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コラム

「神田エリア」が動き出した!

2013年も、はや一ヶ月が経過。東京の街は、景気回復の期待感からか、例年よりは幾ぶん活気を取り戻した感がある。そんな中で、新店の話題に沸く「神田エリア」に注目してみた。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


神田駅東口ガード下の“出会い系”立ち飲み焼肉として話題を呼んでいる「六花界」が、年明け早々、こっそりと神田北口に3号店「吟花」をオープンさせた。住所は非公開。「六花界」「初花一家」(鶯谷)の常連客を中心に予約客のみで営業を始めた。座卓10席のみの小さな箱だが、贅沢に帯を巻いた腰壁が目を惹く弁柄色の空間は、京都の遊郭を偲ばせる艶を放っている。昼間は建築士の顔を持ち、大阪出身の人懐っこいノリで客同士のトークを盛り上げるオーナーのモリタハヤトさん。コンセプトはモリタさんがテーマとして追い続けてきた「焼肉と日本酒のマリアージュ」。今回は日替わりで提供する日本酒の蔵元の“地の料理”も出てくる。“究極のモリタワールド”を求めて、予約客が後を絶たない。話題店がひしめく人気エリアの南口。活性化している日銀通りにまもなくオープンするのが「東京ブッチャーズ」2号店。西口に1号店をオープンしたのが2012年1月27日。ガブ飲みワインと炭火で焼いた塊の肉をしっかりと食べさせる“肉食系ワインバル”の「東京ブッチャーズ」。オーナーの針生真さん(エッジオブクリフ&コムレイド代表取締役)は元大手飲食コンサルティング会社出身の実力派だけに、2号店も注目されている。日銀通り周辺には、“肉屋横丁”の「神田ミートセンター」や生肉と熟成肉をガッツリ提供する肉問屋系の「小松屋」(ドリーマーズ・中村正利さん経営)があり、「東京ブッチャーズ」2号店ができれば、“肉食系ストリート”と呼ばれるかもしれない。この南口エリアに“男前フレンチ”の「BRASSERIE LE ZINC(ブラッスリーザン)」、ジビエを採り入れた一軒家フレンチ「Nico(ニコ)」を出している夢屋の小林研さんは、神田西口に近々“ジビエ焼肉”をメインとする「罠」をオープンする。小林さんは隠れ家立地の一軒家を狙う“路地裏の怪人”だが、今回はビルの1階。しかし、完全スケルトンからの設計で力の入れようがわかる。場所は地方活性化バルとして2012年11月にオープンした「東京オーブン」(テンプルボーイ・渡辺真祐さん経営)の近く。「東京ブッチャーズ」の奥に位置し、針生さんが南口に攻め込めば、小林さんが西口に攻め返すといった構図。このライバル同士の戦いも面白い。西口エリアには、さらに12月27日オープンの「焼鳥五郎」(スマイルリンクル・森口康志さん経営)、1月23日オープンしたばかりの名古屋拠点の「や台ずし」(ヨシックス・吉岡昌成さん経営)など、大衆系のネオ居酒屋も登場。神田本来の保守的な客層をしっかり捉える魅力ある業態である。針生さんや小林さんが“新しい神田の顔”だとすれば、保守的な層をすくい上げる“古き良き神田の顔”も求められている。しかし、これまで神田マーケットを牽引してきた団塊世代のサラリーマンが引退したいま、街の色は大きく変わろうとしている。神田で生まれた店が成長し、他のエリアに出て行くケースもみられる。北口の辺鄙な場所に2012年6月にオープンした「普段着ワイン酒場 GETABAKI」は、やはりサラリーマンの街、田町に2号店「ワイン酒場 GETABAKI gen」を1月29日開店。オーナーは関西から出てきて神田に初出店した臼杵慎さん。「神田で自信をつけて、田町でもやれると思った」と話す。神田はかつてのように「新しい飲食の難しいエリア」ではなく、いまや新しい種が育つインキュベーションエリアと言えるかもしれない。

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