どうやらその震源地は立ち飲みブームを巻き起こした「日本再生酒場」の「もつ焼処 い志井」(石井宏治エムファクトリー社長)が新しく仕掛けた「煮 込み」をウリにした居酒屋「沼田」(なぜこの名前かは不明)らしい。3月末に再生酒場近くでオープンして以来、口コミで広がり、あっというまに繁盛店と なった。入り口に立ち飲みゾーンはあるものの、店の真ん中に大きなテーブルがある、なにか懐かしい感じの居酒屋スタイル。 「なるほど、ここまでこだわるか!」と感心させられた「煮込み」は醤油、味噌、塩、カレーの4種類。さらに塩は日替わりで、「にんにく」「胡椒」 「梅」と合わせる。い志井のもつ焼きへの徹底したこだわりが、今回は「もつ煮込み」に移ったというわけだ。もはや「立ち」であろうが「座り」であろうが関 係ない。この店が元は一世を風靡し、高級化路線を走る居酒屋チェーンだったことを考えると、やはり「業態」の勝利と言うほかない。また、恵比寿あたりに 「煮込み居酒屋」が飛び火するかもしれない。 震源地はもう一つあった。2月にオープンした「ジャックポット新宿」である。現在、「ジャックポット恵比寿」「ごまや渋谷店」など17店舗を展開し ているジャックポットプランニングの新店である。恵比寿のジャックポットは「恵比寿らくない気取りのなさ」が好きでよく通っていた。スタッフの作ってない 元気さが良かった。その恵比寿から新宿に2店目である。業態は「オイスターバー」。ミッドセンチュリー風のカフェもどきの内装はともかく、牡蠣の種類と出 し方、値段、どれをとっても「ウンウン」と頷いてしまう。 また、ワインだけでなくモルトウィスキーも揃えているところもニクい。これは、恵比寿や西麻布界隈で底上げスタイルを提供している店とは一線を画し ている。いや、おそらくそれらの「大人の店」を徹底研究し、新宿でも通用する「新業態」を作り上げたと言っていいのではないか。「かっこつけず、しかもど こまでもこだわる」といった“客の目線”が彼らの真骨頂であることは間違いない。伊勢丹と髙島屋、そして2丁目というディープな街に囲まれた「東京のトラ イベッカ」、それが新宿3丁目なのかもしれない。
コラム
2006.05.25
いま、「新宿3丁目」が面白い!
いま東京の飲食店密集エリアで熱いところは?と聞かれれば、恵比寿、中目黒と相場は決まっていたが、なぜか「新宿3丁目」に業界人の目が注がれているらしい。「新宿」と大括りにしてしまえば、なかなか掴みどころがないのだが、「3丁目」は一味違うのだとか。
佐藤こうぞう
香川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、日本工業新聞記者、雑誌『プレジデント』10年の編集者生活を経て独立。2000年6月、飲食スタイルマガジン『ARIgATT』を創刊、vol.11まで編集長。
その後、『東京カレンダー』編集顧問を経て、2004年1月より業界系WEBニュースサイト「フードスタジアム」を自社で立ち上げ、編集長をつとめる。