新店オープンを追いかけていると、「居抜き」をローコストで業態転換し、新業態として再デビューする店が増えている。同一企業グループの中でのスク ラップ&ビルドならば、ある程度、業態開発や設計・施工にも投資ができ、それなりに新店として見栄えのする場合が多いのだが、明らかに「短期回収」「低投 資高効率」を目指すあまり、「客の視点」を忘れているとしか思えないケースにもよく出会う。 私の考えるところ、いま強い飲食店は「業態」「オペレーション」のバランスがとれているところ。業態は「MD×環境×人」が方程式だ。「MD」だけ の業態は机上の空論、「環境」だけの時代はもはや終わった。そして、最近にわかに重要視されているのが「人」。居酒屋甲子園的情熱主義やサーバー技術至上 主義はその典型だろう。しかし「人」重視のあまり、本来のMDをおろそかにしたのでは、自己満足でしかない。 居抜きを利用した“お手軽開業”は「環境」=「個性」を軽視する。前の店がどんなにカネをかけて造作していても、それは新しい「業態」に埋め込むこ とはできない。業態ができた店というのは、「スタイルの確立された店」と言ってもいい。「MD×環境×人」+「個性×店格」=「スタイル」である。「居抜 き」で「業態」をつくることは、至難の技なのではないだろうか。
コラム
2006.05.18
「居抜き」で「業態」はつくれるか?
最近、居抜き店舗を物件オーナーから安く借り、坪10~15万円の改装費でリニューアル、「新業態」をブチ込んで新店として開業するケースが増えている。はたして、「居抜き」で「業態」はつくれるのか?
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。