバルディメンションメディアの高尾博紀社長によると、「3年後には10店舗以上の展開を目指している」という。そのために、じっくりとタイ人に受け入れられる業態にしていきたいそうだ。ちなみに、高尾さんは、現地で経済誌発行から不動産、内装施工、飲食店プロデュースまで幅広く手がけている。その高尾さんによれば、いまバンコクに出店するなら、焼肉業態が狙い目とか。和牛を持ってきて、店をやると同時に、他のレストランや飲食店に和牛の卸をやったらどうかという。中心街の商業施設に比べ、これから面白いのが郊外の開発。一つの例として、中心街より西側のリバーサイドに昨年5月オープンした「アジアティーク」。川沿の倉庫街を再開発した、横浜れんが倉庫のようなオープンモール型の商業施設。デザイン性の高い飲食店が並び、デートスポットにはぴったりの施設だ。ここに、名古屋のブルームダイニング加藤弘康さんプロデュースの「花ちゃ花ちゃ」がオープン。地元の人気繁盛店になっているという。これからの進出組で注目されるのは、「てっぺん」バンコク1号店。トンロー通りとエカマイ通りの間に一軒家を借りて近くオープンする。そして、いまバンコク在住の飲食業界関係者が大注目しているのが、沖縄の繁盛店メーカー、みたのクリエイト田野治樹さんの店。スクムヴィット通りの南側の新しいエリアの「日本街」の並び「Kビレッジ」に今年10月オープン予定。店の場所は、アジアいちワインを売る話題の「ワインコネクション」(月商4500万円といわれる)の隣。バンコクにおける“日の丸飲食パワー”はこの秋、さらにヒートアップしそうだ。 

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