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コラム

「馬肉」人気は跳ねるか!?

レバ刺し、ユッケの生肉禁止を機に、安心して食べられる「馬刺し」人気に火が付き、ここに来て「馬肉」という食材、料理が脚光を浴びている。そんななかで「日本馬肉協会」も旗揚げされ、馬肉業界の動向も注目される。

PROFILE

佐藤こうぞう

佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。


「社団法人 日本馬肉協会」が設立されたのは2012年の8月。協会の活動の目的は「日本の生肉食文化を守るとともに、馬肉食の啓蒙と普及を目指す」こと。定期セミナーや馬肉料理試食会、馬肉検定などを実施、この春には「馬肉新書」を出版、それを記念して300人規模のパーティーを開催するという。この協会の発起人は、馬肉メーカー、流通業者、酒販店、馬肉専門店経営者などだが、中心的に動いたのは馬肉卸のNTCデリバの専務取締役で、馬肉料理の専門店を展開する馬喰ろう代表取締役の沢井圭造氏と馬肉料理はじめ多彩な飲食店を展開しながら、設計施工も手がけるスパイスワークス代表取締役の下遠野亘氏の“馬肉LOVE”コンビ。馬肉生産量日本一の熊本をはじめ、長野、福島、青森などの馬肉生産者を勢力的に回り、協会設立の必要性を説いて協力を取り付けた。「大手居酒屋チェーンまで馬刺し料理を出すように、馬肉は急速に広がっていますが、スタッフさんに馬肉の知識がどこまであるのか心配なんです。他の肉に比べて格段に栄養価が高く、安全な食材であることや、馬肉の歴史、文化などを含めて啓蒙や教育のお手伝いをしていきたいんです。また、全国の馬肉生産者をつなぐ接着剤の役割も果たしたい」と真剣に語るのは沢井氏。下遠野氏は、そんな沢井氏の志に共鳴し、協会設立の実務的なサポート役をつとめたようだ。彼らは、自ら馬肉料理の専門店も手がける。沢井氏は、恵比寿、神田(2店舗)、新橋、人形町で少しずつ業態の異なる「馬喰ろう」を経営。馬肉卸が母体だけに、様々な部位の料理を多様な調理法で安価に提案している。最新店の人形町店は、江戸の風情を残す歴史のある下町らしく、あえてしっとりした和風居酒屋業態にした。店の看板料理は「桜鍋」だ。馬刺しだけではない、馬肉料理の魅力を広く伝えることが使命だという。一方、沢井氏の“相棒”、スパイスワークスの下遠野氏は、「神田ミートセンター」や「渋谷肉横丁」「品川魚貝センター」などのプロデュース、設計施工を手がけたほか、「肉寿司」ブームやワインの持ち込みスタイル「BYO」を仕掛けた人物。直営店も37店舗に上り、他社からの依頼で業態をプロデュースした店舗は数知れない。「生肉」へのこだわりも強く、「生肉文化の灯を消したくない」という気持ちが協会設立のきっかけになったようだ。馬肉業態も手がけ、8年目を迎える水道橋「仕事馬」を2月8日にリニューアルオープンする。「馬肉」人気が定着するかどうかは、「馬肉食の日常化」にかかっている。一過性のブームに終わった「ジンギスカン」のような道をたどらないためには、牛、豚、鷄に続く日常食としてのポジションを築くことができるかどうか。そのためには、品質の安定と流通の確保と低価格化。さらに、料理のバリュエーションを広げることが必要だろう。追い風の「馬肉」、いまがマーケットを拡大する絶好のチャンスであることは間違いない。 

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